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愛知この一年
自動車産業や航空機産業などモノづくりの一大集積地として国内産業をけん引してきた愛知県。製造業に人材不足や構造変革、さらに環境対応やデジタル化といった課題が訪れる中、同県には蓄積した技術を生かし、国内のビジネスを前進させる推進力となることが期待されている。スタートアップ支援拠点「ステーションAi」の活用や、2028年の技能五輪国際大会の開催など、製造業の中核地としてこの先も取り組みが加速する。
官民連携でイノベーション創出
26年度予算に新興支援など
愛知県は2月、一般会計の総額が3兆2224億円となる2026年度当初予算案を発表した。前年度当初予算比9・6%増となり、当初予算として初めて3兆円を超えた。26年に同県で開かれる「アジア・アジアパラ競技大会」関連経費などが増加する。大村秀章知事は「ワンエイジア ワンハート ワンアイチを実現させる予算」とした。
産業施策では「ステーションAi」(名古屋市昭和区)を核にしたスタートアップ支援の取り組みに19億4388万円を、官民連携によるイノベーション創出の取り組みに11億7811万円をそれぞれ計上した。自動運転社会実装推進やロボット産業振興など次世代産業を育成・振興する事業には28億1797万円を充てた。米国関税措置の影響を受ける中小・中堅企業に対し資金繰りなどを支援する事業に2億6009万円を組み込んだ。
また、トヨタ自動車が30年代初頭の稼働予定で車両工場を建設する、豊田市貞宝町周辺の用地造成事業に222億8400万円を計上。専門部署として企業立地部に新たに定数24人の次世代産業用地開発課を設置する。
10社を新規認証 事業創出支援も
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式典には認定された10社と審査員らが集まった
愛知県は県内の優れたモノづくり企業を認証する制度「愛知ブランド企業」に新たに10社を認定した。追加されたのは三共工業所(碧南市)、東海鉄工(豊田市)、オー・ケー・シー(名古屋市中川区)、グランツ(稲沢市)、側島製罐(大治町)、メイドー(豊田市)、クマガイ特殊鋼(名古屋市緑区)、ツルタ製作所(刈谷市)、日東製罐(岡崎市)、原田車両設計(みよし市)。
同ブランドは03年度に59社の企業を同ブランドに認定したのを皮切りに、現在は426社となった。
さらに25年度から、愛知ブランド企業をはじめとした基盤産業関連の中小・中堅企業を対象に「モノづくり企業新規事業創出プログラム」を開始した。自社技術を活用した新規事業の創出を支援する。現在は愛知ブランド企業4社と、県内の事業者4社が同プログラムに取り組んでいる。
同ブランドに認定されている伊勢安金網製作所(豊橋市)は、土砂災害や洪水対策に使用される金網メーカー。同プログラムを通じて、焼き肉や焼き鳥、七輪などに使用する調理用網の開発を進めている。凹凸を抑えた独自の構造で温度のムラを抑制し、食材が張り付きにくくする。
このほか眞和興業(江南市)や東海光学(岡崎市)などがプログラムに参加し、新規事業の成立を目指している。
設備投資で事業拡大進む タイで高付加価値領域を対応
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大型鋳物や小ロット品の加工を進める
愛知県内の企業では、事業の拡大に向け設備投資も進む。
TEKNIA(テクニア、名古屋市中川区)は、タイで大型鋳物や小ロット品の加工など高付加価値領域への対応を加速する。サプライチェーンの多様化を進める国内製造業の需要を取り込み、自動車や航空機、船舶、工作機械分野などで受注を開拓する。3年後に売上高1000万バーツ(約5000万円)を当面の目標とし、事業基盤を固める。
タイは低コストな量産拠点と見られがちだったが、日系や欧米系に加え、中国企業の進出が近年増え、高品質な加工にも対応できる基盤が整いつつある。地政学リスクの高まりを背景に、中国依存を見直す動きをとらえ、同社は高付加価値領域に軸足を置き、現地で競争力を高める。
タイでは、現地法人のサイアムテクニア(チョンブリ県)が中核を担う。自社の強みとする多品種少量、高精度切削加工技術を打ち出し、大物鋳物や小ロット対応、インコネルなどの難削材加工といった高付加価値領域に注力する。
三重に建機メンテ新工場
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三重県亀山市に建設した新工場
大和機工(大府市)は3月、三重県亀山市に建設機械のメンテナンスを行う新工場を建設した。4月の稼働を目指す。総投資額は約13億円。杭を地中に押し込む圧入機のオーバーホールなど、主に重機の修理、保守点検を手がける。大型化が進む重機の整備体制を拡充することで、同県をはじめ、関西や北陸方面の地域の顧客ニーズに迅速に応える体制を構築する。
新工場は約8413平方メートルの敷地に、床面積約1154平方メートルの規模で建設した。屋外に定格荷重25トンと同5トンの親子クレーン1基を設置。工場内に同20トンと同5トンの親子クレーンなど計4基のクレーンを備え、重量物に対応する。塗装ブースも設ける。
