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労災防止の認識新たに
定期検査・整備/安全確認カギ
クレーンの日はクレーンなどに関わる全ての人が、災害防止の重要性について認識を新たにする日として制定された。制定当時と比較すると、クレーンなどによる死傷者数は大幅に減少しているものの、いまだ死亡災害は起きている。
2021年のクレーンなどに関係する死亡者数は、前年比12人増の54人だった。業種別に見ると建設業が21人と最も多く、次いで製造業が19人、陸上貨物運送事業が7人となっている。機種別に見ると、天井クレーンや橋型クレーンなどの「クレーン」による死亡災害が27人、クローラークレーンなどの「移動式クレーン」による死亡災害が22人で、合わせて全体の9割を占めている。そのほかエレベーターや簡易リフトでの死亡災害が発生している。
災害現象別では、多い順に狭圧によるものが23人、落下によるものが15人、墜落によるものが11人となっている。最も多い狭圧による災害の中では、吊り具・吊り荷と床上の物体によるものが8人、機体(搬器)とほかの構造物によるものが7人、吊り荷の転倒によるものが5人となっている。
落下による災害の中では、吊り荷の落下によるものが10人(落下による死亡事故全体の66%)と大きな割合を占め、その全てが玉掛けワイヤロープなどから吊り荷が外れたことにより発生している。
クレーンによる災害・事故を防止するには、クレーンの性能検査を受検し、定期自主検査・点検・整備を実施することが重要となる。さらに事業者は作業者に対して作業マニュアルを周知し、作業者自身もマニュアルに基づいてクレーンの運転や玉掛け作業を行うことが求められる。特に災害の多い玉掛けや玉外しの作業では、吊り荷の安定を確認するとともに指さし呼称で安全な状態であることを確認することが重要だ。
ポスターで注意喚起
ここ数年のクレーンなどに関する労働災害による死傷者数は、年間1600―1800人程度で推移している。引き続き労働災害防止に向けた意識を高めたい。
日本クレーン協会とボイラ・クレーン安全協会はそれぞれ「クレーンの日実施要項」を作成・配布し、労働災害につながる職場の危険有害要因を明確にして、改善に取り組むことを促している。クレーンの日には実施要項を基に、作業における確認点を一つひとつチェックして、日ごろの作業を改めて見直したい。
また両協会では毎年、クレーンの日に合わせてポスターを作製しており、写真と標語を募集している。
今年の日本クレーン協会の標語は「フックにかかる命の重み 指さし確認! 安全ヨシ!」を選び、道路建設の現場に立ち並ぶクレーンの写真を使用した(写真)。
ボイラ・クレーン安全協会は「クレーン作業 焦らず 無理せず 油断せず」を標語に採用した。停泊する船にコンテナを積み込むガントリークレーンの写真を選んだ。これらのポスターを掲示することで注意喚起を促し、安全活動を推進する。
ごあいさつ/日本クレーン協会 会長 森下 信 氏
災害防止・点検・整備を啓発
「クレーンの日」は、43年前の1980年に日本クレーン協会とボイラ・クレーン安全協会により、現行のクレーン等安全規則が公布された9月30日にちなんで制定されました。広くクレーン関係者に対して、クレーンに関わる災害防止、点検、整備などについての啓発を目的としています。
2022年の全産業での労働災害発生状況は、死亡者数は774人、休業4日以上の死傷者数は13万2355人となり、前年に比べて増加傾向にあります。労働災害を減らすためには、危険性を認識するリスクアセスメントおよびリスク低減を実施するとともに、作業標準に沿った安全作業を徹底して、労働者の安全を確保することが大切です。
当協会では「クレーンの日」と関連して、インターネットやポスターなどを活用して広報活動を行っています。また全国クレーン安全大会を開催し、優良クレーン運転士の表彰、特別講演、研究発表などを行っています。今後も一層の安全啓発活動に努めてまいります。