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建設機械
建設機械各社のカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた取り組みが進んでいる。コマツはマイクロショベルから20トンショベルに至るまで、クラス別に電動ショベルを品ぞろえし、幅広い顧客のニーズに対応する。コベルコ建機は2025年度中に欧州市場で、1・7トンと7トンの電動ショベルを発売する考え。住友建機も8トンに続き、13・5トンショベルの投入を計画する。タダノは環境対応製品の拡充で50年にカーボンネットゼロの実現を目指す。
欧州、電動建機に補助金
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コマツの13トンクラス電動ショベル「PC138E-11」
電動ショベルは稼働時間や充電インフラなどの問題があるのは確かだが、環境対応を強調したい建設会社や鉱山会社の事情もあって、徐々に市場が形成されつつある。
電動ショベルはディーゼルエンジンショベルと比べて、価格が3-4倍すると言われてきた。基幹パーツのリチウムイオン電池(LiB)が高価なことが主因だ。1台1000万円のディーゼルショベルならば、同クラスの電動型だと単純計算で3000万-4000万円する勘定。それでもユーザーが電動ショベルに関心を寄せる背景には、世界におけるグリーン・トランスフォーメーション(GX)化の潮流がある。
ノルウェーやオランダ、フィンランドなど欧州諸国で、電動建機導入の補助金支援が行われている。中国も自国電池メーカーの優位性を生かして電動ショベルの開発促進や優遇策に動いている。世界市場で3位を占める中国が電動化を進めれば自動車における中国企業の台頭と同様、将来の建機市場の主導権を握り、業界勢力図が変わるおそれもある。
バイオ燃料で脱炭素
大手ゼネコンや鉱山会社などの建機ユーザーも、CN実現に向けて電動建機の導入や水素燃料活用などの方針を打ち出している。鹿島は建機の電動化やバイオ燃料活用で脱炭素化を目指すとし、大成建設も電動建機導入を進めるとしている。鉱山会社では豪州のBHP、英国のリオティントなどの世界的大手がコマツとそれぞれ提携し、鉱山ダンプトラックの開発を進めている。鉱山ダンプや鉱山ショベルは一般建機より大型・大重量で二酸化炭素(CO2)排出量も多いだけに、これらを電動化することは環境・社会・企業統治(ESG)経営を進める上でも至上命題だ。
性能面や品質面、耐久性などで、世界市場における国産メーカーの評価は高い。ただ欧州のボルボ、中国の三一重工、米国のキャタピラーなども2トンから20トンクラスまでの電動ショベル製品を投入済みで、国産メーカーも開発が急がれる。
日本、小型で先行
国内の電動ショベル化の動きは、ミニショベルやマイクロショベルが先行する。これらは6トン以上の油圧ショベルに比べてパワーも電池も少なくて済むほか、車体の小ささを生かし都市部や屋内工事などで、低騒音・排ガスゼロなどの特徴が生きる用途が見込める。
竹内製作所が複数の電動ショベルを発売したほか、コマツのマイクロショベルはホンダと共同開発したカセット式電池を搭載し、工事中に電力が足りなくなれば電池を充電済み電池に交換して作業を続けられる。
電動ショベル 都市部で活躍 低騒音・振動-自動運転
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実証実験を始めているコベルコ建機の水素燃料電池ショベル -
発売開始した酒井重工業の電動ハンドガイドローラー
普及支援では国土交通省が、稼働中にCO2を出さない建機を「GX建設機械」として認定する制度をスタートさせており、これと連動した環境省の電動化促進事業ではディーゼルエンジンショベルとGX建機ショベルの価格差の、3分の2を国が補填する。電動ショベルの普及ネックだった高価格問題がかなり改善されるため、購入の追い風になることが期待される。
電動ショベルはほかにもディーゼルエンジンショベルにない長所がある。騒音や振動が少ないことは作業者の負荷軽減だけでなく、ゼネコンなど保有者にとっても周辺住民などからの苦情の減少につながる。室内のような閉鎖空間や、夜間でも工事が行えるため、作業プランが立てやすい。部品点数が少ないためエンジンオイル交換といった整備の手間が省け、点検時間の作業ロスも短縮される。
コベルコ建機の山本明社長は「電動建機の電動アクチュエーターでミリメートル単位の制御ができるため、自動運転や情報通信技術(ICT)施工の精度を格段に高められる」とメリットを強調する。
酒井重工業は24年10月に、国内市場で電動ハンドガイドローラーを発売した。「夜間工事が行いやすいことに加え、自社での活用策を探るために電動ローラーを一度試してみたいというユーザーが増えている」と吉川孝郎執行役員は明かす。
急速充電-協業進む
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アルフェンの充電器から充電する日立建機の電動ショベル
電動ショベルのマイクロショベルやミニショベルでは電池容量も乗用車レベルだが、中・大型クラスのショベルだと8時間以上の稼働時間を確保するため、急速充電インフラが不可欠だ。日立建機はこの点を見越して国内市場では九州電力と建設現場の電力供給ソリューションで協業する覚書を締結。欧州市場ではオランダ・アルフェンの可搬式充電設備の販売、レンタルを始めている。「建機が多数ある現場で1台だけ電動化しても意味がない。多数台がそろって充電できるインフラができてこそ普及が進む」と日立建機の先崎正文社長は話す。
コマツやコベルコ建機は電動ショベルと並行して、水素燃料電池ショベルの開発も進めている。水素ショベルは水素運搬や保管の問題はあるものの、急速チャージができるため電動ショベルのような充電時間の悩みがないのが利点だ。
GX建機-国交省が認定制度 電動クレーン 世界最大級
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タダノの有線式電動超大型クローラークレーン「EVOLT CC88.1600―1」
コマツの今吉琢也取締役専務執行役員は「建機は自動車と違い、どこで充電するかが問題。カーボンニュートラルの開発は今後も力を入れる」と語る。
タダノは24年12月に有線式電動超大型クローラークレーン「EVOLT CC88・1600-1」を開発した。最大吊り上げ性能1600トンの超大型クレーンを電気で動かすことで、作業中のCO2排出をゼロにできる世界最大級の装置となる。発売は25年夏を予定している。
系統電源を使用して390キロワットの三相誘導電動機で油圧ポンプを駆動することで、従来製品比で年間55トンのCO2排出が削減可能。既に市場に流通している同型製品も、ドライブコンテナをエンジンから電動へ載せ替えることで電動化に対応できる。今後需要の高まりが期待される風力発電分野をはじめとする現場に向けて、安全で質の高い建設作業をサポートするための環境対応製品を提案していく。