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第20回キャンパスベンチャーグランプリ東北(CVG東北)
「第20回キャンパスベンチャーグランプリ(CVG)東北」実行委員会と日刊工業新聞社、東北地区3産業人クラブは2024年12月17日、仙台市内で最終審査会を開催した。厳正な審査の結果、最優秀賞はじめ5組の入賞者を決定。2月4日、東北3産業人クラブ新春講演会などと併催の表彰式で受賞者に賞状と賞金、記念品が贈られる。
受賞作紹介/審査講評
【最優秀賞】鳥獣被害対策ロボット「かみやぎ」の実践的運用によるクマ・イノシシ対策
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長谷山 さん
秋田県立大学 長谷山 直飛
日本全国でクマやイノシシなどによる鳥獣被害が急増しており、その対策が急務となっている。だが、人手や物資の不足、そして、さまざまな安全上の配慮などから、その現場では多くの課題を抱えているのが現状だ。
この点、秋田県立大学には、人が乗れる「東京大学五月祭ロボ」を起源とし、格闘技戦「かわさきロボット競技大会」を通じて培ってきた、動物型歩行ロボットに関する独自の技術シーズがある。それを応用したロボット「かみやぎ」には、動物に対し警戒心を抱かせる「動物型ロボットかかし」としての効果があった。
この「かみやぎ」を量産することで、より安全、かつコストパフォーマンスの高い鳥獣被害対策を社会に提供しようというのが、本事業プランの概要である。併せて、このロボットの量産の一部分を地元学生が担うことで、技術に通じた人材の育成と新たな雇用創出も狙いたい。
【特別賞・東北経済産業局長賞】~共創を生み出す、育てる、進化させる~ 共創のスマート化ツール「共創リンク」
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代表の齋藤さん
岩手大学 齋藤 朱里
櫻庭 翔吾
「共創リンク」は、地域課題解決と地域産業の発展を促進するための共創プロジェクトの効率化ツールである。本ツールは、直感的に操作可能なアイコン形式の管理画面、タスク管理機能、スケジュール表示機能、進捗の見える化などにより、共創における多様な主体間のスムーズな連携を実現する。
さらに、ツールの利用を通して蓄積される「共創データ」を基に、最適な競争体制の提案や共創の効率化を実現。これらのデータは、研究機関や金融機関との連携により政策立案や地域内投資の基礎としても活用し、地域産業の強化や持続可能な発展に貢献する。
特に、大学や自治体を中心とした普及を計画しており、初期段階では東北全域への展開を計画。これらを通して東北から全国に向けて、新たな共創プロジェクトの創出や持続可能な成長を支える事業モデルを実現する。
【特別賞・日刊工業新聞社賞】 LB flower
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南川さん
東北福祉大学 南川 七海
花の購入や使用の際に「廃棄」という現実に直面し、規格外や使用後に廃棄される花々が年間出荷量の約3分の1以上にのぼる現状を知った。花が市場に出回らず捨てられる状況や、花の廃棄に罪悪感を抱える販売員や消費者の姿を目の当たりにして、「LB flower」という、お花のリサイクル・アップサイクル事業を考案した。
花の物流に着目して廃棄花の回収プロセスを構築し、廃棄される花々に新たな命を吹き込み、無駄を削減し、環境負荷を軽減する取り組みである。花が持つ美しさや温かさを最大限に活かし、リサイクルされた花は癒やしや笑顔を届ける製品へと生まれ変わる。
生産者・販売者・消費者の思いをつなぐ架け橋として、花に新たな価値を与えるとともに、持続可能な社会の実現に寄与する取り組みになると考える。花を通じて人々が暮らしの中で新たな幸福や感動、温かさを感じられる瞬間が増えていけばうれしい。
【奨励賞】 冠婚葬祭DXプラットフォーム Celebration Stream
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代表の遠藤さん
東北工業大学 遠藤 悠吏
柳川 幸大
大学院 三品 亮祐
冠婚葬祭DXプラットフォーム「Celebration Stream」は、デジタル技術を活用してコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスを重視し、オンラインでライフイベントを共有するだけでなく、感動を大切にした設計で心に残る体験を提供する。オンライン葬儀や結婚式、デジタル招待状、メモリアルビデオなどのサービスにより、遠隔地からも参加でき、参列者や家族の負担軽減が可能だ。
