-
業種・地域から探す
愛知県瀬戸市・尾張旭市産業界
愛知県西部の尾張丘陵に位置する瀬戸市・尾張旭市は、丘陵から採れる良質な陶土や珪砂(けいしゃ)によって、古くからやきものの街として発展を続けてきた。近年では長年培った窯業の技術や経験を生かし、絶縁体「がいし」やファインセラミックなど新たな産業を創出している。そのほかにも電気機械や器具製造、金属、化学などさまざまな種類の産業が存在しており、一つの産業に依存することなく幅広い分野の製造業が集積する。また、名古屋市から北東20キロメートルという利便性の高さから、住宅都市としての役割も有している。古くからの伝統が息づく両市では、首都圏や都市部などからの移住による創業支援など未来に向けた取り組みも盛んだ。
多様な産業が発展 窯業のノウハウ生かす
-
職人による手仕事で作られる陶磁器も多い
瀬戸市・尾張旭市は古くから窯業のまちとして知られ、陶磁器全般を指す「せともの」の由来となっている「瀬戸焼」の生産地として現在でも発展を続けている。同地区で窯業が栄えてきた理由として、良質な土の採掘源である「瀬戸層群」がある。標高100―300メートルの小高い山々に囲まれた同地区の丘陵地帯からは、陶磁器の原料となる良質な木節粘土や蛙目(がいろめ)粘土、ガラスの材料となる珪砂が採掘される。これらを材料として瀬戸焼は生産を伸ばしてきた。
現在も多くの窯元や陶磁器作家が軒を連ねており、毎年秋には国内最大級の陶磁器イベント「せともの祭り」が開かれる。瀬戸市の窯業を繫栄させた磁祖加藤民吉翁の功績をたたえる産業祭として始まり、今年で95回目を迎える。特に瀬戸川沿いに約200軒もの陶磁器メーカーや作家が出展する「せともの大廉売市」は約30万人以上が来場する一大イベント。普段使いの器から陶芸作品までさまざまな作品を購入することができる。今年は9月12―13日に開催を予定する。
こうした伝統産業は、別の形でも同地区の産業を支えている。窯業のコミュニティーやノウハウが活用され、ファインセラミックやがいしの製造も盛んとなっている。こうした新たな産業の発展により、電気機械や器具製造、自動車部品製造や医療器具製造など、幅広い分野の製造業が市内に立地し、バランスの取れた産業を形作っている。
移住と起業、セットで支援
-
創業による活性化が期待される商店街
産業のさらなる多様化を目指し、瀬戸市では創業支援に力を入れている。特に、移住と組み合わせた取り組みは特徴的だ。同市に魅力を感じる首都圏や都市部に住む人の移住を支援しつつ、同市で起業するためのノウハウや場所などを提供する。すでに移住やUターンした住民が開業する例が増えており、カフェやコワーキングスペース、宿泊施設など5年間で30件にも上る。行政が支援することで、この流れを加速させる狙いだ。
2026年1月17日に開催したのは、「挑戦×移住×起業×せと」をテーマにした移住希望者向けの体験ツアー。全国から異なる年齢や性別の9人が参加し、実際に移住して起業した経験者らと語り合った。また、同市の職員が起業支援や補助金についても解説した。このほか、市内の様子を参加者に知ってもらうため、商店街や市内に所在する店舗を見て回り、経営者に話を聞く街歩き体験も実施した。参加者からは「ここ(瀬戸市)なら自分のやりたいことに挑戦できそう」と前向きな声も上がったという。
同市では中央通商店街、銀座通り商店街、末広町商店街を対象に、空き家店舗に新たに出展する事業者へ家賃や店舗改装費を支援する補助金や、無料の創業塾、陶芸をはじめとするクリエイターに対して工房の改修費などを支援する補助金などをさまざま揃えている。
今後も手厚い支援で、伝統あるまちの活性化を目指していく。
CO2排出ゼロ、AIで教材開発
