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バリ取り・エッジ仕上げ(2024年8月)
製造現場で避けて通れない課題である「バリ」。バリが引き起こすトラブルを防ぐには、バリ取りの重要性を理解し、バリの抑制方法やバリ取りの自動化について知ることが品質向上のカギとなる。ここでは、バリの基礎知識やバリの抑制方法、最新のバリ取り自動化技術を紹介する。
バリの抑制とバリ取り自動化技術
【執筆】ジーベックテクノロジー グローバルセールス&マーケティング部 板橋 洋輔
バリとは
バリとは、金属や樹脂の加工時に発生する意図しない突起を指す。日本産業規格(JIS)では、バリを「かどのエッジにおける、幾何学的な形状の外側の残留物で、機械加工または成形工程における部品上の残留物」と定義している(写真)。
また、金属鋳造や樹脂成型で型の隙間から素材がにじみ出ることで発生するバリも存在する。これらのバリは、見た目だけでなく機能にも影響を及ぼすため、適切に管理することが重要である。
バリが引き起こすトラブル
バリは品質面でさまざまなトラブルを引き起こす。その具体例を次に示す。
①組み付け時のトラブル
バリが部品の正しい組み付けを妨げる。これにより、部品同士が正確に接合できず、最終製品の機能や耐久性に悪影響を及ぼす。例えば、自動車のエンジン部品や電子機器の精密部品などでは、バリが原因で誤作動や破損が生じることもある。
②性能に関するトラブル
鋭利なバリは摺動(しゅうどう)部などで性能に影響を与える。摺動部にバリが残っていると、摩耗や破損が早まり、製品の寿命を縮める原因となる。また、バリがあることで摩擦が増加し、エネルギー効率が低下することもある。
③使用時にバリが脱落するトラブル
薄く強度のないバリが意図せず取れ、部品を傷つけたり流路をふさぐことがある。これにより、機械の故障や性能低下を引き起こす可能性がある。例えば、バリが油圧システムや燃料系統の流路をふさぐと、重大な機能障害を引き起こす。
④取り扱う人を傷つけるトラブル
特に金属素材のバリは鋭利で、人の肌を傷つける。工場内での労働災害や、製品使用者がけがをするリスクが高まる。家庭用電化製品や自転車などの消費者製品では、バリが原因でユーザーがけがをすることもある。
バリ取りの重要性
生産現場ではバリ取りの具体的方法が指定されず、作業者の経験に依存することが多い。そのため、曖昧な指示がトラブルや効率低下を引き起こす。近年では、細かいルールや規格を設ける企業が増えている。
バリ取りは品質向上、安全性確保、生産効率向上において重要である。特に、航空宇宙産業のような高精度が要求される分野では、バリ取りが一層重要視されている。
バリの抑制方法
バリの抑制は、素材・形状・加工の三つの側面からアプローチできる。
①素材によるバリ抑制
切削、研削、プレス加工などでは、素材の塑性変形によりバリが発生する。塑性変形しにくい素材を選ぶことで、バリの抑制は可能である。
ただし、塑性変形しにくい素材は加工が難しくなりやすい。
また、求められる機械的性質を満たしつつバリが発生しにくい素材を選ぶのは難しい場合も多い。素材によるバリ抑制が実現できるのは限定的な条件下のみであることに留意する必要がある。
②形状によるバリ抑制
小さな形状変更でもバリ抑制につながる。バリは鋭角のエッジ上で大きくなりやすい。したがって、素材の加工面を鈍角化させることでバリ抑制効果を期待できる。例えば、隅Rや面取り、加工部の平面化などが有効である。
また、形状によってバリを抑制する場合、前加工の精度や品質要求を見直すことも重要である。前加工で発生したバリが大き過ぎると、工具によってはバリが取れないこともある。
さらに、ピン角確保などの品質要求が厳し過ぎると、工具でバリを取ったとしても微細な二次バリでNGとなるケースも多い。設計の段階からバリについて考えておく必要がある。
③加工によるバリ抑制
工具を変更したり、加工の軌跡を変更したりすることでバリを小さくすることができる。特にエンドミルなどの回転工具では、ツールの回転方向と刃物の移動方向の組み合わせによる抑制が効果的である。
