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アグリテック
先端技術を活用して農業の生産性向上を目指すスマート農業は、農業人口の減少や高齢化といった社会課題の解決に大きな期待が寄せられている。安全・安心で豊かな食文化の基盤となる農業を、技術的な側面から支援・高度化するアグリテックの発展は国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成にもつながる重要なテーマだ。
畜産IoT/勘・経験—IT化、負担を削減
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【写真1】 「PIG LABO」によって養豚業の業務効率化を図る(日本ハム)
日本ハムはNTTデータなどと共同で、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用して養豚産業の課題を解決する「スマート養豚プロジェクト」の一環として、養豚支援システム「PIG LABO(ピッグラボ)」の開発を進めている。2029年までに母豚の繁殖から仔豚の育成、出荷までの全工程をサポートできるシステムを構築する計画で、作業効率化による生産性向上や作業者負担の軽減につなげる。(写真1)。
国内の養豚業では、農場の大規模化に伴い作業員の労務負担が増加。また作業員の高齢化が進むが、若手人材の確保も難しい。人手不足と技術の継承が課題となる中、養豚業で必要となる勘と経験をデジタル技術で補う。
同システムは第1弾の「発情検知システム」と第2弾の「体重推定システム」でテスト販売を行っている。発情検知システムは豚の映像データからAIが発情の兆候を分析し、各個体が種付け適期かどうかを3段階で示す。実証実験では93—94%の受胎率で、発情確認作業による業務負担を79%削減。毎日の発情判定を高精度かつ効率的に行える。
体重推定システムはケーブル移動式の3次元(3D)カメラの画像からAIが1頭ごとの体重を推定し、群れの体重分布と平均体重を算出する。作業員が豚を計量器具まで移動させる必要がなく、労務削減と作業効率化を実現する。また豚のストレスも軽減できアニマルウェルフェア(動物福祉)にも貢献する。
いずれのシステムも判定結果はタブレット端末などで遠隔地から確認でき、日常的な作業の負担を軽減する。現状は大規模農場での導入が多いが、農場の規模や飼育方法にかかわらず対応可能なシステムを目指し、出荷などの他の工程のシステム開発を進める。日本ハム中央研究所の助川慎プロモーターは「養豚業界で広く活用してもらえるシステムを提供し、魅力的な養豚を実現する」と力を込める。
植物工場/ノウハウ基盤、高収益モデル構築
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【写真2】 レタスを生産する完全人工光型・水耕栽培植物工場の「杉戸量産実証工場」(大気社)
大気社は植物工場の事業を加速する。食の安全性や安定供給といった社会課題に対応しようと、研究開発を10年以上前に開始。空調・湿度管理の技術を活用した杉戸量産実証工場(埼玉県杉戸町)を2021年に稼働し、完全子会社のベジ・ファクトリー(埼玉県春日部市)が運営する。大気社の環境エンジニアリング技術と自社工場で蓄積した栽培運営ノウハウを基盤に、植物工場ビジネスの高収益モデルを追求する。
大気社は完全人工光型・水耕栽培植物工場を「ベジファクトリー」として事業展開する。年間を通じて天候に左右されない室内のクリーン環境で野菜の栽培が可能だ。プラント建設から野菜の生産・販売まで一貫したソリューションの提供を図る。生産拠点は自社の杉戸工場のほか、国内6カ所の工場を持ち事業者に委託する。
杉戸工場ではフリルレタスや結球レタス、グリーンリーフなどを生産。太陽光の代わりに発光ダイオード(LED)で育成。栽培室は完全無人化し、土を使わず培養液による水耕栽培を行う。自動化と独自栽培パネルシステムで生菌数を従来工場の約100分の1に抑える。栽培工程は種まきから収穫まで45日ほどで、1日当たり約2300株を収穫。パレットを10段設置すれば収量は露地栽培の10倍になる(写真2)。
出荷先は業務用でコンビニエンスストアやハンバーガーチェーンなどの外食・中食・総菜企業が中心。一般的な露地野菜より価格は高めだが「品質変動が少なく安定的な供給が可能。土や害虫が付かず、廃棄部分を減らし洗浄の手間も省ける」(大野翔吾ベジ・ファクトリー取締役企画部長)。
大気社は植物工場を主力の環境システム事業と塗装システム事業に次ぐ第三の柱事業に育てる。植物工場の課題である電気代・人件費を踏まえ生産性向上やコスト低減を図る。将来的には「建設のコンサルティングを収益化させたい」(伊藤雅明ベジ・ファクトリー代表取締役)考えだ。
BioJapan 10月開催/パシフィコ横浜
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前回の会場風景(JTBコミュニケーションデザイン提供)
10月8日から10日までの3日間、「BioJapan2025」が「再生医療JAPAN2025」「healthTECH JAPAN2025」の2展示会とともに横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜で開催する。
1986年に初開催したBioJapanは、バイオテクノロジーに焦点を当てた展示会。バイオテクノロジーの応用先は創薬や再生医療、診断・医療機器など幅広く、近年はモノづくりやエネルギー、機能性食品などの分野でも注目される。
会期中は食にまつわる主催者セミナーも開催される。10月8日13時20分からは京都大学大学院の小川順教授らが「日本のフードバイオの未来を問う~世界を意識した新開発食品の安心安全構築~」をテーマに登壇し、同日15時半からは東京大学大学院の佐藤隆一郎特任教授らが「食で実現する健康寿命延伸~細胞老化のヘルスサイエンスと食への展開~」をテーマに議論する。
BioJapanでは食とバイオテクノロジーの融合をテーマとした出展やセミナーが予定され、注目度の高い展示会となっている。
