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自動車産業を支える素材・技術
現在、自動車産業は「100年に一度」の変革期にあるとされ、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など環境対応車への注目が高まっている。それに伴い、搭載電池の電費向上などに向け、車両の軽量化が重要度を増している。軽量化素材の活用が進むほか、ギガキャストといった新たな部品製造法や、めっき加工などさまざまな技術が自動車産業を支えている。
CNF/軽量化素材ー活用進む
環境対応車における車載電池の大容量化や電費向上が図られ、車両の軽量化が求められている。従来、車両に多く使われていた鉄系素材に代わり、アルミニウムやマグネシウム、樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など軽量化素材の活用が進む。
セルロースナノファイバー(CNF)は木材などをこまかくほぐして取り出したナノサイズの繊維。軽量かつ高強度で、植物由来であることからカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現の観点からも活用が期待されている。
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静岡県産木材によるCNFを使ったEV「しずおかもくまる」の展示は来場者の関心を集めた(nano tech 2025)
1月29日から31日まで、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「nano tech 2025 第24回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」では、ナノセルロースジャパンが静岡県産木材によるCNFを使ったEV「しずおかもくまる」や水上バイクの実機展示を行い、来場者の関心を集めた。
ナノセルロースジャパンは6月10日から16日まで、2025年大阪・関西万博でも「ナノセルロースがもたらす持続可能な未来生活」をテーマに、「うわっ、うわっ、うわっ、ナノセルロース」と題した展示を行う。
ギガキャスト/大型アルミ部品 鋳造
「ギガキャスト」も車両の軽量化を支える新たな自動車部品製造法として普及が進む。従来は複数の部品を溶接やボルトで組み立て製造していたボディーなどの大型部品を、大型の鋳造設備を使い、一度に成形する。
成形対象となる材料はアルミニウム合金。車両の軽量化のほか、部品点数削減による製造工数やコストの削減、車両の剛性が高まることによる操縦安定性の向上なども見込める。
めっき/耐食性・耐摩耗性を向上
自動車産業を支える技術の一つとして、めっき技術がある。車体・部品の見た目を美しくするほか、耐食性や耐摩耗性を高める効果がある。めっき材の一例として、三価クロムは六価クロムに比べて環境負荷が低いとされ、近年注目されている。
めっきの際に生じる水素が金属材料中に取り込まれると水素脆性(ぜいせい)が引き起こされる場合がある。車両軽量化の観点から需要が高まっている高強度アルミニウム合金(ジュラルミン)は、もっとも強度が高い7000系合金を除いて耐水素脆性に優れており、燃料電池車(FCV)の普及などにおいて重要な役割を担う。
電気印刷/曲面にも電気回路製作
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岩通ケミカルクロスは電気回路製作の新技術「電気印刷」の普及に力を入れる(第15回高機能素材Week)
岩通ケミカルクロスはめっきを施す前の電気回路製作の新技術として「電気印刷」を提案している。フィルムに回路パターンを印刷し、電気回路をつくる電気印刷は、独自開発のトナーで回路を現像、フィルムを変形させた後に銅めっき処理を行う。そのため銅回路を断線させることなく、曲面にも電気回路を作れる。
10マイクロメートルほどの細線も印刷可能で、エッジがシャープで加工品質も高い。通常、銅はエッチング法を使用して印刷版を作成するが、めっき法は無駄な資源を使用せず廃棄物を減らせるため、環境負荷低減にも寄与する。
同社は展示会で製造プロセスのデモンストレーションを行い、電気印刷の普及に注力している。フレキシブルプリント基板(FPC)への印刷をメインターゲットとし、ヒーターやセンサー周り、アンテナなどの自動車部品への採用を目指す。