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第20回キャンパスベンチャーグランプリ北海道
「第20回キャンパスベンチャーグランプリ(CVG)北海道」実行委員会と日刊工業新聞社は2024年11月26日、札幌市中央区の札幌ガーデンパレスで最終審査会を開催した。厳正な審査の結果、最優秀賞の公立はこだて未来大学・同大学院のグループをはじめ、審査した全5組を入賞プランに決定。同日、表彰式と祝賀会も行い、受賞学生と実行委員、審査委員、協賛・後援企業団体の関係者らが交流を深めた。
入賞プラン紹介/審査講評
【最優秀賞】
INCUVERSE(※)個人開発アプリ共有プラットフォーム
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代表の松下さん
公立はこだて未来大学
松下 文太
公立はこだて未来大学大学院
西 陽也
佐藤 紘基
「INCUVERSE」は、学生が考案した事業アイデアや開発したアプリケーションを継続的に評価し、起業や事業化のきっかけを提供するコミュニティープラットフォームである。アプリコンテストやハッカソンで生まれた価値あるプロジェクトが埋もれることなく、企業や起業支援プログラムとつながることで実現可能性を高めていく。
「INCUVERSE」の強みは、誰もが気軽に事業アイデアを投稿できるシンプルな仕組みと、専門的なアドバイスやフィードバックが受けられるオープンな環境を提供できることである。人工知能(AI)を活用して学生と企業を効率的にマッチングする機能やSNS感覚で交流できる機能によって、学生の起業を強力にサポートする。学生が一歩を踏み出すきっかけを創出し、「いい経験」で終わらない未来を共に築いていく。「INCUVERSE」を通じて、学生の可能性を解き放ち、社会に新たな価値を届けていきたい。
※受賞時は「INCUBASE」で、その直後に改称
【優秀賞】
北海道を養殖先進地域へ 養殖システムの導入支援サービス
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代表の倉橋さん
北海道大学大学院 倉橋 康平
東京大学大学院 梁 冠宇
北海道大学大学院 佐々木 勇人
私が発表したプランでは旧競り場、漁港付近の空き施設、使用されていない加工場などの活用を支援し、初期投資を抑えながら養殖事業を展開する方法を提案している。特に、自社加工場や物流網と組み合わせることで、海面養殖と同等のコストと鮮度を実現できる点を重視している。また、閉鎖環境での生産により、顧客ニーズに応じたオーダーメード生産が可能となり、マーケットイン型の養殖生産を実現できることを強みとしている。
事業者が直面する主な課題は以下の三つである。①適切な設備投資と立地選定②安定的な種苗の確保③養殖技術を持つ人材の確保・育成。私のプランではこれらの課題に対し、独自のシミュレーション技術とIoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)を活用した管理システムの導入支援、地域との連携強化のコーディネートなどを通じて、包括的なソリューションを提供していく。
【奨励賞】
脱空き家!後世の「空き家ストック」利活用
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代表の葛西さん
室蘭工業大学大学院 葛西 芳枝
太田 錬
地方都市では、管理不全による「空き家の増加」や就職・進学をきっかけとした「人材流出」が課題となっている。そこで空き家や空き家になる可能性のある住宅「空き家ストック」と、その活用を担う「利活用人材」をつなぐマッチングサービスを提案する。
まず空き家ストックの活用に向け、所有者の住宅に関する意向や使われなくなる要因を整理し、低未利用化のメカニズムを解明する。次に初期ターゲットとして低予算での居住や交流を求める人材を対象に、空き家をシェアハウスとして利活用してもらうことを想定している。将来的には、空き家を活用してビジネスや活動を行う人材に変化を促すため、空き家活用教育プログラムを構築することも視野に入れる。
本事業の優位性は空き家の放置期間を短縮し、早期のマッチングによって住宅の劣化を抑制できる点にある。最終的には、低未利用化メカニズムと教育プログラムを基盤にアプリケーションを開発し、自治体レベルでの空き家対策を目指す。
【努力賞】
RunAd(ランアド)
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代表の池田さん
小樽商科大学 池田 莉々香
北海道大学大学院 野口 真司
