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CVG四国 中井さんに最優秀賞
四国の学生による新規事業提案コンテスト「第21回キャンパスベンチャーグランプリ四国」の審査会と表彰式が2023年12月4日、高松市のリーガホテルゼスト高松で開かれた。今回は12校の大学・高等専門学校から41件の応募があり、書類選考を通過した8件が最終プレゼンテーションを行った。最優秀賞の四国経済連合会会長賞には、徳島大学の中井洸我さんが提案した「赤ちゃんのためのデジタルヒューマン工学」が選ばれた。最優秀賞には賞状と賞金50万円が贈られた。その他の受賞者にも賞状と賞金が贈呈された。
最優秀賞/優秀賞/第21回CVG四国実行委員長ごあいさつ
第21回を迎えるCVG四国は、優れた技術や新事業、新製品などのプランを表彰する取り組み。日本の将来をけん引する新産業創出と起業精神あふれる人材の育成を目的としている。主催はCVG四国実行委員会で、四国経済連合会、四国産業人クラブ、日刊工業新聞社が共催している。四国電力、四国電力送配電、今治造船、タダノ、四国アライアンス(阿波銀行、百十四銀行、伊予銀行、四国銀行)、鎌長製衡、新来島どっく、大倉工業が協賛している。
最終選考となる審査会では、学生らが審査委員を前にして自らのプランの優位性や独自性などを熱意を込めて発表した。最優秀賞の中井洸我さんは、2月27日に東京で開催されるCVG全国大会に出場する。
最優秀賞【四国経済連合会会長賞】
赤ちゃんのためのデジタルヒューマン工学
徳島大学
中井 洸我さん
産後うつは、妊産婦の自殺や虐待につながるだけでなく、ジェンダー不平等や少子高齢化など課題と深く関係する大きな社会問題である。本プランは、乳幼児の泣き声を音声解析し、泣いている理由と対処法を提案するアプリケーションを開発することで、この諸問題をテクノロジーとコミュニティーの力で解決する。今後は、泣き声でつながるコミュニティー形成によって、孤立の解決にも取り組む。
すでに乳児の授乳やおむつ交換、行動などの状態把握、家族の病歴、誕生時の血液データから、将来抱える疾患を予測・支援するシミュレーションにも着手。初めての子育て世代を対象にした産後うつ予防アプリ「あわベビPro」のプロトタイプを開発した。泣き声を録音すれば、泣き声に応じて「空腹」や「痛み」といった感情と、その対処法を教えてくれる仕組み。App Storeにアップロードし、これまでに約4000ダウンロードされている。
今後も乳児の感情を可視化して言語化する技術と、泣き声と対処法を一元化する技術を用いて、泣く原因と最適な対処法を提示する独自の人工知能(AI)技術の研究開発を進めていく。
優秀賞【四国経済産業局長賞】
シアノブライトで地球環境を改善する!
愛媛大学
周 子明さん、小山 拓斗さん、友成 佳奈さん、樋口 詞大さん
国内産タオルの約60%のシェアを占める愛媛県今治市では、地域住民の健康と環境保護の観点から染色排水の適切な処理が課題となっている。本プランでは、微生物のシアノブライトを活用して汚染された排水を効果的に処理し、またカーボンネガティブな排水処理方法を開発し、二酸化炭素(CO2)排出を減少させて環境への負荷低減を実現し、持続可能な社会の実現に貢献する。
排水処理においては、微生物が有機物の色素を体内に取り込んで分解するため、従来のオゾン処理に比べて安価で環境に優しい。シアノブライトは一般的なシアノバクテリアに比べて250―500倍の重金属耐性があることから、排水に低濃度の重金属が含まれる場合においても、費用対効果を向上させることが期待できると考える。
優秀賞【中小企業基盤整備機構四国本部長賞】
ペンギンのあしあと
松山大学
瀬部 嵐さん、橋本 大地さん、峯本 有都さん
松山大学の学生の主体性を高め、講義への積極的な参加を促すアプリを開発する。
大学の講義におけるグループワークやグループディスカッションを対象に、率先して意見を出すなど積極的な学生を評価するプラットフォームを提供する。
勇敢に前に進む例えで、最初に議論を主導した人をファーストペンギン、それに続いて意見を述べて議論を深め盛り上げた人をセカンドペンギンと定義する。講義終了後に匿名投票によって両者を選出し、それぞれにポイントが付与される仕組み。獲得したポイントは学内の生協で使用できるポイントに変換できる。年間で高ポイントを獲得した学生は、大学側から表彰され、就職活動時のアピール材料としても利用できる。想定ユーザーは大学で、まずは在籍する松山大学に提案する。
優秀賞【四国アライアンス賞】
日本de修士塾 地マネプロジェクトチーム
香川大学大学院
エルデネー・バトドルジさん、久保 佳美さん、合田 聖さん、藤原 義教さん、大野 美奈子さん
提案者はモンゴル出身で、大学院に進学するまでに日本語の勉強を含めて3年間を要した。日本で学びたいというモンゴル人は年々増えているが、学力や情報不足といった課題により、帰国したり大学で学んだ専門知識を生かせずに異なる分野の仕事に従事せざるを得ないという現状がある。
こうした課題の解決に向けて、日本の大学院に進学を希望するモンゴル人をサポートするオンライン進学塾「日本de修士塾」を展開する。サービス内容は、母国語による日本の大学院の情報提供や、日本人教員による進学指導、大学院卒業後の進路および就職活動支援など。スタートアップの時点でのターゲットは、すでに日本語能力を持ち、日本の大学院進学を望むモンゴル国内の日本留学希望者や日本在住のモンゴル人だが、将来的にはアジア圏の外国人まで拡大する計画。
ごあいさつ/第21回CVG四国実行委員長 佐伯 勇人
社会や地域の課題解決に挑戦
「キャンパスベンチャーグランプリ四国」は、学生の皆さんからのビジネスプランの募集・表彰を通じて、起業を目指す若手人材の育成やベンチャー精神の醸成を図ることを目的に、毎年開催しており、今回で第21回目を迎えました。
さて、今大会の応募者数は41件と、前年度の28件から大幅に増加しており、学生の皆さんの起業への関心の高まりがうかがえます。また、最終審査に残った8件は、若者らしい柔軟な発想をもとに、社会や地域の課題解決に挑戦する素晴らしいプランばかりであり、審査が非常に難航したと聞いております。
最優秀賞に輝いた徳島大学の中井さんのプランは、赤ちゃんのバイタルデータから状況を把握し、適切な対処法を提示することにより、育児ストレスの解消などにつなげるという、少子化対策にも有効な社会的意義の高いプランです。3度目の挑戦で見事栄冠を勝ち取られた中井さんの熱意に敬意を表するとともに、2月に予定されている全国大会でのご活躍を大いに期待しております。
今後も本大会が、起業人材の育成やベンチャー企業の創出に向けて重要な役割を果たしていくことができますよう、引き続き関係各位のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。 (四国経済連合会会長)