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中小企業と伴走する支援機関
中小企業基盤整備機構は、5月に「IT経営サポートセンター」を開設するなど企業のIT化支援を加速している。コロナ禍に続き、物価高などで経営環境が大きく変化する中、ITは必要不可欠な経営資源だが、傾向として中小企業のIT化は大手に比べて遅れているのが現状だ。IT化支援を担当する関東本部企業支援部参事の大東弥生氏に支援のポイントや今後の展開などについて聞いた。
知る・学ぶ・実行 3段階サポート 「IT経営サポートセンター」稼働
中小機構 関東本部 企業支援部参事 大東 弥生 氏
―中小企業がIT化に取り組む背景は。
「多くの企業はIT化に取り組む必要性は認識している。だが、IT化することで、何が実現できるのか、どのような業務をIT化すべきか、それにはどのようなツールが適しているかなど情報が不足している。そのため自社課題の解決に合ったアプリケーションなど各種情報を得られる『ITプラットフォーム』を設けている。IT化をどのように進めてよいか分からない企業に是非活用してもらいたい」
―中小機構のIT化支援の特徴は。
「『知る』『学ぶ』『実行する』の3段階で総合的に企業のIT化をサポートする。場所を選ばずに隙間時間を利用して学べるように動画も充実させ、分野別、注目度の高いテーマについて専門家が解説したり、企業の先進事例を紹介したりしている。さらに学びたいという企業には、経営者や管理者を育成するため中小機構が全国展開する中小企業大学校の各種講座も活用いただきたい。実行する段階では、専門家の支援を受けて基幹システムの導入を進める個別企業向けの伴走支援なども設けている」
―IT経営サポートセンターが稼働しました。
「従来も経営相談の一環としてIT化支援に対応していたが、ITに特化した経営課題を解決するのがIT経営サポートセンターで、無料で何回でもオンラインで相談できるのが特徴だ。中小企業診断士やITコーディネータなどITの専門家が対応する。また企業支援の裾野を広げるため、商工会議所や金融機関など支援機関も利用できるようにした。支援機関が中小企業を伴って相談することも可能だ。スタートしてから、全国から約130件を超える相談があった。2024年度はさらに大きく伸ばしていきたい」
―中小機構が10月に発表した中小企業のデジタル変革(DX)推進に関する調査では、専門人材の不足とともに、取り組む予定のない企業の課題として、「何から始めてよいかわからない」も指摘されています。
「企業には自社のIT活用について相談したい課題がはっきりしている『ハッキリ』型と、具体的にどのようすればよいのかが分からない『モヤモヤ』型がある。そのどちらのタイプにもIT経営サポートセンターは対応できる。今後、『モヤモヤ』型の企業がITサポートセンターへの相談を経て具体的なIT化の取り組み開始する際に専門家を派遣してサポートする仕組みの設置も検討する。これからも支援を厚くし、相談と助言、伴走で中小企業を支えていく」
産業支援施設 東葛テクノプラザ 入居企業の取り組み
千葉県の産業支援施設である東葛テクノプラザ(千葉県柏市)は、貸し研究室や試験研究機器の提供、産学官連携の推進と三つの機能で、同県の産業振興を支えている。今回は東葛テクノプラザに立地しているオーテックス(喜野誠社長)、ドクターズチョイス(山本明男社長)の取り組みを紹介する。
オーテックス/UV硬化型熱剥離タイプ仮止め接着剤
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波長532ナノメートルの光を照射すると硬化する可視光硬化型エポキシ樹脂
オーテックスは、レーザー機器など光学関連の商社だが、社内ベンチャーである光硬化性樹脂の開発部門を東葛テクノプラザに置く。可視光硬化型と紫外線(UV)硬化型の2種類があり、力を入れているがUV硬化型だ。
特に注目されるのが光で固めて熱で剥がせるUV硬化型熱剥離タイプ仮止め接着剤。UV硬化で基材を接着した後、150―200度Cで5―10分程度の熱履歴を加えると、接着強度が低下し、常温で剥離可能となる新しいタイプの仮止め剤だ。半導体関連やレンズなど光学部品の研磨・切断用に需要が期待できる。
高硬度の微細構造物を転写できるナノインプリント用UV硬化樹脂や、それに必要なレプリカ金型用樹脂も開発・販売している。日和佐伸ケミカルプロダクトプロダクトマネージャーは今後の展開について「他社が手がけていない技術を開発し、新しいものを生み出し、海外にも展開していきたい」と強調する。
ドクターズチョイス/安定型中性ビタミンC「MIRAVC」
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安定型中性ビタミンCを原料にした化粧品
ドクターズチョイスは、化粧品用原料に安定型中性ビタミンC「MIRAVC(ミラブイシイ)」を開発している。ビタミンCは抗酸化・抗炎症・ブライトニング作用やコラーゲン合成促進、ニキビ対策、創傷治癒促進に効果があるといわれる。だが、酸性による強い刺激があり、高濃度配合に適さず、また、安定性が低く、変色・変質しやすい。これに対し、水素イオン指数(pH)を中性領域にして刺激を緩和するとともに、独自技術で安定性を向上させてビタミンC発見以来の長年の課題を解決したのがミラブイシイの特徴だ。
化粧品を製造・販売する関連会社がミラブイシイを原料にした美容液とフェースマスクを取り扱っている。現在、ローションやクリームなどを開発中で、ラインアップを拡充する。これらの化粧品のOEM(相手先ブランド)生産にも対応している。コロナ禍の中で海外展開が一時中断したが、アジア圏内などから引き合いがあり、今後、海外展開を積極的に進める方針だ。