圧入機の修理、保守点検は、地中を掘削するオーガヘッドなどの構成部品を点検し、修理や調整を行う。また、クローラークレーンやバックホーなどのメンテナンスも手がける。
新工場の稼働に合わせて、現在手狭になっている三重営業所(三重県鈴鹿市)を新工場に移転。稼働後に状況を見つつ、増員も視野に入れる。
グループ4社連携強化
スターテクノ(大口町)は2月、大口町に建設していた新本社工場を完成し、稼働した。投資額は約35億円。同岩倉市の賃借工場から同社グループ各社が集結する本拠地に回帰し、グループ連携を強化する。主力の産業用ロボットによる自動化システムを生産するほか、射出成形機用取り出しロボット大手のスター精機(大口町)をはじめグループ共同の製品展示エリアも整備する見込みだ。
新本社工場は3階建て、延べ床面積1万1320平方メートル。機械加工、組み立てを行う工場エリアのほか、実機のデモやテスト加工ができるロボットセンターも設けた。
4月をめどに整備を完了する製品展示エリアは面積約1380平方メートル。スターテクノの多関節ロボットシステムや段ボール箱自動組み立てロボットシステム、スター精機の取り出しロボット、ロボットパレタイザーなどをはじめ、グループ4社の製品を一堂に展示する。顧客向けに「産業用ロボット安全特別教育」を開くための部屋も設置した。
樹脂部品メーカーの国盛化学(小牧市)を源流とするグループ各社は、大口町と小牧市をまたぐエリアに本社を集結させている。スターテクノは火災によって2019年以降、岩倉市の賃借工場に移転していた。
23年に塩谷社長がスター精機の社長を兼務して以降、グループの協業を訴えてきた。今回、物理的にも近くなることで「グループ間のコミュニケーションを深める」(塩谷社長)。
すでにスターテクノとスター精機の両社が初めて共同チームを組んだ開発プロジェクトが進行している。
新設高専でDX人材育成
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愛知県総合工科高校内に県立高専を設置する
愛知県は高度なモノづくり人材の育成を目指し、29年4月をめどに愛知県立高等専門学校(県立高専)を新設する。愛知総合工科高等学校(名古屋市千種区)内に「デザイン情報工学科」を設け、高度なデジタル技術を活用できる専門人材の育成を目指す。製造業を中心とする県内産業の競争力維持に向け、デジタル変革(DX)を推進する高度技術人材を育てる。
デザイン情報工学科は定員40人。機械や電気電子技術とITを横断的に教育し、分野融合型の技術者を育成する。
DXやAI(人工知能)の進展により社会や産業構造が大きく変化する中、複数分野を組み合わせて解決策を導く能力を「デザイン力」と位置付け、教育の中心に据える。
同学科内にはロボットやモビリティーの仕組みや高度活用を学ぶ「ロボティクスコース」、AIやデータサイエンスなどの学びを深める「AI・デジタルコース」をそれぞれ設ける。
初代校長予定者には名古屋大学副総長の水谷法美氏を充てる。将来的にDXを推進できる人材の不足が指摘されており、同県は高専設置により産業界の人材要請に応える教育基盤を強化する。
自動運転バス27年度実用化
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愛・地球博記念公園で自動運転実証
自動車産業が集積する愛知県では、スタートアップと連携し新型モビリティーの活用も進む。
1月には愛・地球博記念公園(長久手市)内で自動運転バスの実証実験を開始した。2027年度には運転席無人の園内バスの実用化を予定しており、ドライバーの介入がほぼない状態での実証を行う。期間は26年3月末まで。
今回の実証では鋭角カーブやバックでの走行を伴う折り返し走行、停留所での乗降対応などを重点的に検証する。実証に先立ち、試乗した愛知県の大村秀章知事は「折り返しのポイントもスムーズだった」と感想を述べた。自動運転の園内バスを想定したオペレーション課題も抽出する。
中国ベンチャーのWeRide製の自動運転ソフトウエアを使用した小型バス2台で実証する。BOLDLY(ボードリー、東京都港区)が同事業を統括し、名鉄バス(名古屋市中村区)が運行を支援する。
三遠南信自動車道、県内全線開通
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トンネル内で実施された開通式
3月14日、浜松市から奥三河地区を経由して長野県飯田市を結ぶ国道474号三遠南信自動車道の一部「佐久間道路」「三遠道路」の東栄インターチェンジ(IC)―鳳来峡IC間が開通した。これで愛知県内の同自動車道は全線開通となる。
区間は全長7・1キロメートルで、トンネルが4カ所、橋梁は8橋。佐久間道路と三遠道路の全長は27・9キロメートル。両道路の事業化は1993年度。従来は奥三河地域と浜松市の行き来には国道151号線が利用されてきた。しかし急カーブや急こう配の連続する峠道があり、大型車両や緊急車両の通行に課題があった。同自動車道の開通で安全な道が確保された。中山間地域から都市部へのアクセス時間が短縮し、物流や観光の活性化、災害や医療の対応力強化といった整備効果を見込む。
