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進化する省エネ機器・ソリューション
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を実現する2050年まであと25年。産業界では二酸化炭素(CO2)排出量削減に向けた一層の取り組みが求められている。グローバル企業がサプライチェーン(供給網)全体の排出量削減を重視する動きも広がっている。あらゆるセクターでエネルギー使用のあり方を抜本的に見直すとともに、最新の省エネルギー機器・ソリューションの採用で、生産性向上や快適性向上などを実現する取り組みが注目されている。
改正GX法—排出量取引に参加義務 中小にも排出量把握・削減努力
エネ価格 経営に影響85%
日本商工会議所と東京商工会議所が全国の1828社への調査でまとめた「2025年度中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」では、昨今のエネルギー価格について、85・2%の企業が「経営に影響あり」と回答した。エネルギー価格が中長期で上昇基調にある中、その利用のあり方は経営の重要課題だ。エネルギー価格上昇分を自社の製品やサービス価格に転嫁したり、省エネ化の推進でしのいでいるケースは多いとみられる。
同調査では68・9%の企業が脱炭素に関する取り組みをすでに実施しており、中でも「省エネ型設備への更新・新規導入」(35・7%)や「運用改善による省エネの推進」(34・5%)など、省エネに関する取り組みは多くみられた。最新省エネ機器やソリューションの有効利用が各所で検討されている。
GX国家戦略
こうした産業界を取り巻くエネルギー事情の中で、政府は省エネや新エネルギーによる取り組みを中核に脱炭素化をはかるため、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)国家戦略」を強力に推進している。
5月に成立した改正GX推進法では、2026年4月から排出量取引制度が本格稼働することとなった。CO2排出量が年間10万トン以上の大手鉄鋼や運輸業、電力会社など300—400社を対象に参加が義務づけられた。政府が企業ごとにCO2排出量の枠を割り当て、その排出枠の過不足を企業間で取引する。国内CO2排出量の6割程度がカバーされるという。また化石燃料の採取・輸入事業者を対象に28年からは化石燃料賦課金制度も開始される。
これらカーボンプライシングの枠組みの本格化により、対象企業は「排出量=コスト」という新たな現実に直面する。GXの潮流を背景に、グローバル企業がサプライチェーン上における全体の排出量削減を重視する動きもますます広がっていくとみられる。
取引先である中小企業にも、従来以上に排出量の把握や削減努力が求められる。
省エネモーター 長期稼働で電力削減
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回生省エネユニットシリーズ(安川電機)
安川電機はモーター技術や電力変換技術を生かした省エネソリューション対応機器を多数ラインアップする。半導体工場やデータセンターなど向け設備への提案を強化するほか、各事業所などで取り組める身近な省エネ策として、機械設備の動力部分へ同社機器の搭載で消費電力削減を促す。
特に、電圧や周波数を変えてモーターをコントロールするインバーターの導入や、永久磁石(PM)モーターへの置き換えなどでは、機械設備が長期間、稼働すればするほど省エネ効果が最大化できる。またモーターが発電した電力(回生エネルギー)を電源に戻して活用するためのコンバーター活用などの組み合わせも提案する。
同社のPM型同期モーター「エコPMモータ フラットタイプ」は、国際電気標準会議(IEC)による産業用モーターの効率規格で最高レベルの「IE5」レベルに相当する。フラット構造の設計によりモーター長を最大70%短縮でき、機械の小型化を実現する。また、熱設計も最適化し、ファンレスが可能となり、高速機種では騒音を3—5デシベル低減できる。
小型インバーター「GA500」との組み合わせも可能。同インバーターは、稼働データの監視機能により、モーターを搭載したコンベヤーなどの装置の故障の予兆診断もできる。
中央監視システム 学校に設置、補助金活用
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教員がスマートフォンを使い遠隔で設備の稼働を操作する(内田洋行)
内田洋行はオフィス関連で培った最新の省エネ制御技術を教育施設にも広げている。2026年4月に北海道中富良野町で開校する「ラベンダーの杜中富良野町立 なかふらの学園」。小学校3校と中学校1校を統合した小中一貫の新校舎では、北海道産木材を随所に活用するとともに、断熱強化や地中熱など省エネ技術を採用、さらにエネルギーの見える化と一元管理が可能な中央監視システムを構築した。
同校では太陽光発電の発電量や空調、照明などの消費電力量を可視化したエネルギーサイネージが設置された。夏は30度C、冬はマイナス30度Cにもなる環境で、児童生徒はリアルタイムにエネルギー使用量を見て学べる。また教職員のスマートフォンでは遠隔で教室や体育館などの設備機器の様子を確認して操作ができ、負担は大きく改善される。
こうした一連のシステムには、環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」などを活用。1次エネルギー消費量を50%以上削減した建築物に与えられる「ZEB Ready」認証を道内の義務教育の施設として初めて取得した。
同校には現在、各所から視察が来ている。内田洋行ではこのモデルを元に、全国の教育施設で中央監視システムを広げていく方針。地域社会に求められる校舎のあり方も変化する中、将来的な人口減や学びの多様化も見据え、可変性の高いフレキシブル運用が可能なシステムを提案強化していくという。
