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防爆対策
可燃性ガスが滞留する恐れのある危険区域は、事故がなく安全に操業することが必須だ。そのため、事業者は換気などの措置を講じ(労働安全衛生規則第261条)、それでもガス濃度を改善できない場合、防爆構造電気機械器具(防爆機器)で防爆対策を行う(労働安全衛生規則第280条)。危険区域を精緻に区分することで、合理的な防爆対策に取り組むことができる。
危険区域、精緻に設定―規格と指針
危険区域は危険度に応じて次の3種類の危険度区域に区分し、その区分に適した防爆機器を使用できる。
▽ゾーン0=可燃性雰囲気が連続的に長時間または頻繁に存在する区域
▽ゾーン1=可燃性雰囲気が通常運転中にときどき生成する可能性がある区域
▽ゾーン2=可燃性雰囲気が通常運転中に生成する可能性がなく、生成しても短時間しか持続しない区域
ゾーン区分は防爆の国際規格IEC60079―10:2002とそれに準拠したJIS C60079―10:2008により定義される。また、ゾーンを設定することをゾーニングと言い、設定方法は同規格に示されている。
経済産業省は2019年4月、この規格などを基にして「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」をまとめた。このガイドラインについて厚生労働省、消防庁が危険区域での防爆対策として認め運用され、現在に至っている。
本来、危険区域の危険度の区分は労働安全衛生法などにより事業者が設定することとなっているが、プラント内の区画全体を危険区域として設定することが多く、危険区域が広い範囲で設定されることが実態だった。この規格とガイドラインにより精緻な危険区域を設定できるため、法令が定める安全レベルを低下させることなく危険度に応じた危険区域が可能となった。
ガイドラインが示す危険区域の設定(図)はデータと数式で行うため、精緻に区分を進めることができる。
①開口部面積=可燃性ガスが放出する部位の開口面積
②放出特性=可燃性ガスの密度、燃焼下限界などから表すパラメーター
③換気速度=可燃性ガスが放出する付近の換気速度
④換気度=放出特性と換気速度から求める換気の度合い
⑤換気有効度=換気の有効性
⑥危険度区域の分類=①から⑤を基に規格が定める危険区域(ゾーン)に区分
⑥の分類により、ゾーン2の区分か、非危険区域(すなわち安全な場所)になる。このことは、今まではゾーン2だから防爆機器を使用するとしていた危険区域が非危険区域になることで、防爆機器ではなく一般の電気機器の使用が可能になることを意味し、合理的な防爆対策を実現できると考えられる。
機器、適切な選定カギ
一方、精緻に設定した危険区域に対して適切な防爆機器を選定することが重要になる。
日本は登録型式検定機関が認めた検定合格品の防爆機器を使用できるのだが、防爆保護構造(本質安全防爆構造や耐圧防爆構造など)によって使用できる危険区域が定められている。国際整合技術指針の検定合格品の防爆機器が使用できる危険区域を表に示す。
この表のゾーン0の欄に示す防爆機器は全てのゾーンで使用できることを示している。ゾーン1の欄に示す防爆機器はゾーン1とゾーン2で使用できてもゾーン0では使用できない。また、本質安全防爆のようにia機器はゾーン0で使用できるが、ib機器はゾーン0では使用できないなどの制約もある。
なお、構造規格の検定合格品も国際整合技術指針に準拠するが、安全増防爆構造についてはゾーン2でのみ使用可能となるので注意が必要だ。
精緻な危険区域のゾーン設定と適切な防爆機器の選定で、合理的で安全な操業を期待する。
【執筆】
グーバークリエーション
代表取締役 吉川 修