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愛知県犬山市産業界
犬山市は愛知県北西部に位置し、北は木曽川を隔てて岐阜県と隣接する。国宝犬山城やユネスコ無形文化遺産の犬山祭など、豊かな自然と歴史、文化を併せ持つ観光都市として多くの観光客が訪れている。また市の西部には濃尾平野が広がり、工業地や農地として発展してきた。近年では人材不足に悩む中小企業を手助けしようと、市が採用活動などに使用できる独自の補助金を設立するなど産業発展にも取り組んでいる。
インバウンド需要広がる
観光都市として注目
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2024年は過去最多の65万人が犬山城を訪れた
犬山市は日本最古の建築である国宝犬山城を中心に、観光都市として発展してきた。インバウンド(訪日外国人)需要が高まり、同市も日本旅行で訪れたい観光地として注目されつつある。同市によると、2024年の犬山城の入場者数は約65万人と過去最多となり、外国人旅行客も過去最多だったという。特に台湾からの観光客が多い傾向にあり、外国人宿泊者の約3割を占める。同市によると20年前から台湾の観光意欲の高さに着目し、視察ツアーや、現地での展示会出展などを続けてきた結果だという。
一方で名古屋市からほど近いことにより、観光客は増加傾向にあっても市内で宿泊する観光客数は少ないという課題もある。同市では22年に「犬山市観光戦略」を掲げ30年までの期間、日帰り客の消費金額の増額や満足度向上などの課題を設定し、解決に向け取り組みを進めている。これまで活用が進んでいなかった、木曽川周辺の活性化や、キャンプ場として需要の高い来栖園地の環境整備、またユネスコ無形文化遺産である犬山祭を生かした夜間の観光推進などを実施している。
人材採用や育成に補助金活用
産業面では西部を通る国道41号線の整備が進み、周辺地域で産業機械やプラスチック製品、はん用機械などを中心に製造業が広く発達している。独自の技術や製品を持つ愛知県内の優れた企業を県が認定する「愛知ブランド企業」も多く、工業用濾過器を手がける三進製作所(犬山市)や、航空宇宙向けワイヤハーネスを製造する東洋航空電子(同)などが立地する。
しかし人手不足が社会問題となっている近年では、中小企業を中心に人材の確保に悩む経営者も多い。そこで同市では、独自に人材確保や人材育成向けの補助金を立ち上げている。
「犬山市産業振興補助金」は市内の中小企業が人材育成や採用活動などを行う際に必要となる費用の半額までを市が補助する制度。例えば、合同就職説明会への出展では一度の参加につき最大10万円まで、就職情報サイトなどで人材募集する際には一年で5万円までが補助される。このほかにも、企業が同市の住民を雇用した場合、1人につき年間の給与のうち36万円までを市が補助するなど、さまざまな面から中小企業の人材確保を支援している。
歴史彩る企業の取り組み/創業60周年記念し大鏡餅を奉納
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従業員らが神輿を担ぎ、大鏡餅を奉納した
歴史的建造物や行事が息づく犬山市では、同市に立地する企業の取り組みも文化の保護や継承を支えている。
特殊鋼商社兼金型メーカーの名古屋特殊鋼(犬山市)は、今年3月、同市にある大縣神社で行われる春の行事、豊年祭で大鏡餅の奉納に取り組んだ。大縣神社は尾張地方を開拓したとされる大縣大神をまつる神社で、本殿が国の重要文化財に指定されるなど歴史的建築物としての価値も高い。
毎年3月に開かれる豊年祭は五穀豊穣(ほうじょう)と国家安寧、産業の発展を祈願し「尾張に春を呼ぶお祭り」として地域で親しまれている。太鼓の演奏や餅まきなどが開催され、市内外から毎年多くの人が訪れる。
中でも見どころの一つとなっているのが、約10俵のもち米を使って作られる大鏡餅の奉納だ。名古屋特殊鋼では、従業員がもちつきをして約1トンの鏡餅を作成。完成後は大鏡餅を乗せたトラックで市内をパレードし、神輿(みこし)で神社へ奉納した。同社の創業60周年の記念事業の一環として実施され、盛り上がりを見せた。
