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CEATEC2023 会場レポート速報
特集担当班が開催中のCEATECを訪問し、企業ブースを取材した。注目の展示をピックアップし、現地からレポートする。
最新デバイスを披露
ザクティ(大阪市北区)が発表した「Xacti Live(ザクティ・ライブ)」は、ウェアラブルの映像デバイスとライブ配信システム。同社従来製品からおよそ3分の1の30グラムと小型化。機器メンテナンスや倉庫ピッキングなど幅広い用途を見込む。出展製品の中から優れた製品・技術を表彰する「CEATEC AWARD」のデジタル大臣賞を受賞した。同社は旧三洋電機のデジタルカメラ事業を源流とするカメラメーカー。
ソニーは視覚障がい者に向けて外出時歩行支援プロジェクトを進める。白杖に取り付ける小型のデバイスとワイヤレスイヤホンを組み合わせ、振動や音で歩行を支援する。超音波センサーで前方にあるモノの存在を検知し、モノとの距離に応じた音色などで知らせる。また下向きの赤外線レーザーで地面が先に続いているかを検知する。地面に落差がある場合はデバイス自身が振動して知らせる。さらに目的地に着くと音で知らせてくれるナビゲーション機能も持つ。同技術は研究開発中で、会場ではモックを使った参考展示を行う。
環境に配慮した技術さまざま
デルタ電子は台湾台北市に本社を構えるグローバル企業の台達電子工業の日本法人。「インテリジェントでサステナブルなつながる世界を実現」をメーンテーマに、データセンターの省エネルギー化などデルタグループが強みとする技術を提案している。デルタグループは2021年に「再エネ100%」を目指すRE100に加盟し、22年の再エネ使用率は63%を実現した。このノウハウや知見をブースで紹介している。
今回、新たなブランド戦略を日本に向けて初めて発信した。台達電子工業の郭珊珊ブランド董事は「人や社会との持続可能なつながりを大切にした。カンパニーカラーに加えて、持続的な淡い色、つながりを意識した緑で表現している」と強く語る。
初出展のABBは、再生可能エネルギーや蓄電システム普及とともにトレンドとなる直流の大容量化に合わせ開発された、安全な開閉システムを提案。低損失のパワー半導体を活用した新遮断器を国内で初披露している。従来の機械式遮断器と比べ100倍以上と超高速に遮断が可能。停電によるダウンタイムを最小化し、直流配電システム保護と制御を実現。船舶やビル、工場などでの活用を見込む。
日本航空電子工業は「未来へつなぐ 技術でつなぐ」をテーマに、安心・安全なモビリティー社会など社会価値の創出を目指す重点領域から新製品や新技術を紹介している。
世界的に電気自動車(EV)の普及が加速する中、急速充電器や車載では、大電流化が求められている。シンプルな端子構造と樹脂ハウジングで小型軽量を実現し、大電流対応のEV向け2極のコネクターを紹介している。定格電流はモーター駆動向けの「MW03」が340アンペア、急速充電向け「MW05」が440アンペアとなっている。
急速充電プラグ「KW07C」は定格電流200アンペア(ブーストモード350アンペア)に対応する。全樹脂設計により、クラス最小・最軽量を実現した堅牢(けんろう)性にも優れ、年内出荷を目指す。
パナソニックグループは遺伝子組み換え技術により、外膜を剥離させたシアノバクテリアを生成する技術を確立した。シアノバクテリアは植物と同じように光合成する微生物で、空気や水、光、ミネラルをもとに光合成して代謝物を放出する。同社が生成したシアノバクテリアは外膜が破れた部分から代謝物を多く放出し、効率的に代謝物を回収できる。
この代謝物を原料にして作った液体資材を農作物の葉に吹き付けるだけで、植物の成長が加速する。同社が行った農地実証では、ほうれん草の収穫量が約40%増えた。気候変動の抑制と食料生産力の向上を目指す。パナソニックホールディングス技術部門の奧村泰章課長は「来年度に液体資材の商品化を目指す」と話す。
半導体関連の展示に注目
CEATECではエレクトロニクス商社が、自社技術の強みや今後の商材を提案している。
ネクスティエレクトロニクスは17年に、トーメンエレクトロニクスと豊通エレクトロニクスが合併して設立された。展示会では小型の水素燃料電池(FC)の活用事例として、FCを搭載した電動無線操縦装置型草刈り機の実機を交えて紹介している。リチウムイオン電池(LiB)と比べて、駆動時間は約2倍。
レスターエレクトロニクスは19年に、UKCホールディングス(HD)とバイテックHDが経営統合して誕生した。21年にはPALTEKを子会社化した。「エミッション社会をEVバスで実現する」をキャッチフレーズに、バスのカテゴリーの一つであるグリーンスローモビリティーを提案している。アミューズメントパークなど私有地の活用を想定する。EV運行事業と再エネ事業を統合したエネルギーマネジメントシステム構築を目指す。
会場の中でエンタメ色を放ち学生らを集めていたのが、半導体産業をゲームで体感できる「半導体産業人生ゲーム」のコーナー。本家のタカラトミー製「人生ゲーム」と、CEATECを主催する電子情報技術産業協会(JEITA)半導体部会がコラボレーション。2022年のCEATECで初披露したものからパワーアップし、同部会の半導体メーカー9社のいずれかの企業に就職した設定で、ゲームを楽しめる。
インフラ保守の技術を紹介
日立製作所は2021年に地中可視化サービスを始めた。応用地質が保有する地中レーダー探査装置で地下を探査し、レーダー画像を取得する。この画像を日立製作所独自のAI解析・判別技術で処理し、既存の埋設物情報を3次元で可視化する。
これにより図面と現場の相違を防ぎ、掘削時の埋設管損傷事故やムダな試掘を防ぐ。また着工前に施工業者が下水、ガス、電気などの他業者から図面を取り寄せて行う、埋設物調査にかかる時間と手間を省ける。埋設物情報は共通のプラットフォーム上で閲覧でき、CADファイルとしても出力可能だ。公共システム事業部の田川大介氏によると「同サービスは自治体など30―40件で導入されている」という。