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未来けん引する事業進める
25年予算にアリーナ関連費など
愛知県は2月に2025年度当初予算案を発表した。スタートアップ振興や名古屋駅(名古屋市中村区)のスーパーターミナル化、7月に名古屋市北区に開設予定の「IGアリーナ」に関連した施策などを盛り込んだ。一般会計は医療・介護・子育てなどの扶助費や人件費の上昇のため、2年ぶりに増加。前年度当初予算比5・2%増の2兆9413億円となった。
日本最大級のスタートアップ支援施設「ステーションAi」(同昭和区)の運営費のほか、起業家のダイバーシティー(多様性)を推進するプログラム実施などスタートアップを起点としたイノベーションを誘発する事業に19億6216万円を計上した。
名古屋駅の利便性を高め、リニア中央新幹線開業時の効果を広域的に波及することを目指し、わかりやすい乗り換え空間を構築してスーパーターミナル化する事業の補助に2億900万円を充てた。
また、IGアリーナの内覧会や開業式などのイベント、運営に必要となる備品の調達などに18億56万円を用意。電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などのゼロエミッション(排出ゼロ)自動車の普及を加速させるための事業には11億774万円を計上した。
同当初予算案について、大村秀章愛知県知事は「メーク・アイチ・グレート予算」と宣言し、会見では自ら書いた書を掲げた。昨年のステーションAi開業に続き、国内最大級のアリーナであるIGアリーナの開業や、26年開催のアジア競技大会の関連事業など大規模プロジェクトが相次ぐ。こうしたことから「日本の未来を作るビッグプロジェクトを大きく前進させる」との思いを込めたという。
愛知ブランドイノベアワード 4社が受賞
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大村秀章愛知県知事(右)からトロフィーを受ける石川諒取締役
愛知県は1月27日、モノづくり企業の先進的な取り組みを表彰する「愛知ブランドイノベーションアワード2024」の受賞企業を決定する最終審査をステーションAiで開催し、優秀賞3社を決定した。最優秀賞の知事賞には、国産大豆を用いたおから入り大豆ミートを商品化している、おとうふ工房いしかわ(愛知県高浜市)を選んだ。
優秀賞には物流機器メーカーで、段差を解消できる昇降装置であるシザーリフトを開発・商品化しているメイキコウ(同豊明市)と、スマートロッカーシステム「クイスト」を展開しているFUJIを選定。特別賞には特殊肥料を活用したイチジク栽培を手がける宮川産業(同田原市)を選んだ。
表彰式で大村秀章知事は「オンリーワン、トップシェアを誇る企業が切磋琢磨(せっさたくま)しながらビジネスを伸ばしていることに敬意を表する」と語った。同賞は22年度に新設し、今回が2回目。独自の技術や製品を持つ愛知県内の優れた企業を県が認定する「愛知ブランド企業」の中から、先進的な新規事業や挑戦事例を選定している。
8社が新たに認定
また愛知県は愛知ブランド企業として新たに8社を認定した。追加されたのは、渡辺精密工業(名古屋市港区)、三洋製作所(同緑区)、松永製菓(愛知県小牧市)、放電エンジニアリング(同清須市)、成田製作所(名古屋市熱田区)、三明製作所(愛知県春日井市)、コデラダイナックス(同武豊町)、三葵コーポレーション(同岡崎市)。
同ブランドは「優れた理念、トップのリーダーシップのもと、人の活性化及び業務プロセスの革新を進め、独自の強みを発揮し、環境に配慮しつつ、顧客起点のブランド価値等の構築による顧客価値を形成し、イノベーションに取り組む製造業の企業」と定められており、認定された企業についてはホームページ(HP)などを通じて情報発信する。2003年度に59社の企業を同ブランドに認定したのを皮切りに、毎年新たな企業を認定。現在422社まで拡大している。
DX・生産性向上大賞6社を表彰
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舩坂酒造店の有巣弘城社長(中央左)に嶋尾正名古屋商工会議所会頭(右端)が表彰状などを授与した
