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触媒産業
2023年を振り返ると、わが国の鉱工業生産指数は前年から1・3%低下し、103・9(20年=100)となり、2年連続でマイナスを記録した。コロナ禍前の19年(111・6)と比べると6・9%も低い。また、日本化学工業協会が公表している主要化学製品の出荷指数(数量ベース)は、対前年で8・9%低下。コロナ禍の影響を大きく受けた20年と比べても8・3%も低い数字であった。さらには、石油化学工業の基礎原料であるエチレンの年間生産量も前年比1・7%減の531万トンと2年連続で前年実績を下回り、98年以来の低水準まで落ち込んだ。このように、23年の国内化学産業は、国内外での景気回復遅れに伴う生産の伸び悩みなどの影響を受け、全体的に活気がない状態が続いた。
自動車用、挽回生産に期待 4年連続10万トン届かず
【執筆】触媒工業協会 事務局長 伊藤 宏行
このような状況下における触媒工業は、図に示す通り、生産量、出荷量ともに22年実績を大きく下回り、4年連続で10万トンの大台には届かなかった。また年々増加を続けてきた出荷金額も前年比28%減と大幅に減少した。ただし、出荷金額には貴金属やレアメタルなど、触媒に用いられている原材料費の相場が影響していることにも注意が必要である。
次に今年上半期の状況に目を移す。図は季節調整をしていない数値なので通年の予想が読みにくい面はあるものの、石油精製用は回復基調にあることが見てとれる。一方で、石油化学品製造用や高分子重合用は低調が続いているのが気掛かりである。また、自動車排ガス浄化用は、一部自動車メーカーによる認証不正問題で車の生産台数が減少した影響がみられているが、今後の挽回生産に期待したい。
他方、今後に目を向けると、日本のグリーントランスフォーメーション(GX)の切り札とも言われる「水素社会推進法」と「CCS事業法」が成立したこともあって、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)や循環型社会の構築に向けた動きが一層活発化している。触媒はこれらの達成にも必要不可欠な要素技術であり、幅広く貢献できると期待されている。
我々触媒業界としては、この潮流を確実に捉えて新しい高性能触媒の開発・提供をすることに加え、従来から私たちの生活を支えてきた食品加工、医薬、農薬、機能性化学品製造などの分野で使われる触媒を確実に供給していくこともまた重要な使命であると考えている。
脱炭素・安全な生活に貢献/触媒工業協会 会長 遠藤 晋
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触媒工業協会 会長 遠藤 晋
当協会が発足してから来年で60年を迎えようとしています。現在に至る触媒業界の発展は会員各社だけで成し遂げられたわけではなく、政府、産業界、各種研究機関などからの力強いご支援によるものであり、60年を迎え改めて感謝申し上げます。
地球規模での社会課題が山積する中で触媒が果たすべき役割が従来以上に高まってきております。とりわけカーボンニュートラルの流れの中で、水素などの新エネルギーの実装、二酸化炭素の再資源化といったさまざまな領域で新たな触媒開発が求められております。業界としても、これら新たな触媒の役割を認識し、社会課題解決に貢献できるよう使命感をもって取り組んでまいります。
しかしながら、触媒に期待される役割は広く、カーボンニュートラルばかりが重要なわけではありません。会員各社が提供する触媒は、石油精製や各種化学製品製造、自動車や火力発電所の排ガス浄化、さらには医薬品、農薬、食品、電子材料の製造、マーガリンなどの油脂加工といったさまざまな産業を支え、人々の豊かで安心・安全な生活の実現に貢献しております。
これら触媒が果たしてきた役割の重要性はいささかも低下していません。その上で、新たな社会課題に対しても触媒が果たすべき役割が期待されております。
当協会としては、触媒に期待される役割がより拡大していることを強く認識し、持続可能な社会の実現に貢献してまいりますので、引き続きご指導・ご協力をお願い申し上げます。