尾張旭市に所在する名古屋産業大学環境経営研究所は学校生活でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を学ぶ「ゼロカーボンスクール教育」において、クラウドや生成AI(人工知能)を活用した学習コンテンツの開発を国内外で加速する。文部科学省の「GIGAスクール構想」の第2期「ネクストGIGA」に準拠。実測した二酸化炭素(CO2)データに基づく探究的な学びや、国際協働学習の先駆的モデルの確立を目指す。
生徒自らがIoT(モノのインターネット)センサーで校内のCO2濃度や樹木の吸収量を実測。そのデータを集約し、クラウド経由で他校に提供する。学習成果を動画に収録し、視聴覚教材として活用する。
クラウド上のデータは生成AIを用いて検証するとともに、海外教育現場とも多言語配信によってデータを共有し、国境を越えたオンライン協働学習で先駆ける。2025年12月のネパールに続き、26年3月に台湾(高雄市・台北市)で教員研修などを開催した。
さらに尾張旭市とも連携。行政、教育機関、地域企業、金融機関が一体となった「産学官金」体制で取り組みを本格化する。「尾張旭モデル」として横展開も視野に入れる。
廃プラ再生の取り組み実証
-
回収された廃プラから再生したプラ材料
プラスチックの循環利用に向け、廃プラスチックの回収が課題となっている。企業が廃プラをしっかりと分別しても、少量であることが理由で引き取ってもらえないケースは多い。この課題を解決しようとリコーは瀬戸市で日東工業やリンナイなどと連携し、廃プラの巡回集荷を実証している。回収量が増え、地域でプラ資源を循環する成果が生まれている。
実証実験はリコーが取りまとめ、環境省の補助事業として25年9月に始まった。収集車1台が瀬戸市内にある日東工業の1工場とリンナイの2工場3工場を回って廃プラを回収する「ミルクラン」方式で実施する。集めるのは部品などの梱包(こんぽう)に使ったフィルムやシート状の柔らかい廃プラだ。
回収した廃プラは近隣のリサイクルセンターに運んで機械で圧縮し、愛知県内の企業でプラ製品の材料に再生される。この材料を原料として県内の別の企業がゴミ袋を製造することで、地域でプラ資源を循環させる。
従来はリサイクルできる廃プラが発生しても、少量だと回収してもらえず、業者に費用を払って産業廃棄物として引き取ってもらい、燃料代替して焼却処分していた。
ごあいさつ/瀬戸市長 川本 雅之
-
瀬戸市長 川本 雅之
瀬戸市の産業は、古くから陶磁器産業を中心に発展し、現在ではファインセラミックスや電気機械、医療関連など多様な産業が集積しています。
社会環境が急速に変化する今日、当市のものづくりがさらなる飛躍を遂げるためには、生産性向上や新たな価値の創出が不可欠であるとともに、産業用地の確保が必要となります。そのための取り組みを進めるとともに、長年地域経済を支えてきた市内企業と、柔軟な発想や新しい視点を持つスタートアップとの連携を図るなど、市内に立地する企業が新たな挑戦へと踏み出せるよう、力強く後押ししています。
2029年の市制施行100周年を見据え、官民が一体となって活力と魅力にあふれるものづくりのまちの実現を目指していきます。
ごあいさつ/尾張旭市長 柴田 浩
-
尾張旭市長 柴田 浩
尾張旭市は、大都市である名古屋市に隣接しながらも豊かな緑地に恵まれ、市域中心を名鉄瀬戸線が東西に走る高い利便性もあって、暮らしやすいまちとして発展してきました。
住宅都市である当市の産業の特徴としては、医療・福祉、小売り、飲食サービスなどの第三次産業が就業者の約7割を占める一方、製造業では電気機械、はん用機械器具、窯業・土石製品、業務機械器具など、突出した企業に依存することなく、多様な業種によって程よい調和が保たれています。
昨今の深刻な物価高騰や人手不足に加え、国際情勢の緊迫化など極めて不安定な経済環境が続く中、市内事業者に向けて、設備導入支援を新たに実施するほか、工場新増設支援や事業承継相談会などにも取り組み、地域経済の活性化を図ってまいります。
