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震災の記憶を風化させない
災害時のトイレ対策
仮設トイレ設置3日以内 3割
災害時に水分摂取や食事はある程度我慢ができたとしても、排泄を我慢することはできない。東日本大震災の被災者へのアンケートによると、発災から3時間以内に3割の人がトイレに行きたくなったという(日本トイレ研究所調べ)。一方、名古屋大学などの調査では、仮設トイレが避難所に行きわたるまでに要した日数を「3日以内」と回答した自治体は、約3割にとどまった。
感染症・エコノミー症候群・治安悪化
被災地では、水洗機能を失った便器が大小便でいっぱいになり、極めて不衛生な状態になりやすい。このような状態では、主に三つの問題が引き起こされる恐れがある。
一つ目は、感染症のリスクが高まること。トイレは不特定多数の人が使用し、ドアの取っ手や便座、洗浄レバーなど同じ部分に触れるため接触感染が起きやすい。二つ目は、不便で不衛生なトイレを敬遠することで水分摂取や食事を控えた結果、脱水症状やエコノミークラス症候群を発症し、災害関連死につながる可能性がある。三つ目は、トイレ環境が悪化すると集団生活の秩序が乱れ、治安が悪化すると言われている。
これらの問題を回避し、被災者の健康と尊厳を守り、避難所の安定的な運営のためにトイレ対策を徹底しておくことが求められる。
[トイレ備蓄]被災者の健康・尊厳守る/避難所を安定運営
災害時には、携帯トイレ、簡易トイレ、マンホールトイレ、仮設トイレなどを使いながらトイレ環境を確保することが重要だ。避難所に適したトイレを備蓄し、運用方法について事前に検討しておくことが必要となる。
普段の備え 使用方法体験
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簡単に設置が可能な備蓄型組み立て式個室トイレ「ほぼ紙トイレ」 -
国土交通省「快適トイレ」仕様に準拠した自走式仮設水洗トイレカー
大人の1日平均排泄回数は約5回といわれている。経済産業省では備蓄目安として「5回×家族の人数×7日分」を推奨している。4人家族の場合、5回×4人×7日分=140回分となる。
1月29日から3日間、東京ビッグサイトで行われた「防災産業展2025」(日刊工業新聞社主催)では、併催企画として「災害対応・快適トイレ展」を開催した。工具不要で組み立てることができ、使用後は可燃物として焼却処分が可能な「ほぼ紙トイレ」、荷台に仮設水洗トイレを設置した自走式の「快適トイレカー」、オゾンとマイナスイオンで汚物タンク内の菌を分解し消臭する「防災無臭トイレ」など多数の製品が披露され、会場には連日多くの来場者が訪れた。
災害はいつ起きるかわからないため、普段からの備えが重要になる。いざという時に戸惑わないよう、使用方法を事前に体験しておくと安心だ。