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ダイヤモンド・cBN工具(2024年2月)
ダイヤモンドは硬度、強度、耐摩耗性から、産業界において重要な役割を担っている。切削工具には多結晶ダイヤモンド(PCD)が多用される。また立方晶窒化ホウ素(cBN)はダイヤモンドに次ぐ硬度があり、高温や対鉄素材での安定性の面ではダイヤモンドよりも優れている。両者ともに切削、研削、研磨加工などで活躍する。より強く硬い工業材料が用いられるようになってきている中で、ダイヤモンド・cBN工具が高精度な加工を実現している。
ダイヤ 難削・硬脆材/cBN 鉄系金属/PCD 非鉄・複合材
ダイヤモンド工具は自動車、産業機械、建設など多岐にわたる産業分野の「切る」「削る」「磨く」などの工程で利用される。アルミニウム合金、超硬合金、プラスチック、木材、石材・コンクリート、セラミックス、ガラスなどの加工で活躍する。研削砥石(といし)、カッティングソー、切削工具などとして使用される。
高硬度かつ高強度で、熱伝導率や耐摩耗性に優れるダイヤモンドの特性は、切削工具として優れている。ダイヤモンド工具は難削材や硬脆(こうぜい)材の精密加工を得意とし、加工時間の短縮にも貢献する。さらに刃先寿命が長く、長期にわたって加工を行える。
しかし加工中に発生する高熱によって、ダイヤモンドの炭素原子が鉄に吸収されてしまうという弱点があるため、鉄系金属の加工には向かない。そこで鉄系素材の加工には、工具材料としてはダイヤモンドに次ぐ硬さを誇るcBNが用いられる。1200度Cでも安定を保ち、鉄との反応を起こさない。
合成ダイヤモンドの微結晶と金属やセラミックスなどの結合材を高温・高圧で焼結させたPCDは主に切削工具の先端で使われている。非鉄金属や複合材の高精度切削に威力を発揮する。
国内生産1000億円 25年
ダイヤモンド・cBN工具の2023年の国内生産額は約900億円にとどまる見込み。ダイヤモンド・cBN工具は半導体向けが占める割合が高く、23年は半導体産業の動きが鈍かったことなどが、22年よりも生産額が落ちた要因の一つと考えられる。
自動車や半導体関連の設備投資が増えることを期待し、ダイヤモンド工業協会はダイヤモンド・cBN工具の24年の国内生産額の目標を945億円に設定した。25年はさらなる伸長を期待し、1000億円を目指す。
高速加工・耐熱性を両立
近年、物価や材料費高騰の影響により、ダイヤモンド・cBN工具はコストダウンが求められている。
日本ダイヤモンドはコストダウンに応えるため、高い形状保持性を持つ樹脂や金属を使うことで、高速加工を実現し、加工効率を上げている。高速加工には優れた耐熱性も求められ、同社はこれにも応えている。また土木・建設分野に向けては、アスファルトやコンクリートを切断する機械に使う工具を製造している。
短工期にも対応するためには、鋭い切れ味が求められる。ダイヤモンド砥粒(とりゅう)を一定の距離で配列することで実現している。
さまざまな産業界で技術承継や人材育成が求められており、ダイヤモンド・cBN工具業界も例外ではない。
ダイヤモンド工業協会は若手社員に向けて、ダイヤモンドに関する基礎知識を学べる講習を、数回に分けて行うことを計画している。