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震災の記憶を風化させない
災害時のトイレ事情
地震発生直後、3―6時間で必ず必要になるもの―。それは飲料水でも食べ物でもなく、トイレだ。生理現象として、我々は必ず排泄(はいせつ)しなければならない。排泄を我慢することで健康を害するおそれもある。各自治体・企業、一般家庭の約6割が備蓄として飲料や食料を確保している中で「トイレ対策」はまだ手薄なのが現状だ。令和6年能登半島地震でも上下水道の破損などで深刻なトイレ不足が発生。陸海空路の寸断で仮設トイレの設置が遅れ、現地での苦境が連日報道された。
災害時用トイレは大きく分けて①携帯トイレ②簡易トイレ③マンホールトイレ④仮設トイレ―の4種類がある。
①は既存の便器や②の簡易トイレに被せて使用する。尿などの水分を固める凝固剤とビニール袋がセットになっており、コンパクトに保管できる。断水や配管が破損していて汚物を流せない時に使用する。凝固させることでウイルス拡散を封じ込められるが、汚物の保管、廃棄、回収、処分の手間がかかる。
②は組み立て式の洋式トイレのような便座が主流で、水洗システムは備わっていない。①の携帯トイレを被せて使用する。
③は汚物を下水管へ直接流せるが、あらかじめマンホールトイレ用のマンホールを整備する必要がある。都市計画に関わるため、個人での導入が難しい。また災害時のトイレ設置・組み立てに技術と時間を要する。
④は組み立て式と、組み立て後の完成品を現地へ運び入れるタイプがある。元来工事現場やイベント会場などでの使用がメインであり、和式が主流。またバキュームカーなどで定期的に汚物を回収しなければならない。
③④が被災地に設置されるまで、3―7日ほどかかるとされる。その間は①②を用いることを想定して備蓄を進めておく必要がある。内閣府では大人1日当たりのトイレ使用回数を約5回と算出しており、備蓄の目安にすると良いだろう。
2月20日から3日間開催した「防災産業展2024」会場では主催者企画として「災害対応トイレパビリオン」が設けられた。洋式など、国土交通省が定める「快適トイレ」も多数披露され、パビリオンには連日多くの来場者が訪れた。