今回、私たちは運動習慣を持つ個人を広告媒体として登録する仕組みをビジネスプランとして提案した。このビジネスモデルは、広告主と運動習慣を持つ個人を結びつけ、健康促進活動を報酬という形で支援するものである。
日本人の運動量は近年、低下傾向にあり、これはライフスタイルの変化、仕事や学校生活のデジタル化など、さまざまな要因によるものとされている。運動習慣を持つことは身体や精神の健康の維持・向上、改善に重要で、心臓病や糖尿病、高血圧などの慢性病リスクを低減し、健康寿命の延伸に寄与すると期待される。
我々のビジネスプランは、個人が行う運動に対するインセンティブの付与を通じ、人々の健康寿命の延伸に寄与することで日本が今後直面するとされる、高齢化による労働人口減少問題の解決に貢献できると考えている。同時に、このプランは個人を広告媒体とする新しいマーケティングの可能性を開拓すると信じている
【努力賞】
社会人教育特化型マーケットプレイス事業「Reach in」
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先名さん
小樽商科大学大学院 先名 修平
当プランの目的は、個人および企業の教育効率を向上し、社会全体の学習文化を高めることにある。プラン概要としては教育特化型マーケットプレイスの構築を目的としており、着想としては地方在住でスキルアップを目指す中で、適切な学習リソースを探す煩雑さや非効率性を実感した自らの経験も要因として挙げられる。
教育コンテンツの提供者としては、専門性を有する大学教員などと企業および個人をつなげることで簡便に学習コンテンツを検索、選択、受講できるものとしている。ターゲット顧客は、スキルアップを目指す個人、中小企業の社員教育担当者、そして人的資本経営の開示を義務付けられている上場企業を想定している。
差別化の勘所としては直感的なインターフェースやパーソナライズされた学習機能など、利便性と学習体験の質に特化させたところにある。そして、さまざまなステークホルダーとの信頼関係を構築した上での『学びたい意欲』に応じた継続的なアップデートを行う。
審査講評/ユニークな構想 グローバル事業展開も期待
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CVG北海道審査委員会委員長 鈴木 馨
CVG北海道審査委員会委員長 鈴木 馨
キャンパスベンチャーグランプリ(CVG)北海道大会は、節目となる20回目を迎えました。今回もさまざまな社会課題について学生の皆さんの独自の視点、着想で解決を目指す提案が数多くなされ、最終審査に残った提案については全体として質の高い内容だと感じられました。
実際、審査結果は各賞間では比較的僅差なものとなっていました。そのような中で各賞の授賞を分けたのは、事業化をより具体的に想定し、その発展や展開も念頭において提案内容をどれだけ深掘りしているかがポイントだったと思います。このことと関連して、提案書類には記載されていたけれど最終審査のプレゼンテーションにおいてはあまり触れられていない点があったほか、提案者が強調したり重点的に説明したりした点と、審査員がもっと詳しく知りたいと感じた点にずれがあったケースも見られました。そのあたりは、各審査員との質疑が参考になると思われますので、今後に役立てて頂ければと思います。
最優秀賞を受賞した「個人開発アプリ共有プラットフォーム」では、アプリコンテストなどで高評価されたものの、その後に活用されないケースが多いという課題に対して、そういったアプリを企業ニーズなどと照らしてブラッシュアップしたり、事業化を目指す企業とのマッチングをしたりして、実用化に結びつけるけるためのプラットフォームを創出するというものでした。この構想はたいへんユニークであるとともにグローバルな事業展開も期待されると思います。
その他の提案においても、提案者の皆さんが身近に接している課題の解決のための着想でしたが、必ずしも北海道限定の課題ではなく全国に共通している点が多いので、初めから全国展開への視点も考慮しておくと、より良い内容になると期待されるものが多くありました。以上、今後のさまざまな活動の参考になれば幸いです。
第20回CVG北海道審査委員会(敬称略)
〈委員長〉
鈴木 馨(産業技術総合研究所北海道センター所長)
〈委員〉
田北 剛(北海道経済産業局産業部経営支援課長)
浦田 哲哉(北海道経済部地域経済局中小企業課長)
橋場 参生(北海道立総合研究機構産業技術環境研究本部長兼工業試験場長)
小貫 秀治(北海道発明協会専務理事)
日谷 知章(エア・ウォーター北海道事業企画部長)
南 宗成(日本政策金融公庫国民生活事業本部北海道創業支援センター所長)
里見 英樹(メディア・マジック代表取締役)
廣瀬 岳史(NoMaps実行委員会事務局長)