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コベルコ・コンプレッサ流カーボンニュートラルの提案
省エネ診断
効果的な省エネを推進するには、圧縮機の現状を知ることが不可欠である。当社で行う省エネ診断では、圧縮機の稼働状況・ライン圧、末端圧力・エア漏れ量を測定することでユーザーのエアシステムを診断し、具体的な問題点の抽出から省エネ改善プランを提案している。
これまで8000社(約3000台)以上のコンプレッサーを診断し、主にインバーター機の採用や台数制御により20万トン以上の二酸化炭素(CO2)削減に貢献してきた。
排熱利用
温水回収装置
圧縮機は多くの電力を消費するが、実際は投入した電力の大半(約90%以上)がクーリングタワーから大気中へ捨てられている。この排熱を効率的に回収して活用することで、ユーザーの「環境負荷低減」と「エネルギーコスト削減」の両立が可能となる。
今回、当社ではALEⅣシリーズ(132キロ―400キロワット)への適用が可能な温水回収装置を開発、発売した。
同装置は圧縮機とは別に温水回収ユニットを設置し、圧縮機と温水回収ユニット間を冷却水配管で接続するシステム構成となる。図1にフローを示す。
通常の圧縮機では、冷却水の圧縮機入・出温度差が10度C程度となる水量で運転を行う。本仕様では圧縮機内の冷却水流路を一部変更し、さらに冷却水量を減らすことで最大94度Cまで加熱した温水を得ることができる。また、クーリングタワーから廃棄していた熱量の最大94%を温水として回収できるようになった。
本温水回収装置の特徴やメリットを四つ紹介する。
まず一つは回収可能な熱量が多いこと。圧縮機の入力電力のうち、一般に数%程度が圧縮機本体水ジャケット・オイルクーラーなどで熱交換される。当社の温水回収装置ではそれらの部位からも熱回収を行うため、高い熱回収効率を実現する。
二つめに圧縮機のパッケージをそのまま活用できることが挙げられる。熱回収において、圧縮機側は冷却水ラインの小変更のみで対応できる。熱回収用のガスクーラーや空気配管部がパッケージの外置きではないため、高温の空気配管のラギング処置が不要。また、空気配管からの騒音が増したりするような作業環境の悪化がない。
三つめは圧縮機内の空気ラインが流用できることである。標準圧縮機の空気配管をそのまま使用するため、圧損増加による圧縮機の無駄な動力ロスが発生しない。
最後に、温水ラインが比較的容易に導入できることが挙げられる。温水ラインの循環ポンプ、制御装置などは温水回収ユニット内に設置している。そのため、ユーザー側で水ポンプなどを準備する必要がない。また、温水ラインの温度・圧力などの情報を出力し、ユーザーが遠隔で監視することも可能となる。
圧縮機から回収した温水はボイラ給水の予加熱、製品や容器などの洗浄、空調、シャワーなどいろいろな用途に使用できる。
参考にボイラ給水の予加熱へ温水回収装置を適用した場合の概算メリットを表に示す。圧縮機の運転条件、回収した熱の利用率などでメリットは若干変動するものの、基本的には大きな省エネ化を実現できる製品である。
排熱ドライヤー
次にオイルフリースクリュー圧縮機と周辺機器の組み合わせによる省エネ化を紹介する。
前述の通り、圧縮機は入力されたエネルギーの大半を大気に放出しながら運転している。近年、この放出されたエネルギーを回収して有効利用するための機器が各社から販売されており、その一つに排熱ドライヤーがある。
ドライヤーは圧縮空気中の水分を除去するため圧縮機下流に設置される。排熱ドライヤーは加熱再生式吸着ドライヤーに分類され、吸着剤の加熱再生に圧縮機が吐出する高温の圧縮空気を利用する(図2)。
オイルフリースクリュー圧縮機の排熱を利用するため、ヒーターなどの加熱エネルギーを必要とせず、ドライヤーとしての損失エネルギーはほとんどない。排熱ドライヤーの消費電力は数―数十ワット程度であり、消費電力の面でも非常に省エネ性に優れた組み合わせと言える。
低圧単段仕様
一般的に2段式のオイルフリースクリュー圧縮機では吐出圧力を0・1メガパスカル下げると消費電力が約7%減少する。工場ラインのプロセスでそれほど高い圧力を必要としない場合、吐出圧力をプロセス圧に合わせて下げれば消費電力を大きく削減できる。プロセス圧が低い用途の一例として、粉体の搬送、解砕などがあり、これらは0・1―0・2メガパスカル程度の圧力で十分な場合がある。
標準仕様のALEⅣは2段式のオイルフリースクリュー圧縮機のため、パッケージの内部に1段圧縮機(低圧側)と2段圧縮機(高圧側)の二つの圧縮機本体が内蔵される。
従来、低圧力用途に対し2段式のオイルフリースクリュー圧縮機の吐出圧力を下げて適用する場合もあった。
しかし、2段式では下げられる圧力に限界があり、また圧力を下げても2段圧縮機本体分の機械損失は減らないため、余分に動力を消費してしまう課題があった。
これらの課題を解決するため、当社では低圧単段仕様のALEⅣ(空気量レンジ=1分当たり21・2―65・6立方メートル)を発売した(写真)。
本仕様は1段圧縮機(低圧側)のみを使用して圧縮空気を供給する。インバーター機/定速機、水冷機/空冷機問わず対応でき、運転可能な吐出圧力は0・1―0・25メガパスカル(機種によって仕様が異なる場合あり)となる。
低圧単段機を適用した場合の概算の消費電力差を図3に示す。低圧単段仕様では標準仕様に対し約22%消費電力が低い。低圧力用途に適用する場合、非常に省エネ性に優れた圧縮機であることがわかる。
Kobelink
当社独自のIoTクラウドサービス「Kobelink」はクラウドによる遠隔監視により、コンプレッサー1台ごとの運転状態(圧力、温度、電力、負荷など)をリアルタイムでグラフ表示することができる。これらの運転データはCSVファイル形式での出力にも対応しており、省エネ化のための最適な運転計画の分析、改善策を検討することができる。
また、コンプレッサーの異常を検知した際の「異常停止」「警報発報」「メンテナンス」のアラーム発生機能(メールで通知)を搭載しており、トラブルの早期発見により生産ラインの安定操業にも貢献する。
おわりに
当社は「空気と熱で未来を変える。」という企業理念の下、これまでに豊富な実績がある省エネ診断による省エネプランや省エネメニューの提案に加え、新たに熱回収(排熱利用)のメニューなどもそろえたエアシステムソリューションを提供。ユーザーとともに、社会とともに、また地球とともに、カーボンニュートラルの実現に向けて歩み続ける。
【執筆】
コベルコ・コンプレッサ マーケティング部 販売企画室 マネージャ 奥藤 卓也