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カーボンニュートラルに貢献する再生可能エネルギー・次世代エネルギー
政府は2021年10月に発表した第6次エネルギー基本計画で、50年をめどとするカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現に向けたエネルギー政策を打ち出している。国民負担の抑制と地域との共生を前提に、再生可能エネルギーの最大限の導入を目指す。日本の再エネ発電のコストは低減してきているものの、国際水準と比較すると高い傾向にあり、コスト低減に向けコーポレートPPA(電力購入契約)の活用などが注目されている。また、30年度の電源構成の見通しで、はじめて水素・アンモニアが盛り込まれた。全体の1%と占める割合は少ないものの、次世代エネルギーとしての役割が期待されており、サプライチェーン(供給網)構築に向け、実証が進められている。
太陽光発電
太陽光発電協会によると2021年度の太陽光パネルの国内出荷量は、前年度比0.5%減の509万キロワットとなった。住宅向けが100万キロワット台に持ち直したものの、設置条件に変更があった発電事業向けが縮小した。2年連続で国内出荷量が減少、ピークの14年度比で44.7%減となっている。
固定価格買い取り制度(FIT)が曲がり角を迎え、太陽光発電の新規導入ペースが鈍化している中、コーポレートPPAが注視される。再生可能エネルギーの発電事業者が企業や自治体に対して長期間にわたって電気を売る契約で、米国を中心に世界各国で導入が進み、日本でも増加傾向にある。
コーポレートPPAは再エネ賦課金による国民の負担を抑制しつつ脱炭素を促進できる可能性があり、発電事業者にとっても安定した価格で売電できるメリットがある。企業や自治体は再エネとして付加価値のある電力を利用でき、カーボンニュートラルへの貢献をアピールすることができる。
九州電力と三井不動産は熊本国際空港(熊本県益城町)とPPAを結び、23年11月に運用を開始する。
熊本空港の駐車場に容量1100キロワット太陽光発電設備を設置。発電した電気は23年に開業する新ターミナルビルに供給する。熊本空港の施設および車両が排出する二酸化炭素(CO2)排出量の約10%削減を見込む。カーポート型太陽光パネルを採用することで、遮熱や雨よけの機能も果たし、空港の利便性向上につなげる。
水素エネルギー
エネルギーの安全保障と脱炭素化社会の構築のため、次世代エネルギーの開発が期待されている。水素は電化が難しい熱利用の脱炭素化、電源のゼロエミッション化、運輸、産業部門の脱炭素化、合成燃料や合成メタンの製造、再エネの効率的な活用など、幅広い分野での貢献が期待される。第6次エネルギー基本計画においても、水素はカーボンニュートラルを見据えた新たな資源として位置づけられ、社会実装が加速している。水素社会実現に向け、供給コストの削減や国際的な水素のサプライチェーン構築の取り組みが進められている。
岩谷産業、川崎重工業など7社が参加する技術研究組合「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(ハイストラ)」は年、豪州の未利用資源である褐炭から製造した水素を液化して長距離海上輸送し、輸入、荷揚げするまでのサプライチェーン実証に成功した。液化天然ガス(LNG)と同じように液化水素を海上輸送できる技術が実証された。今後、ハイストラは同様の実証を重ねてデータを集め、より高性能な荷揚げ設備の実証などにも取り組む。
一方、岩谷産業や川崎重工業などは水素の商用化に向け自社の強みを生かす。グリーンイノベーション基金を活用し、運搬船や荷揚げ設備の大型化により年の水素供給コストを1立方メートル円まで低減することを目指す。
アンモニア
アンモニアは天然ガスなどから製造することが可能で、燃焼してもCO2を排出しないため、温暖化対策の有効な燃料の一つとされている。肥料などの用途ですでに世界中で広く使用されていることから、既存の製造・輸送・貯蓄技術を活用したインフラ整備が可能で、安全対策も確立されている。
火力発電のボイラにアンモニアを混焼する場合にも、バーナーなどを変えるだけで対応可能で、新たな整備や初期投資を最小限に抑えながら脱炭素に取り組むことができる。特にアンモニアと石炭は混焼が容易なことから、まずは石炭火力発電への利用が見込まれている。
JERAはIHIと共同で取り組んでいる碧南火力発電所(愛知県碧南市)4号機での燃料アンモニアの大規模混焼(熱量比20%)を、当初の計画から約1年前倒し、23年度中に始めると5月に発表した。
大規模実証に必要なバーナーやタンク、配管などの設備設計が早めに固まり工事期間が短縮できることに加えて、5号機で進めてきた実証用バーナー開発のための小規模混焼試験が順調に進んだ。23年度後半には工事を完了させ実証アンモニアの受け入れを開始し、同年度中に大規模混焼を始める。