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5軸制御横型マシニングセンターにおける最新の工程集約・自動化技術
近年、装置の軽量化や省スペース需要の高まりを受け、その部品は一体化され複雑になりつつある。そして、省エネ要求による装置の高効率化のため、部品そのものの要求精度も高まりつつある。さらに、少子高齢化に伴う労働人口の減少によりオペレータの人材確保が難しくなる中で、高能率化・省人化の要求はますます高まる一方である。このような市場要求に応えるべく、5軸・複合加工機をはじめとした製品ラインアップを拡充するとともに、さまざまな最新技術の搭載を進めている。本稿では、安定した精度と高生産性によりサステナブルな生産を実現する高精度5軸制御横型マシニングセンター(MC)「INH63/同80」の特徴を例に説明し、最新の工程集約・自動化の技術や事例とその効果を紹介する。
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5軸制御横型マシニングセンター「INH63」
DMG森精機では、高精度・生産性向上への対応とサステナブルな社会の実現に貢献するためにマシニング・トランスフォーメーション(MX)を提案している。
まず、5軸化・複合化で工程集約を行うことにより、従来専用機を設置し複数台で行っていた加工を1台に集約したり、計測工程を集約したりすることが可能となる。工程集約により1度のセットアップで5面を加工できるため、ワークの固定が容易になり、治具の種類、数量も削減できる。
その結果、ワークの着脱、パレット搬送の自動化が促進される。結果、各工程の段取り時間、中間仕掛品在庫、工具・治具、工場面積、リードタイム、消費電力、二酸化炭素(CO2)排出量の削減が可能となる。さらに、これらの情報をデジタル・人工知能(AI)技術で収集、分析、可視化し、そのフィードバックを基にプロセスを改善するデジタル・トランスフォーメーション(DX)を活用することで、人、資源、エネルギー、工場面積、時間など全てにおいてリーンでクリーンな生産現場を実現するグリーン・トランスフォーメーション(GX)にも貢献すると考えている。
当社では、この一連の効果をMXと位置づけ、ユーザーに提案している。最新のINHシリーズはPrecision(高精度)、Productivity(生産性)、Flexibility(柔軟性)の三つを特徴とした独自の技術を備え、ユーザーのMXを実現できる最適な製品と位置付けている。
工程集約・自動化への対応
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LPPを活用したNHX6300(4軸機)とINH 63(5軸機)の自動化システム
高精度5軸制御横型MCのINHシリーズでは、重切削加工から高速加工まで対応可能な高剛性主軸「powerMASTER」を搭載している。標準で主軸最大トルク808ニュートンメートル、主軸出力85/40キロワットを実現し、荒加工から仕上げ加工に至るまで幅広い領域において高いパフォーマンスを発揮する。
また、長時間の連続・無人稼働を行うために、最大363本(オプション)まで収納可能な大容量かつ省スペースなホイール式マガジンを搭載している。標準搭載のマガジン操作パネルによりスムーズな工具段取りを行うことができ、メンテナンスが必要な工具を画面上で瞬時に絞り込むことも可能である。
さらに、加工不良を防止するため、高度な画像処理技術によりマガジン内で工具の折損と切りくず巻き付きを自動で高速に検出する装置も装備している。
当社では、フレキシブルな自動化システムを構築できるパレット搬送システムをはじめ、プログラミング不要のロボットシステム「MATRIS」など、使いやすく設計された多彩なワーク搬送システムをラインアップしている。写真2は、立体タイプのパレット棚にも対応するリニアパレットプール(LPP)に、INH63、NHX6300(4軸機)が接続された自動化システムの事例となっている。
進化した切りくず対策の技術
工程集約・自動化による、長時間の連続・無人稼働を実現するためには、切りくずの処理が重要である。INHシリーズでは、新開発の省エネ・省スペースの立型大容量クーラントタンク「zero―sludgeCOOLANTpro」を標準搭載している。立型タンク構造の深さを生かして、スラッジや混入油を比重差で分離し効率的に回収することで、クーラント寿命の向上に加え、クーラントタンクの清掃頻度を大幅に削減できる。
さらに、必要なクーラントの流量に合わせてポンプをインバータで制御することで消費電力を最大57%削減(省電力クーラントモード有効時)可能である。また、モータ駆動による稼働式クーラントノズルを標準装備し、機内の隅々まで洗浄することで切りくずの堆積を防止する。
加えて、テーブル傾転する構造を生かして、ワークの周辺や内部に堆積する切りくず・クーラントを機内で除去することが可能となり、段取りステーションへの持ち出し量を大幅に削減し、ワーク段取り時の清掃作業も軽減する。これらの切りくず対策により、夜間や週末の連続・無人稼働も行うことで、稼働率の向上をサポートする。
稼働状況の遠隔監視
INHを導入し、工程集約・自動化を実現することにより、機械の稼働状況などを機械設置場所以外から確認可能となる。そこで当社では、機械稼働の遠隔モニタリング「Messenger」、機械の遠隔操作「NETservice」といったアプリケーションの提供や、機械のネットワーク接続をワンストップで支援する「DMG MORI GATEWAY」サービスなどDXを支援する製品を提供している。
今後もDMG森精機は、工程集約・自動化・DX・GXのための技術開発に打ち込み、ユーザーのMX実現、生産性向上に貢献していく。
【執筆】
DMG森精機
執行役員 マシニングセンタ開発担当
多賀 充
