-
業種・地域から探す
部品大賞
ティーケーエンジニアリング/一体造形誘導加熱コイル(AMコイル)
-
CAEと3Dプリンターを用いて製作した「一体造形誘導加熱コイル(AMコイル)」
積層造形でコイル長寿命化
コンピューター利用解析(CAE)を用いた熱処理シミュレーションと金属3次元(3D)プリンターを用いて製作する「一体造形誘導加熱コイル(AMコイル)」は、従来手法のロウ付け接合で組み立てた誘導加熱コイルに比べて長寿命、性能向上を実現した。「熱処理シミュレーション(トポロジー最適化含む)+金属積層造形(AM)」による品質の安定化や設計の最適化を追求。安定的に高性能な誘導加熱コイルを製作できる。
機械加工した銅部品をロウ付けで接合し、組み立てる誘導加熱コイルの場合、破損部位の大半が接合部といわれる。ロウ付けの適否がコイル寿命を決めるとされており、長期の耐久性に乏しいことが課題だった。
AMコイルは金属積層造形のため継ぎ目がなく、ロウ付け接合の課題を解決。銅の造形に最適なパラメーター開発を行い、面粗さや造形の精巧さを損なわずに実用に適した耐久性、性能を備えた。
設計の自由度 向上
製作期間は前後工程を合わせても、9日間程度と従来手法に比べて大幅に短縮。銅部品を機械加工で製作する必要がないため、コイル設計の自由度も向上した。
CAEを用いたコイル設計により任意の形状が表現でき、製品形状、熱処理仕様といった条件を満たす最適化計算で得られるコイルは、従来にない形状の設計を容易にした。また、完成した誘導加熱コイルで加工対象物(ワーク)を実際に焼き入れすると、熱処理仕様を満足させる焼き入れパターンを確認済み。
設計者が行うコイル設計をコンピューターに置き換え、熟練技能者によるロウ付け作業を金属3Dプリンターが担うことで、自動車関連をはじめとするユーザーからの品質向上、コスト低減の要請とともにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成への貢献が期待できる。
喜びの声/ティーケーエンジニアリング 社長 下村 豊氏
製造現場の課題解決
このたびは「“超”モノづくり部品大賞」を賜り、誠に光栄に存じます。
今回受賞した「一体造形誘導加熱コイル(AMコイル)」は、機械部品の焼き入れに使用する誘導加熱コイルの製造に金属3DプリンターやCAEという新しい手法を駆使し、製作期間の短縮、設計自由度の向上などを実現しました。安定的に、高性能な加熱コイルを製作でき、熟練技能者不足という製造現場の課題解決に貢献します。
当社は、自動車の駆動部品を手がける高雄工業が50年にわたり培った技術を受け継ぎ、新しい技術開発の発信を担うグループ会社として2021年に設立しました。工場の困り事を解決したいという設立の原点を忘れず、今回の受賞を新しいモノづくりのスタートとして、さらに努力してまいります。
モノづくり日本会議 共同議長賞
ニッセー/緩み防止ネジPLB v2
「ワンアクション」で締結・解除
「緩み防止ねじPLB v2」は確実に締結して緩まないといった本来の目的に加え、作業性に優れる点が特徴だ。一本のボルトに対して内外二つのナットを使う「ダブルナット」方式を採用しているが、外側のナットを回すだけで締結・解除ができる。
緩まないネジは1本のボルトに大小二つのリードのネジ山を加工する。内側の大きなリードのナットが外側の小さなリードのナットに機械的に干渉し、高い緩み止め性能を発揮する。1回転で進む距離の違う多条ネジと一条ネジをそれぞれ、内側・外側に配置したことで「ワンアクション」での締結・解除を可能にした。
緩み止め性能は高い。ルクセンブルクの試験機関が国際規格「ISO16130」に準拠した振動試験を行ったところ、数社の製品の中で唯一、ニッセーのPLB v2に最高評価を与えた。こうした緩み止め性能の高さと、通常の工具を使用できるメンテナンスの容易さ、作業性の高さを訴求して普及を図っていく。
喜びの声/ニッセー 会長 新仏 利仲氏
キラキラした瞬間
このたびは「モノづくり日本会議 共同議長賞」を賜り、誠に光栄に存じます。
当社のスローガンは「日々、ワクワク・ドキドキ・キラキラと!」です。賞をいただいた「緩み防止ねじ PLB v2」は開発に着手して18年がたちます。18年間、ワクワク・ドキドキした結果、キラキラとした瞬間を迎えることができました。
技術面では一つの目標が達成できましたので、次は利益性を高めた製品事業として国内外に打って出たいと思います。
先般、海外の展示会に出展した際は「ジャパンブランド」である点を訴求し、好評を博しました。これからもジャパンブランドをさらに高めていけるよう、技術を追求して世界に発信していきたいと思います。
ものづくり生命文明機構 理事長賞
太平洋工業/CAPSULE SENSE
AI活用―牛の体調 遠隔監視
牛の体調を遠隔で監視するシステム。牛に飲ませたカプセル状のセンサーが胃中に留まり、体温や行動パターンのデータを無線で親機に送る。発情や分娩、疾病などの兆候を察知でき、酪農家の監視作業が容易になる。センサーはメンテナンスフリーで運用もしやすい。
牛は一般に、分娩時の事故や疾病で飼育数の数%が出荷できなくなる。カプセルセンスは温度と加速度のセンサーを内蔵し、その数値の変化を分析する。発情なら数時間以内、分娩なら約1日前にスマートフォンやタブレットに通知する。
発熱、水を飲む量や回数から体調の変化もわかる。AIを搭載し継続使用で検知能力が向上する。水やり・餌やりの適正化にも応用可能。牛の体外に付ける他のセンサーより高精度で、破損もしにくい。
国内では太平洋工業が唯一製品化している自動車のタイヤ空気圧監視システム「TPMS」の測定と通信の技術を応用した。
喜びの声/太平洋工業 社長 小川 哲史氏
このたびは「ものづくり生命文明機構理事長賞」という栄えある賞を賜り、心より感謝申し上げます。
カプセルセンスは、自動車用のタイヤ空気圧監視システム「TPMS」で培ったセンシングと無線通信の技術を生かし、ハードとソフトを社内で一貫開発しました。牛の体調変化をAIで解析し、発情や分娩の予兆、疾病などの兆候を検出します。
畜産業界のニーズや課題を解決し、作業の効率化とゆとりをもてる持続可能な畜産に貢献したいとの思いから、新分野への挑戦を進めています。今後も社会や顧客の課題を解決する製品を開発し、社会に必要とされる企業を目指してまいります。
