-
業種・地域から探す
航空機産業を支える実力企業
日本の航空機生産額は2年連続で過去最高を更新し、2025年に初めて2兆円を突破した。防衛強化や航空機メーカーの生産増強の流れを受け、航空機産業は今後も成長が見込まれる。デュアルユース(軍民両用)技術の開発やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の達成に向けた取り組みが進む。
25年生産額、最高2兆円超え
経済産業省の生産動態統計(確報値)に基づき、日本航空宇宙工業会(SJAC)がまとめた資料によると、25年の日本の航空機生産額は前年比22・5%増の2兆3348億円と初めて2兆円を超え、過去最高を記録した(グラフ)。
防衛強化
-
民間機需要の堅調や防衛強化によるさらなる生産増加が期待される
新型コロナウイルス感染症の流行により大きく落ち込んだ民間機の生産が、22年以降はV時回復。24年には民間機および全体の生産額がコロナ禍前の数字を上回り、歴代最高となった。25年はさらに伸長し、防衛機・民間機、全体の全てで過去最高を達成した。
防衛機については、23―27年度に防衛分野に総額約43兆円を投じる計画に基づいた23年度からの防衛予算の増加が、生産を後押しした。航空機は生産期間が長く、受注から引き渡し・売り上げ計上までに時間を要する。このため、23年度以降に拡大した防衛予算の効果が、25年に入り徐々に出てきた。
民間機については、コロナ禍後に回転体の補用品などを中心にエンジン関連の生産が回復してきていたが、直近は機体の生産額が復調してきた。米ボーイングの主力機である787型機は機体製造の35%を日本企業が担う。同社は787型機の生産レートを、月産10機に引き上げることを目指している。24年度は月産5機ベースだったが、25年度は月産7、8機ベースまで伸びた。
今後はボーイングのさらなる復調やエンジン需要の堅調に期待がかかる。また防衛分野では戦略3文書の改定が1年前倒しで今年中に予定されている。防衛力整備計画がどのように設定され、防衛費の増大や装備品の調達につながっていくかが注目される。
一方で中東情勢の緊迫化が懸念点となっている。ジェット燃料の高騰が航空需要に与える影響や、部素材の高騰が危惧されている。
日本では昨年11月に現政権により日本成長戦略本部が設置され、重点投資の対象とされる17の戦略分野に「航空・宇宙」「防衛産業」も指定された。防衛強化の流れを受けて、デュアルユースの取り組みも期待される。
環境対応進む
また社会全体で環境対応の意識が高まる中、廃油や木くずなどを原料とした持続可能な航空燃料(SAF)の開発・導入が進むほか、機体の軽量化やエンジンの高効率化が成されている。
航空機に多様される複合材は熱で溶かして分解するのに高いコストがかかるほか、元の材料と同等の品質に再生することが難しく、リサイクル技術・システムの確立が求められる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「次世代航空機向け静脈産業構築事業」を26―30年度に行う。退役航空機の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)廃材の解体・切断から航空機への再適用まで、リサイクルサプライチェーン(供給網)の成立条件と課題を明確化し、事業の採算性を最適化したサプライチェーン基盤を構築する。
日本企業は納期・コスト厳守による信頼性や、耐熱合金・複合材といった素材産業の強さ、高レベルな成形技術などを武器に航空機分野で地位を上げてきた。また品質保証に取り組み、高い基準をクリアした生産ができる点も強みとされる。従来はサプライヤーとして評価されてきたが、徐々に開発に携わるケースも増えてきている。航空機産業は他分野の企業やスタートアップの参入も盛んで、今後も成長産業として官民両方の進化が期待される。
ユーチューブで発信
SJACは航空・宇宙業界の人手不足を受け、若い世代に同業界をPRすることを目的に、YouTubeチャンネル「JACKYチャンネル」を昨年立ち上げた。SJACが東京ビッグサイトと共催する「国際航空宇宙展(JA)」の公式キャラクター「JACKY」を主役としたチャンネルで、28年秋に開催予定のJA2028に向けた周知活動の一環として、高校や大学、博物館などへの取材を基に動画を投稿している。