また、クラウド上での顧客情報管理や人工知能(AI)を使った業務の自動化により、スタッフの負担を減らし、迅速で効果的な対応を実現する。さらに、システム導入によりペーパーレス化や省力化が進み、環境にも配慮したサービスを提供できる。冠婚葬祭のデジタル化により、新たな価値を提供し、業界の進化を促進していく。
【奨励賞】Task Master Pro
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代表の千葉さん
東北工業大学 千葉 なほ子
伊藤 鈴夏
中村 翼
松岡 朋広
我々のプランは「心身の健康管理」と「パートナー」により目標達成できるAI(人工知能)タスク管理である。具体的には、忙しい大学生の「計画倒れをなくす」ために「Task Master Pro」を考案した。特徴は以下の4点となる。
①「人工知能(AI)によるリスケジュール機能」で手間を省き、挫折を味わわずに済み、複数タスクを抱える大学生や社会人のニーズに応える。②「心身の健康管理」ができる。次々と入る新たなタスクの調整に加え、持病や疲労度、気分ややる気を考慮することで無理なく最高のパフォーマンスでタスクを達成できる。③「応援してくれる存在」がアプリ上で見守り、応援してくれ、モチベーションを維持し、メンタルヘルスの向上につなげる。④「チーム作業を可視化する」ことで進捗(しんちょく)状況をメンバーが理解し、助け合える。
このプラットフォームは締め切りまでにベストな結果を出せて、タスクテーマの汎用可能性も高い。
【審査講評】
問題解決への思い、挑戦する意思伝わる
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CVG東北審査委員会委員長 蛯名 武雄
CVG東北審査委員会委員長 蛯名 武雄
20回目の開催となるCVG東北には、18件の意欲あふれる応募がありました。書面審査を経て選ばれた5件に対し、12月17日に仙台市内でプレゼンテーションによる本審査が行われました。前向きかつ創意工夫がみられるものばかりで、興味深く、また楽しんで聞かせてもらいました。候補者の気づき、社会問題を解決したいという思い、挑戦する意志が十分に伝わってきました。
最優秀賞に選ばれた秋田県立大学の長谷山直飛さんは、自立巡回もできる四足歩行ロボット「かみやぎ」を用いてクマ・イノシシなどの野生動物が人里に下りてくるのを防止するサービスを提案しました。地元ニーズに対応したユニークな提案に加え、技術の高さ、動物に対する検証実験の実施なども評価されました。
特別賞には岩手大学の齋藤朱里さんのグループと東北福祉大学の南川七海さんの提案が選ばれました。齋藤さんらは「ビール産業」をテーマにした産地形成プロジェクトの経験から発想した「共創のスマート化」を実現する管理ツール「共創リンク」を提案しました。ツールの発展性などが評価されました。南川さんは、規格外であることなどの理由で捨てられる花のアップサイクル事業「LB flower」を提案しました。花の利用として、染料、ドライフラワーなどカスケード利用を図るアイデアなどが評価されました。
奨励賞にはいずれも東北工業大学の遠藤悠吏さん、千葉なほ子さんの両グループの提案が選ばれました。遠藤さんらは、オンデマンド特化の冠婚葬祭DXプラットフォーム「Celebration Stream」の提案をしました。千葉さんらは利用者のストレス軽減に焦点を当てたスケジュール管理アプリ「Task Master Pro」を提案しました。
応募されたすべての皆さんに対し、その挑戦に最大限のエールを送りたいと思います。さらに最優秀賞、特別賞、奨励賞を受賞した皆さんの晴れの舞台での笑顔を見られることは審査委員全員の喜びでもあります。本当におめでとうございました。
第20回CVG東北審査委員会(敬称略)
〈委員長〉
蛯名 武雄(産業技術総合研究所東北センター所長)
〈委員〉
古谷野 義之(東北経済産業局地域経済部長)
伊藤 正弘(宮城県産業技術総合センター所長)
西山 英作(東北経済連合会理事・東経連ビジネスセンターセンター長)
青沼 廣利(みやぎ工業会専務理事事務局長)
管野 秀幸(通研電気工業社長)
引地 智恵(工藤電機社長)
松田 周一(日本政策金融公庫国民生活事業本部東北創業支援センター所長)
斉藤 伸介(日刊工業新聞社東日本支社長)