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ビルの高付加価値化
オフィスビルには単に場所の提供だけでなく、環境性能、運用効率、入居者の満足などさまざまな要素が求められる。現代の働き手が求めているビルを構築するには、高付加価値化が欠かせない。
テナント入居意欲直結/脱炭素化で企業イメージアップ
質の高いビルは、そこで働く人の快適性や生産性を向上する。企業にとって、快適で利便性の高い環境は離職防止にも役立つ。人手不足で企業間での採用競争が激化する今、オフィス環境は無視できない。
ツナグ働き方研究所が2024年12月から25年1月にかけて実施した調査では、企業選びで「オフィス環境を重視する」と答えた求職者は69%となった。またオフィス環境が魅力的だと感じた場合、志望度が「かなり上がる」と答えた人は28%、「少し上がる」と回答した人は55%で、合わせて8割を超えた。
ビルオーナーにとっても付加価値の高いビルを構築するメリットは多い。環境性能や快適性の高いビルはテナントの入居意欲が向上し、稼働率の向上につながる。競争力が増し、周辺の相場より賃料を高く設定できる。特に環境対応を意識する企業にとっては環境配慮型ビルに入居していることがアピール材料となるため、こうした企業に選ばれやすい。また快適で便利なオフィスは退去の理由が減るため、テナントの長期契約も期待できる。
さらに省エネルギー性能の高いビルを構築することで、光熱費を削減できる。最新の省エネ設備、ビルエネルギー管理システム(BEMS)の導入、空調の最適化などにより、エネルギーコストを下げられる。
ZEB・スマート化—オフィス環境向上
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スマートビルでは端末上で消費エネルギーや設備の稼働状況などを確認できる
ビルの付加価値を高める方法の一つに、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化が挙げられる。ZEBは高効率な機器や制御技術などを導入して大幅な省エネを図り、太陽光発電やバイオマス発電などでエネルギーを創出する。これにより、年間の1次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す。
ZEBはエネルギー消費と二酸化炭素(CO2)排出を抑制し、脱炭素化につながる。環境問題に取り組む企業やブランドイメージを重視する企業からの需要が高い。
「ZEB」や「Nearly ZEB」など国の認証を取得できるため、賃料や売却価格を高くできる傾向にある。またビルに蓄電池や発電設備を備えるため、停電時でも業務を継続できる。事業継続計画(BCP)機能の高さも付加価値となり、不動産価値を高められる。
スマートビル化もビルの付加価値を向上させる。スマートビルではビルのオフィスや会議室、トイレなどにセンサーを取り付け、温度や湿度、人の動き、CO2濃度、照度などのデータを収集する。収集したデータは管理システムに集約され、空調・照明などの最適化に活用できるほか、アプリによる会議室予約、空調設備の操作などができ、働く人の利便性を高める。
最近ではAI(人工知能)の活用が進む。人流に合わせて空調や照明を自動で最適化するほか、顔認証によりエレベーターと自動連携するなど技術が進化している。エネルギー効率の向上によるコスト削減や入居者の利便性・快適性を向上させるなど、さまざまなメリットが期待できる。