急激な加工を控えることもバリ抑制に効果がある。具体的には、1回の加工における削りしろを小さくしたり、送り速度を下げたりする方法である。組織の塑性流動の量を小さくすることでバリを小さくできる。
また、バリを小さくするだけでなく、取りやすくするアプローチも有効である。例えば、加工の順番や刃物の送り方向を調整し、バリの出る向きを変える方法がある。
◇ ◇
これらの方法を駆使してもバリの発生を完全には防げないが、設計や加工の段階でバリを考慮することで、発生するバリを小さくし、影響を最小限に抑えることが可能である。バリに関する知識を設計や生産技術部門とも共有することが重要である。
バリ取りの自動化方法
◆バリ取り自動化とは
バリ取り自動化は、工作機や専用機を用いてバリ取り作業を自動化することである。従来は手作業で行われていたが、自動化により効率が向上する。特に大量生産の現場では、自動化が生産性を大幅に向上させる。
◆バリ取りを自動化するメリット
バリ取りを自動化することで次のメリットがある。
・加工時間の短縮=人の手を介さずに効率的に作業が行える。これにより、全体の生産サイクルが短縮される。
・製品の品質安定=品質のバラつきを抑え、安定した製品品質が確保される。これにより、製品の信頼性が向上する。
・人件費削減=従来バリ取り作業に従事していた人員を他の作業に回すことができ、人件費の削減につながる。また、人手不足の解消にも寄与する。
◆バリ取り自動化の手法
バリ取りの自動化には次の手法がある。
・工作機を使った自動化=マシニングセンターや複合旋盤などの工作機にカッターやブラシを取り付けてバリ取りを行う。図1のような種類のツールが存在する。
・専用機を使った自動化=バレル研磨法、磁気研磨法、ブラスト法などさまざまな研磨法がある(図2)。
・ロボットアームを使った自動化=ロボットアームに研磨工具や回転ブラシを取り付けてバリ取りを行う。ロボットアームの小型化により、小規模な設備でも実施可能である。
おわりに
バリ取りの重要性を理解し、適切な抑制方法と自動化技術を導入することで、製品の品質向上と生産効率の向上が期待できる。製造プロセスの一環として軽視されがちなバリ取りを見直し、効果的な対策を講じることが、品質向上のカギとなるだろう。
表面改質展など7展示会 9月18日開幕/東京ビッグサイト
9月18日から3日間、「洗浄総合展」「Japan Robot Week」「VACUUM真空展」「SAMPE Japan 先端材料技術展」「高精度・難加工技術展」「表面改質展」「スマートファクトリーJapan」の7展が東京ビッグサイト(東京・有明)で開かれる。開場は10-17時。入場登録者、招待状持参者、中学生以下は無料。公式ウェブサイトで入場登録できる。
「表面改質展」は表面処理技術の総合展。熱処理や表面改質、メッキ、ショットピーニングなど耐摩耗性の向上、長寿命化・高機能を実現する各種技術が展示される。9月19日には「表面技術の最新動向」をテーマにしたセミナーが行われる。関東学院大学材料・表面工学研究所の高井治顧問らが最新の表面技術を紹介する。
「洗浄総合展」は生産工程の基盤技術である「洗浄」をテーマにした展示会。金属加工や自動車、電子・精密部品などさまざまな業種に合わせ、機器・システム・洗浄剤などの洗浄に関する製品・技術を展示する。
「Japan Robot Week」はロボットの専門展。さまざまな業種を対象とした産業用ロボットや応用システム、要素技術、サービスロボットが見られるほか、ロボットシステムインテグレーター(SIer)による展示も行われる。
このほかにも製造業に役立つ製品・技術がめじろ押しだ。高精度・難加工技術展は高精度加工や難削材加工、難形状加工など高度な加工技術を紹介する。真空展では半導体をはじめとした多くの産業分野の基盤技術である、真空技術と関連製品を展示する。
SAMPE Japan 先端材料技術展では高性能化、高付加価値化、軽量化、高強度化を実現する先端材料・技術が集まる。スマートファクトリーJapanでは、スマートファクトリーに関する情報管理・処理システム、製造設備・装置などが見られる。