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エレクトロニクス京都2024
電子部品・半導体市況の回復遅れや電気自動車(EV)の成長鈍化などで、エレクトロニクス業界の先行きは不透明感が強い。米中対立や戦争による世界の分断、地震などの自然災害も企業の意思決定においての懸念材料だ。この混迷の時代をどう乗り越えるべきか。大局観を持った戦略で人・モノへの投資や研究開発に取り組み、幾多の難局を乗り越えてきた京都企業の動きから、次の一手を探る。
BCPで有事に対応/企業トップメッセージ①
頻発する自然災害
年明け早々の能登半島地震や台湾東部沖地震は、地域住民の生活はもちろん、企業活動にも大きな影響を及ぼした。頻発する自然災害などの有事に対する事業継続計画(BCP)対策は企業にとって喫緊の課題だ。
GSユアサは本社のある京都事業所(京都市南区)内の老朽化が進む建屋群を今後10年程度をかけて、順次更新・再構築する方針。その一環として、同事業所西地区に産業用鉛蓄電池の新工場を3月に竣工した。
同東地区で操業する老朽化していた棟での生産を西地区に移し、技術者らを集約。バッテリーフォークリフト向けなどの鉛蓄電池を生産する。東地区で生産を続けつつ設備移設を進め、2025年6月から順次稼働する。新工場稼働で生産能力は現状比約1割増を見込む。
中長期成長へ技術者育成
能登半島地震の影響で、北陸地域の複数の生産拠点が稼働停止した村田製作所。穴水村田製作所(石川県穴水町)の復旧は5月中旬の見込みで、その間、生産を滋賀県やマレーシアの拠点で代替する。そんな同社が、約460億円投じて滋賀県守山市に整備する研究開発拠点には、同社の生産開発拠点として初となる免震構造を採用。事故や火災、地震などに強い建物を目指す。
開発拠点稼働へ
京セラは中長期の成長を念頭に、生産技術者の育成に取り組む。野洲工場(滋賀県野洲市)で25年稼働予定の生産技術開発拠点は、全国の生産技術関連の技術者を集め、生産プロセスの最適化・自動化に向けた技術開発を行う。生産技術や各事業部門の技術者間による共創や情報共有、技術者のトレーニング拠点としても活用する。
リスクを踏まえて先行投資/京セラ社長 谷本 秀夫 氏
2023年の半導体製造装置用ファインセラミック部品は、中国向けで古い世代の半導体製造装置の販売が伸びたことから、前年比で売上高が微増となった。米中対立の懸念はあるが、顧客の半導体製造装置メーカーは、24年度末から販売が大きく伸びるとの見方を示すほか、人工知能(AI)の普及が進んでいることなども想定すると、ファインセラミック部品の需要は今後も期待できそうだ。
当社は26年度に長崎県諫早市で半導体製造装置用ファインセラミック部品や、半導体パッケージの新工場を稼働する計画。9月に着工できると考えているものの、それまでに建築部材がそろうか不透明だ。工場建設に必要な期間が長期化しており、鹿児島県薩摩川内市の有機パッケージの新工場は今年完成予定だったが、2年遅れそうだ。一方で外部環境の変化は早くなっていることから、多少のリスクは取ってでも先行投資を進めていく。
滋賀県野洲市の工場では、生産技術開発のメーン基地となる「野洲開発センター」が25年2月に完成する。生産技術開発は電気や機械のエンジニアに加え、現在はAI人材やデータサイエンティストも必要だ。生産技術のエンジニアを同センターに集結させ、難しさが増す生産技術開発を形にしていく。