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愛知県尾張西部地区産業界
愛知県尾張西部地区は岐阜県と三重県に隣接し、古くから東西をつなぐ交通の要衝として栄えてきた。特に毛織物を中心とした繊維業が発達し、現在でも尾州織物は海外の有名ブランドなどに採用され品質を評価されている。同地区の産業を形づくった交通網は陸海空に広がり、近年では利便性の高さから物流拠点の進出も相次ぐ。変化する社会に合わせ、新たな取り組みを進める同地区の産業を追った。
東西つなぐ産業集積地 物流拠点の整備進む
愛知県尾張西部地区は同県の北西部に位置し、愛西市、あま市、一宮市、稲沢市、岩倉市、北名古屋市、清須市、江南市、津島市、弥富市の10市と、大口町、大治町、蟹江町、豊山町、扶桑町の5町、飛島村の1村からなる。古くから同地区の中心的存在である一宮市や、6月に市制70周年を迎える江南市など歴史ある街と、愛西市、あま市、北名古屋市、清須市、弥富市など、いわゆる「平成の大合併」で誕生した比較的新しい街が共存している。
同地区の中でも一宮市を中心とした津島市、稲沢市、江南市に岐阜県の羽島市を加えたエリアは尾州地域と呼ばれ、古くから繊維業で栄えてきた。特に明治以降は毛織物産業が発展し、現在では国内生産量の約60%を担う一大産地として知られている。また近年は航空宇宙関連産業や電気・電子機器関連企業の集積も進む。特に県営名古屋空港(豊山町)周辺は同県や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究拠点、三菱重工の最終組み立て工場などが立ち並び、愛知、岐阜、三重などを合わせた国際戦略総合特区「アジアNo.1航空宇宙クラスター形成特区」にも指定されている。
同エリアが現在まで国内産業を支える中核的地域として栄えてきた背景には、関東圏と関西圏をつなぐ交通の要衝であったことが挙げられる。江戸時代は東海道と中山道をつなぐ美濃路として栄え、現在では名神高速道路、東名阪自動車道路、東海北陸自動車道路と、日本の主要な高速道路の結束点となっている。さらに2021年に名古屋第二環状自動車道が全線開通となったことで、物流ルートの選択肢が増加し、渋滞が緩和した。名古屋港最大のコンテナふ頭である飛島ふ頭から、長野方面へ向かう勝川インターチェンジ(IC)までの所要時間は平均で17分短縮された。
こうした交通の利便性の高まりから、同地区は物流拠点として全国から注目されている。特に東海北陸道の一宮稲沢北IC周辺では、大型物流センターの建設が相次ぐ。23年9月にはシーアールイーが大型物流施設「ロジスクエア一宮」を同ICから0・5キロメートルのエリアに開設した。4階建てで延床面積は約6万平方メートル。3階まで大型車両の乗り入れが可能なランウェイも備える。
EC専用倉庫を開設 西日本へのリードタイム短縮
インターネット通販での消費が一般化し大幅に物流が増加する一方で、運送事業者では人手不足が深刻化している。利便性の高い場所に物流拠点を構えることで配送を効率化し、リードタイムの短縮を目指す企業も多い。
丸徳産業(稲沢市)は、創業50年を迎えた総合物流企業。倉庫での保管だけでなく、製品加工やピッキング、組み立てなど広く物流サービスを展開する。同社は2月に敷地面積3万平方メートルで3階建ての堀之内物流センター(同)を立ち上げた。一宮市から弥富市まで、尾張西部地区を縦断する「西尾張中央道」に面しており、高い利便性を誇る。
同センター内にスポーツ用品大手のアルペンが新たに直販の電子商取引(EC)専用倉庫「中部フルフィルメントセンター(FC)」を稼働させた。約3300平方メートルの面積で、商品撮影スペースも併設する。同社では18年にEC専用倉庫「東日本FC」を千葉県に立ち上げており、事業の拡大に伴い西日本エリアへの配送リードタイム短縮のため、新たに中部FCを設立した。1月には同社最大の在庫型倉庫を大口町に構えたばかり。在庫型倉庫とFCが連携することで、商品の供給や店舗在庫の共有が迅速になる。取り扱い商品の拡大や在庫コントロールに役立てるねらいだ。
また、倉庫作業員の人手不足に対応するためデジタル改革(DX)にも力を入れる。東日本FCでは中国のロボメーカー、ギークプラスの自動搬送ロボット「EVE」を219台稼働させ、ピッキング作業を自動化。出荷までのリードタイムを約半分に短縮した。中部FCでも同ロボットを29台導入。さらにロボット上部に設置する棚の高さを従来比1・2倍の2・8メートルに高め、保管スペースを増加させた。今後、事業の拡大に合わせて運用台数を増やしていく。