企業が自社の生産性や業務効率を向上させるため、新たな取り組みを進める例も多い。名古屋商工会議所は2月、中小企業のデジタル活用や生産性向上の取り組み事例を表彰する「NAGOYA DX・生産性向上アワード」の受賞企業6社を決定し、表彰した。酒の試飲を有料化し、売り上げに転換しながら顧客満足度も向上する仕組みを作った舩坂酒造店(岐阜県高山市)がグランプリを受賞した。表彰式で同社の有巣弘城社長は「スタッフと皆で取り組んだ結果が実を結んだ」と喜んだ。
このほか審査員特別賞をテルミック(愛知県刈谷市)の紙の使用を7割、残業時間を3割削減したスマート工場での取り組みと、リウシス(名古屋市熱田区)の開発した宿泊施設の清掃作業者が設備の故障や破損を施設や修繕事業者と共有できるアプリケーションが受賞した。
優秀賞には樋口製作所(岐阜県各務原市)の製造現場とIT部門の橋渡しをする「ブリッジエンジニア」の育成事業と、大野ナイフ製作所(同関市)の工場の状況を即時に「見える化」するITシステムの活用、名古屋眼鏡(名古屋市中区)が自社開発したWeb受注・物流システムがそれぞれ選ばれた。
名古屋商工会議所の嶋尾正会頭は応募事例について「いずれも経営の合理化や付加価値増大に向けた果敢な挑戦だ」と評価した。
同アワードは今回が初開催。東海3県に事業所をもつ中小企業が応募でき、製造業やサービス業、小売業などさまざまな業種から76社が応募した。
名南M&A支援で初TPM上場
顕彰事業が企業の知名度や社会的価値を高める一方、企業の成長戦略として新規株式公開(IPO)を検討する経営者も多い。特に近年注目されているのが、プロ投資家向け市場「東京プロマーケット(TPM)」での上場だ。
22年に東海地区で初めて、名南M&Aが上場支援などを手がける「Jアドバイザー」の資格を取得。以来、東海・近畿地区を中心に上場支援をしてきた。同社が支援した企業として、17日にテクノスマイル(福岡県宮若市)が最初の上場を果たした。
TPMは東京証券取引所が運営する株式市場の一つ。同じ東証のプライム、スタンダード、グロースの3市場と異なり、売上高や利益、流通時価総額などの形式基準が設けられておらず、株主数にも基準がないのが特徴だ。そのため上場後もオーナーシップの維持ができ、親族経営の中小企業にも適するという。
愛知県に多く集積する中小製造業は、一般市場では上場が難しい傾向にある。しかし間口の広いTPMでは上場を目指すことができると、名南M&Aではサポートを広げている。
名豊道路開通で沿線産業活性化 完成車・部品物流の効率向上
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完成車を乗せた車両運搬車が開通を祝った
名古屋市と愛知県豊橋市間を結び、沿線の8市1町を通過する大規模バイパス「国道23号名豊道路」が8日全面開通した。全長72・7キロメートルの同道路の最後の未開通区間であった蒲郡インターチェンジ(IC)-豊川為当IC間の延長9・1キロメートルが開通。渋滞がなければ、国道23号を使う場合に名古屋―豊橋間でかかっていた約1時間20分の所要時間が1時間程度で済むようになった。通過地域の渋滞緩和や物流効率化で生じる経済効果が期待される。
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開通から約10分で為当ICからの先導車とすれ違う
名豊道路は1972年に一部区間が事業化されてから半世紀以上かけて全線開通となった。沿線にはトヨタの自動車組立工場やあまたの自動車部品工場が立地し、さらに完成自動車の輸出台数が全国2位の三河港に直結する。信号待ちがない名豊道路の全面開通によって自動車部品の物流効率化や完成自動車の三河港までの輸送時間短縮の効果も見込まれる。豊田市から三河港への陸上輸送は現状の1日2往復から、3往復に拡大が可能になるとも言われている。大村秀章愛知県知事も「地域間の連携促進、さらなる産業立地などさまざまな効果を生み出す」と述べ、全面開通への期待感を示す。
沿線市町は農業も盛んで、愛知県内の野菜産出額の約7割、花き産出額の約8割を占める。沿線には多くの卸売市場や農産物出荷場があり、開通で新鮮な農産物をより早く市場に届けられるようになるほか、名豊道路を軸とした観光周遊の促進、災害時の救援・救助活動の迅速化といった効果も見込まれる。全面開通が沿線地域の産業活性化にどれだけつながるかが注目される。