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再生可能エネルギー&次世代エネルギー
脱炭素社会の実現において、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーの導入は大きなカギを握る。今年2月、政府は再生エネを最大限導入する方針を示した。ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電の開発・実用化が期待される。また水素などを用いた次世代エネルギーも利用拡大に向けて開発が進んでおり、今後のエネルギー動向が注目される。
再生エネ、最大電源に
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今年2月、政府は2040年度に再生エネを初めて最大電源とする目標を掲げた(Jパワー提供)
今年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、再生エネを最大限導入する方針が示された。2040年度のエネルギー需給の見通しは再生エネ4—5割程度、火力3—4割程度、原子力2割程度。再生エネの割合が23年度の22・9%から大きく引き上げられ、初めて最大電源に位置付けられた。
エネルギー政策の要諦であるS+3E(安全性+安定供給・経済性・環境)の原則は維持。再生エネや原子力などの脱炭素電源を最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していく。23年度に15%だったエネルギー自給率は40年度に3—4割程度に高まる見通しだ。
国産再生エネを普及させ、技術自給率の向上を図ることは、脱炭素化に加え、わが国の産業競争力の強化にもつながる。近年、特に注目されているのが日本発のペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力の開発・実用化だ。
「ペロブスカイト」万博で実証
ペロブスカイト太陽電池はこれまでのシリコン系太陽電池と比べて軽量で薄く、柔軟性を持つ。従来は設置が難しかった耐荷重性が低い屋根や壁面などにも設置できるため、太陽光発電の利用拡大に向け、期待されている。また光の吸収力が強く、エネルギーの変換効率が高いほか、主な原材料であるヨウ素は国内で生産できるため、安定供給が見込める。
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大阪・関西万博で、スタッフがペロブスカイト太陽電池搭載のユニホームを着用し、実証実験を行った(ジャパンモビリティショー2025で撮影)
2025年大阪・関西万博では、世界最大規模の同電池が西ゲートにあるバスシェルターの曲面屋根のうち約250メートルに設置され、発電した電気がターミナルの夜間照明に使われた。同装置は日本国際博覧会協会(万博協会)による「持続可能な取り組みに関する表彰」の「脱炭素部門」を受賞した。
また一部の会場スタッフはフィルム型の同電池を背中部分に取り付けたユニホームを着用した。発電した電力で冷却ファンやスマートフォンなどをUSB接続で充電できる。スタッフが屋外で着ることで耐久性などの実証実験を行った。
浮体式洋上風力 稼働/日本初 来年1月
日本は国土が狭いうえに山が多く、陸上で風力発電に適した土地は多くない。そこで、日本の四方に広がる海域を利用する洋上風力発電の導入拡大が期待される。8月に三菱商事などが洋上風力事業の撤退を発表し、事業環境の悪化が懸念されるものの、政府は40年までに3000万キロ—4500万キロワットの案件を形成する目標を掲げている。
日本の海は沖合に出てすぐに水深が深くなるため、洋上風力の中でも風車を海底に固定せずに海に浮かせる「浮体式洋上風力」の導入ポテンシャルが高い。
26年1月には、日本初の浮体式洋上風力のウインドファームが長崎県五島市で稼働予定だ。浮体は「スパー」と呼ばれる細長い円筒形状をしており、上部には鋼を、下部にはコンクリートを併用した「ハイブリッドスパー型」を世界で初めて採用。コストダウンと安定性の向上を図った。8基の風車が設置され、発電した電気は九州電力の送電設備を通じて五島市の家庭や企業に供給される。
次世代型地熱、官民で実用化
安定供給が見込める地熱発電のさらなる導入も期待されている。経済産業省は4月に「次世代型地熱推進官民協議会」を設置した。
坑井掘削により地中に熱交換器を設置して水を循環させる「クローズドループ」や、マグマ上部の高温・高圧の流体(超臨界熱水)を利用する「超臨界地熱」など次世代型地熱発電の30年代早期の実用化に向けて、官民が一体となって議論を進めていく。
50年までの次世代型地熱発電の開発目標は約770万キロワットとしている。
水素エネ加速/モビリティーけん引
2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成には、再生エネのほかにも水素やアンモニアなどによる次世代エネルギーの活用も求められる。
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NEDOはジャパンモビリティショー2025で、映像や水素運搬船の模型などを用いて未来のモビリティーや水素社会の姿を発信する
水素と酸素を反応させて得られる水素エネルギーは、使用時に二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンなエネルギーとして注目されている。企業は水電解装置や、水素を液体や水素化合物などに変換して安全に貯蓄・運搬する「水素キャリア」に関する技術、水素ステーションなどの開発・生産強化に取り組んでいる。
水素利用は水素燃料電池車(FCV)などモビリティー分野が先行しており、9日まで開催される「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー)2025」でもFCVの出品が複数見られた。
同展に初出展した韓国・現代自動車(ヒョンデ自動車)は、4月に韓国で世界初公開した新型FCV「The all—new NEXO(ネッソ)」を日本で初披露した。2026年上期に発売予定。
近未来の技術やそれによりもたらされる生活の変化を体感できる企画展示「Tokyo Future Tour 2035」では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が映像や水素運搬船の模型などを用いて、未来のモビリティーと水素社会の姿を紹介した。
