-
業種・地域から探す
建設機械
建設機械各社が、排ガスや二酸化炭素(CO2)排出量削減を目指すグリーン・トランスフォーメーション(GX)に対応した製品の開発・投入に注力している。コマツは電動化やハイブリッド、水素エンジンなど全方位での製品開発を進めている。日立建機はバッテリー駆動式ショベルや可搬式充電設備を販売するなど、デジタル変革(DX)と並び、各社が積極的な事業展開を見せている。
脱炭素へ開発・投入積極化 GX認定建機導入に補助金
国土交通省では建設施工現場における電動建機の普及を促進し、脱炭素化を図るため、2023年10月に「GX建設機械の認定制度に関する規程」を策定。型式認定を受けた建設機械は認定ラベルを付けることができる。また、24年には対象機種の拡大を行っている。認定を受けた機械の導入に補助金を交付する制度も行われている。
このような脱炭素化推進の動きに合わせて、建設機械メーカー各社ではGX関連製品の投入・開発を積極的に進めている。
電動化・HV
-
水素専焼エンジンを搭載した大型ダンプトラックのコンセプトマシン(コマツ)
コマツはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を達成するための施策として、電動化やハイブリッド、水素エンジンなど全方位での製品開発に注力。電動化建機は20年に第1弾を市場に投入して以降、リチウムイオンバッテリーを搭載した20トンクラスの電動ショベルなどの7機種を投入した。
電動化建機に加え、25年には鉱山機械の主力機種である大型ダンプトラックHD785に水素専焼エンジンを搭載したコンセプトマシンを開発し、茨城工場(茨城県ひたちなか市)で実証実験を開始。大型ダンプトラックに水素エンジンを搭載するのは世界初の試みとなる。実証実験を通じて知見を蓄積し、未来の「水素建機」の開発につなげたい考えだ。
日本にも投入
-
5トンクラスのバッテリー駆動式ショベルZX55U—6EBと可搬式充電設備(日立建機)
日立建機は24年9月に国内で5トン、8トン、13トンクラスのバッテリー駆動式ショベル3機種と可搬式充電設備を発売した。電動ショベルは環境意識が高い欧州で先行販売しており、欧州に続き、日本市場にも投入することで、電動建機の市場性を探る。これとともに、施工現場での使用感や効率的な運用方法を検証する。
可搬式充電設備は九州電力との共同開発品で、メインユニットや急速充電ユニットを自由に組み合わせて施工現場に導入できる。
水素充填設備
コベルコ建機は神戸製鋼所の高砂製作所(兵庫県高砂市)内に、水素燃料電池ショベルの高圧水素充填設備を整備した。26年度に国内で行われる実証実験での活用に向けて、同製作所で連続掘削作業などの本格稼働評価を実施し、水素燃料電池ショベルの現場導入に向けた取り組みを推進する。
本格的な稼働評価には高圧水素充填と掘削評価が可能な環境が必要なことから、ハイブリッド型水素ガス供給システムなどの水素関連施設が集まる高砂製作所で整備した。そこでの検証の結果、水素燃料電池ショベルに充填できることを確認した。
環境に配慮
-
フル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR—250N」(タダノ)
タダノは24年に策定した26年度までの3カ年中期経営計画において「Reaching new heights~新たなステージへ~」をスローガンに掲げる。業界のリーディングカンパニーとして、顧客の安全と地球環境に配慮した新たな価値の提供に取り組んでいる。基本戦略の一つである「脱炭素化の加速」に沿い、環境対応製品の拡充を進めている。
23年12月に発売し、GX建機としても認定されたフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR—250N」を皮切りに、北米向けのフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR—1000XLL—1」や、最大1600トンの吊り上げ性能を持つ超大型有線式電動クローラークレーン「EVOLT CC88.1600—1」などをラインアップする。
またタダノ本体での開発に限らず、今年グループに加わった米マニテックス、タダノインフラソリューションズ(旧IHI運搬機械)も電動製品を扱っており、グループ全体で脱炭素化を加速している。
水素建機実証
フラットフィールド(神奈川県厚木市)や東京都市大学などの4機関で構成するグループは、環境省の「令和6年度水素内燃機関活用による重量車等脱炭素化実証事業」において、水素のみを燃料に用いる「水素専焼エンジン」を搭載した油圧ショベルを開発し、実際の工事現場での実証試験を行った。同事業では、住友建機製の20トンクラス中型油圧ショベルをベース機として使用し、ピストンやシリンダーヘッドなどを水素専焼に対応した部品に交換することで、ディーゼルエンジンから水素専焼エンジンへの改造を実現した。
住友建機では同試験への参加を通じて、建設機械・荷役機械における水素の利活用の可能性を探っていくという。
レンタル/排出枠活用—商品を展開
建設機械レンタル各社もGX建機への対応を進めており、CO2排出量を削減する建設機械のレンタル製品を投入している。アクティオは電動パワーユニットを搭載した古河ユニック製移動式クレーンを投入。同ユニット併用で、ディーゼルエンジンと電動モーターの切り替えが容易なため、多様な作業環境に柔軟に対応できる。また電動モーター使用時は排ガスを出さないなど環境への配慮と高い作業効率を実現している。レンタルのニッケンは米国ボブキャット製の電動ショベルで、バケット容量0・1立方メートルクラス機種を投入。電動ショベルのレンタルは、ボブキャット製の0・03立方メートルクラス機種に続いて2機種目となる。
またこれら建機レンタル2社は、政府の排出枠取引制度「J—クレジット」を活用した商品を展開。レンタルのニッケンはサスティネリ(東京都渋谷区)と共同で、建設機械レンタルに伴うCO2排出量を、カーボンオフセットで実質ゼロにできるサービス「カーボンオフセット付きレンタル」を提供。機械の返却時に使用燃料を報告するだけで、J—クレジットを簡単に活用できる。
アクティオは業務用車両に「カーボンクレジット付リース」を導入。経年が長く走行距離も多い業務用車両107台を対象に、環境性能が高い車両への入れ替えと同時にCO2排出量を相殺。CO2排出量を年間454トン削減できる。
