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人手不足ニーズに対応
機械性能を引き出す前提となるチャック。その市場環境は、コロナ禍からの経済活動の再開で堅調だった動きから変化がみられる。
日本工作機器工業会の集計によると、2022年のチャックを中心とする工作物保持具の販売額(暦年、ハンドチャック、パワーチャック、特殊チャック、アクチュエーター、回転センター、その他工作物保持具の集計)は、前年比10%増の155億7600万円で、2年連続で2ケタの伸びを示した。ただ、23年上期では前年同期比3%減となり、単月でも直近公表の10月まで8カ月連続のマイナスとなっている。
また、チャックの需要に影響する工作機械の受注をみると―。日本工作機械工業会(日工会)が発表した10月の工作機械受注額(確報)は前年同月比20・6%減に。10カ月連続で減少した。前年の好調に加え、中国経済の減速など、設備投資に慎重な傾向を伺わせている。
ワークをしっかりとつかみ、高精度加工に導くチャックには、手動式で爪を開閉するハンドチェック、油空圧を利用したパワーチャック、特殊パワーチャックなど、さまざまなタイプがある。
このうちハンドチャックには多品種少量向けの円筒ワーク用のスクロールチャックや、四角形・大型ワーク向けの四つ爪単動チャック、小物量産加工に適したコレットチャックなどがある。パワーチャックは油空圧を利用し、爪を自動開閉してワークをつかむ。手動式に比べて手間が省け、生産性向上に貢献してきた。
“省段取り”追求
多様なチャックを提供する中、高精度、高速対応とともにメーカーは生産の効率化と関係する段取り替え作業の短縮・省力化にも力を入れている。
北川鉄工所は10月に旋盤用パワーチャックの爪(ジョー)交換をサポートする「BRーAJC Mシリーズ」を発売した。別のワークに変更する際に必要な爪の再成形が不要で、交換作業の“省段取り”に寄与する。近年、人手不足が課題の工場現場のニーズに応えた。
パワーチャックを使用した旋盤加工は別のワークに変更する際に、爪把握面をワーク形状に合わせ、旋盤で再成形する必要がある。爪脱着で、チャックのマスタージョー溝とTナット、爪溝とTナットに隙間ができ、成形時から爪の取り付け位置の変化で起こる、がたつきを防ぐためだ。
このため、独自仕様のTナット「Tnut-Plus」を開発。幅は双方の溝よりわずかに大きくし、側面に変則的なヌスミを入れ、爪を傾けることで両方の溝に挿入できる。この状態からボルトを締結すると、二つの溝と独自のTナットが互いに干渉。隙間がゼロになり、把握精度を維持できる。
爪の取り付け位置が簡単に再現できるように、位置決め部品も工夫した。爪を脱着しても把握精度は0・01ミリメートルT.I.R(読みの最大差)以下。工程能力の向上など生産性が向上する。
また、別のメーカーでは油圧式で加工時のびびりを抑えるコンピューター数値制御(CNC)旋盤用ハイドロチャックを発売。シャンク部、チャック部に油圧式を採用した。刃物取り付け時の芯ズレが抑えられ、段取り替え時間が短縮できる。
このほか、段取り替え時の精度調整が容易なチャックを工作機械向けに提供するメーカーは、生産の増強を予定するなど、各社は製造現場の省人・省力化ニーズへの対策を進めている。