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中部の航空機産業
航空機産業では、旅客需要の高まりを受け成長軌道が見込まれている。民間航空機向けエンジンはスペアパーツや修理・整備(MRO)需要の拡大が継続。米ボーイング向け機体製造事業は月産レートの回復が前進する見通しだ。特に「ドリームライナー」の愛称で知られる「787」は機体の主要構造部品の35%が中部地域で製造されている。同地域では航空機産業を担う企業だけでなく、中小製造業や研究機関、さらには他業種までもが技術を持ち寄り、効率的で持続可能な航空機産業の構築に向け取り組んでいる。
787の生産、回復見込む
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中部地域が力を入れるボーイング787
中部地域は川崎重工業やSUBARU(スバル)など大手機体メーカーが主力工場を設けるだけでなく、周囲には中堅・中小企業が立地し、航空機産業のクラスター(企業群)が形成されている。国内の航空機・部品生産額の35%を担う一大集積地だ。中部地域の愛知県、岐阜県、三重県、静岡県に長野県を加えた5県では、国から国際戦略総合特区「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」の指定を受け、航空宇宙産業の育成を強化している。
特に主力となっているのが、国内での生産レートが高い米ボーイングの中型機「787」だ。主翼ボックスや中央翼など国内メーカーが機体の35%を生産している。同特区では、これらの機体の量産事業に使用する機械や設備を取得する際、法人税の軽減が受けられる。
787はコロナ禍で一時出荷が停止していたものの、近年は航空機需要の回復とともに生産レートを高めている。ボーイングは月産10機まで拡大するとしており、今後も成長が見込まれる。一方で懸念されているのが、人手不足の問題だ。近い将来、生産従業者が2-3割減少すると予測する声もあり、自動化や生産効率の向上といった取り組みは航空機生産の維持にとって欠かせないものとなっている。
新生産技術の開発目指す
こうした流れを受け、ボーイングと三菱重工業、川崎重工業、SUBARU、東海国立大学機構の5者は、航空機の革新的な新生産技術を開発する協議会「持続可能な航空機産業のためのコンソーシアム」(CSAP)を設立した。広く会員を募り、共同開発で加工や組み立て、検査などを自動化し、生産性と生産リードタイムを25%向上する方針。知的財産を共有し、共通課題解決に2030年以降の適用・実用を目指す。
CSAPは航空機生産の維持に向け、東海国立大学機構傘下の岐阜大学と名古屋大学の研究開発シーズを活用。生成AI(人工知能)による外観検査、ロボットによる加工など、熟練技能者に頼らない生産技術を開発する。
地域でSAF原料を回収
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設置の記念セレモニーで実演する鈴木康友大治町長
さらに、航空機産業では脱炭素の取り組みも加速している。特に注目されるのが、持続可能な航空燃料(SAF)の活用だ。
中部地域の玄関口である中部国際空港(セントレア)では25年6月に日本初となる国産SAFの貨物機への供給を実施した。周辺の自治体と協力し、家庭から回収した廃食用油を原料の一部としたSAFだ。今後、地域で回収・運搬、生産、利用までのサプライチェーン(供給網)構築を図る。
セントレアは愛知県東浦町と24年4月に協定を結んだのを皮切りに、同知多市や同大府市とも協定を結んでいる。さらに25年8月には愛知県西部を中心に50店舗を展開するアオキスーパー(名古屋市中村区)が日本航空(JAL)と連携し、店舗での廃食用油の回収を始めた。中部地域のスーパーマーケットでは初となる取り組みだ。専用の回収箱を店頭に設置。まずは愛知県大治町や同大府市、同一宮市などの一部店舗から開始。全店舗への設置を目指す。
