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切削工具&ツーリング
ツールプリセッターの役割と活用
【執筆者】エヌティーツール 取締役 齊藤信
昨今の製造業では多品種少量生産の伸展や人手不足、熟練技能者の減少により、段取り作業の効率化と標準化が重要な課題となっている。また、加工精度の安定確保や不良削減、さらには自動化・デジタル化への対応も求められている。こうした背景から、切削加工の現場においては工具測定の高精度化に加え、段取り作業の効率化と属人化排除を実現する手段として、光学式ツールプリセッターの活用が広がっている。
ツールプリセッターの役割
ツールプリセッターとは、ツールホルダーとセットで使われる装置で、工具の長さや径などをマシニングセンター(MC)に取り付ける前に測定する際に用いられる。段取り時間の短縮や加工精度の安定化、作業の標準化に貢献する。
従来は工具をセットしたツールホルダーを、機械スピンドルへ装着して機内で高さを測定し、径方向の寸法は試し削り後に測定して補正することが一般的だった。そのため機械停止の時間も長く、作業自体の熟練も必要とされた。一方、ツールプリセッターは機械の稼働中に機外で前準備を行うことを可能にする。
昨今の主流である光学式のツールプリセッターは、工具の測定だけでなく工具振れ測定や摩耗観察、ソフトとの連動による測定結果のデータ出力・管理、加工設備へのデータ転送などができ、製造現場のデジタル変革(DX)に欠かせない機能を付随できる。
光学式ツールプリセッターを使用することで、高精度・高品質な測定や高い操作性によって作業を効率化できる。このほか、工具の管理、運用におけるDXを実現できれば、製造現場の品質と生産性の飛躍的な向上につながる。
光学式ツールプリセッターの特徴
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写真1 エヌティーツールのツールプリセッター「Aegis-iシリーズ Eagle」
光学式ツールプリセッターはカメラや画像処理技術により、工具に触れることなく測定できる非接触式の装置である(写真1)。長さ・径・刃先形状を高精度に捉え、工具へのダメージを与えないため、微小径工具や繊細な刃先にも最適だ。また測定データの数値化・管理により、段取りの標準化と属人化の排除を実現し、不良の低減と生産性の向上に貢献する。
高解像度カメラの撮像と画像処理で刃先輪郭を高倍率で捉え、工具の外径や長さに加えて刃先の欠け・摩耗状態、微小なR形状やチャンファー形状を非接触で測定する。接触式では困難なドリルの肩部までの高さ測定、微小径工具の先端形状や繊細なエッジ状態の評価、刃先位置を正確に認識した測定が可能で、工具状態を定量的かつ詳細に把握できる。これにより、加工開始前に異常を検知しやすくなる。
プリセッターの付加機能
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写真2 機上でのツールホルダーの締め付け作業
単に高さ・径を測定するだけではない。プリセッターは高精度なスピンドルを備えているため、工具を回転させながら刃先の回転振れをマイクロメートル単位で測定できる。刃先の微小な偏心や振れを可視化でき、工具精度の事前確認に有効だ。
プリセッターの多くはスピンドルに引き込み機構を備えており、加工設備へ取り付けた状態に近い条件での測定を可能にしている。これにより、機内でタッチセッターを用いて測定した場合と遜色ない測定値を得られる。
またコレットホルダーやミーリングチャックの締め付けを、本体のスピンドル上で行えるタイプも存在する(写真2)。万が一、振れ精度が基準を満たさない場合でも、その場で工具の付け直しと再測定を行える点がメリットとなる。締め付け台に乗せ換えて作業する手間が省け、再装着による微小な位置ズレや振れ変化も抑制できる。そのため、測定値の再現性向上と作業効率改善の両立に寄与する。
当社のプリセッターのスピンドルはBT50サイズがベースとなっており、ほかのサイズ(BT30やHSK63など)のシャンクを測定する場合は、アダプターを介してスピンドルへクランプする。アダプターは一般的なスピンドル規格に対応した種類を用意しており、付け替えることで1台のプリセッターで各種シャンクの測定が可能となる。
工具管理DXへの活用
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写真3 データ転送イメージ
最近では多種類のツールホルダーや刃物工具を一括で管理・運用する「工具管理」の部署を設置する企業が増えており、生産現場の運営において工具管理業務の重要性に対する認識が高まっていることがうかがえる。製造業全体でDXが推進される中、特に工具管理の業務はDX導入の効果が大きい領域と考えられる。
これらの業務改善を可能にする工具管理システムは、工具の測定・品質管理を行うツールプリセッターと親和性が高く、工具情報や測定データの一元管理、設備へのデータ転送などを効率的に行える(写真3)。
プリセッターと工具管理ソフトの連携
工具管理システムソフトはプリセッターと連動可能なものが各社から提供されており、測定プログラムや測定結果の保存、測定データのあらゆる活用を可能にする。例えば、工具ごとのセッティングデータをあらかじめ登録しておくことで、識別符号(ID)チップや2次元コードによる呼び出しが可能となり、都度の工具測定プログラムの設定なしで運用できる。
また測定データをオフセット値へ自動変換し、MCへ転送・書き込みを行うことで、段取り作業の効率化とヒューマンエラーの低減に寄与する。工具の加工数や使用履歴などを管理項目とすることで、正確な工具寿命の判断に活用でき、工具折損の予防や無駄な工具購入などもなくせる。
工具管理業務のDXにより、次のような効果が期待される。
①帳票類の削減による管理コスト低減
②ペーパーレス化による省エネルギー対応
③プリセット作業の工数削減による省人化
④工具管理情報の活用による工具費低減
⑤ヒューマンエラーの防止による不良低減
このようにツールプリセッターと工具管理ソフトを連携させることで、工具管理業務の効率化に加え、品質安定化や省人化にも貢献し、製造現場全体のDX推進を支える仕組みとして活用されている。
自動プリセットシステムの提案
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写真4 ロボットと連動した自動プリセットシステム例
昨今の人手不足、熟練技能者の減少により、プリセット業務においても自動化による省人化のニーズは増えており、各プリセッターメーカーも独自の技術で現場の課題解決に取り組んでいる。当社でもロボットと連動した自動工具搬送から、工具の着脱、工具の高さのセッティングまでを完全自動化したシステムを提案している(写真4)。一例として、当社の自動プリセットシステムを用いた自動化の内容を説明する。
サイクルとしては、使用したツーリングをロボットで搬送し、刃物の取り外し、洗浄を行う。刃物は準備していた新しいものと交換してホルダーへ挿入し、工具の高さのセットと締め付けを行い、プリセッターから搬出する。これらをすべて自動で行うシステムだ。
当社の同システムは当社製コレットホルダー、同ミーリングチャック、同ハイドロチャックへの対応が可能。データの取得には、ツールホルダーに取り付けたIDチップや、刃物に印字した2次元コードを読み込むことで対応するが、無線識別(RFID)でも運用できる。搬送や刃物の取り外しは協働ロボットや水平多関節(スカラ)ロボットなどで実績があり、あらゆる設備、システムとの連動を可能にする。
製造業を取り巻く環境は今後も大きく変化していくことが予想される。その中で、工具管理や段取り作業の効率化、品質安定化を支えるツールプリセッターの役割は、ますます重要になると考えられる。単なる測定機器としてではなく、工具管理システムや自動化設備と連携したDX推進ツールとして活用することで、生産性向上、省人化、品質向上に大きく貢献し、次世代のモノづくりを支える存在となることを期待したい。
