-
業種・地域から探す
クラッチ・ブレーキ
クラッチ・ブレーキは各産業分野で動力の伝達制御に欠かすことができない機械要素部品。身近なところではOA機器の紙送り機構、昇降機の停電時・緊急時のブレーキ、自動車のパワースライドドアやエアコンなどさまざまな用途で使用される。近年、製造業向けロボットの市場拡大に伴い、性能向上とともに、安全性の確保や予知保全などの高付加価値化が求められている。
ロボット普及で市場拡大
クラッチ・ブレーキは機械産業の工場自動化(FA)を中心に、各種産業でモーションコントロールの要として需要が拡大してきた。クラッチは駆動力を伝達・遮断する機能を持つ継ぎ手、ブレーキは負荷慣性や機械系を減速・停止(制動)、または停止状態を保持する装置と定義され、構造や動力の伝達形態によって電磁、機械、油圧、空圧に分類される。乾式単板クラッチ・ブレーキからサーボモーターへの転換が進み、一般産業用の乾式単板クラッチ・ブレーキの需要は縮小傾向にある。
一方、サーボモーターやロボットの普及により、国内外の市場では保持用電磁ブレーキ・クラッチの市場拡大が進む。
富士経済が2024年3月に発表したFAロボットの世界市場調査では、製造業向けロボットの世界市場規模が22年の1兆3202億円から、28年には66%増の2兆1919億円になると予測されている。製造業では業務効率化や人手不足解消といったニーズが高まり、半導体向けや中国・欧州を中心に電気自動車(EV)関連で導入が拡大してきた。23年は設備投資が抑制されたことで縮小したものの、中長期的には組み立て・搬送系の協働ロボットや小型垂直多関節ロボットなどの需要増加が見込まれる。
製造業向けロボットの需要の増加とともに、電磁ブレーキの市場も拡大している。ロボット向け電磁ブレーキはサーボモーター内へ組み込まれたり、減速機と一体になるなど、アクチュエーターとしてロボットの関節部分に搭載され、定位置で軸の保持や、緊急時の動作停止の役割を担っている。モーターやアクチュエーターの小型化に伴い、電磁ブレーキも小型化・薄型化のニーズが高くなっており、ロボットの応答性や軽量化につながる構造が求められている。
また、製造業向けロボット分野では協働ロボットの普及による労働力不足の解消が期待されている。近い将来、ロボットが人の生活環境で欠かせない存在になり、安全装置としてブレーキやクラッチの重要性が増す。メーカー各社は小型化・薄型化に加え、長寿命化・省電力化といった性能向上とともに、安全性の確保や、予知保全などの高付加価値化を図り、製品を拡充している。