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世界切削工具会議2024 in JAPAN を振り返る
日本機械工具工業会(JTA)は5月21日から24日までの4日間、大阪・中之島のグランキューブ大阪などで「世界切削工具会議2024(WCTC2024)」を開いた。世界の工具メーカーや工作機械メーカー関係者が参加した。有識者による講演や社交イベント、工場見学ツアー、日本文化体験などのプログラムが用意され、会場には企業ブースが設けられた。同会議の内容を振り返るとともに、関連企業の製品・技術を紹介する。
海外からも多くの参加 “日本”を楽しむ
WCTCは世界各地で過去7回開催されており、今回で8回目の開催となった。日本での開催は2013年に京都で行われた第5回以来。今回の会議のテーマは「WAのおもてなし」。世界の切削工具業界が「輪」のように一つに結びつくことや、参加者に日本の「和(伝統・文化・品質)」を体感してもらうことを目指した。
参加者170人のうち約半数の82人は海外からの来訪で、まさに“世界会議”と呼ぶにふさわしいイベントとなった。米国、ドイツ、スイス、韓国、中国など、欧米やアジアから16カ国の参加があった。同会議には欧州切削工具協会(ECTA)、米国切削工具協会(USCTI)などの工業会も参加した。
企業や大学教授による講演やスピーチが行われたほか、会場には企業ブースが設けられた。参加者は工具や工作機械についてはもちろん、宇宙や自動車など成長産業への知見も深めた。
またグランキューブ大阪を離れ、社交イベントや工場見学ツアー、大阪城見学ツアー、日本文化体験なども行われた。5月23日のガラディナーは住吉大社吉祥殿で行われ、余興として鬼太鼓座(おんでこざ)による和太鼓が披露された。参加者は技術について意見を交換したほか、“日本”も楽しんだ。
世界切削工具会議2024を振り返って
世界の工業会と連携 工具需要を把握することを意思統一
世界切削工具会議2024 実行委員長 日本機械工具工業会 会長 (不二越 執行役員) 松本 克洋 氏
今回、京都に続いて2回目の日本開催となる「世界切削工具会議2024(WCТC2024)」を主催した。パートナー同伴ということもあり、和やかで華やいだ会だった。
会の中で各エリアから経済状況が発表されたが、日本は自動車の生産台数が回復途中であり、2018年レベルまで回復していないため、工作機械、切削工具の受注状況も同様で、生産額自体も回復途中である。世界の情報を聞いても、欧米の24年の見込みは横ばい程度。唯一インドだけが伸びているとの報告があった。
興味深い話として、欧米および韓国の自動車生産は電気自動車(EV)から移行して、ハイブリッド車(HV)を含む内燃機関自動車が伸びていると報告された。
今回は日本、欧州、米国の3工業会で今後統一のデータを作成し、全世界の工具需要を把握することを意思統一し、日本がイニシアチブを取れた事が大きかった。
閉会式あいさつ
市場を生き抜くには他社を認識、対面で協議することが重要
日本機械工具工業会 副会長(住友電気工業 常務取締役)佐橋 稔之 氏
5月22日の開会式で日本、欧州、米国、韓国、インドの切削工具工業協会から2024年の切削工具市場の見通しが発表された。その中で欧州、米国、韓国の市場は政治や経済的な背景から、そこまで明るい兆しはないように感じた。一方、日本市場は我々の期待も含まれているが、少し上向いているようだ。インドは人口動態により若い世代が多く、政府の支援や海外からの投資もあり、大きな成長を見通している。これらは各地域のリアルな声を反映している。互いに市場環境を理解するために、非常に貴重な情報源になったと考えている。
5月23日にはトヨタ自動車の山本祐パワートレーン製造基盤技術部室長に講演してもらった。自動車産業は切削工具にとって最も重要な市場で、自動車業界が向かう方向性や生き残り策、将来の切削工具サプライヤーに対する期待などは、各社に重要な示唆をもたらした。
MSTコーポレーションの支援を得て、同社の工場見学も実施した。先端工具を開発、活用し、生産性を向上する手法を学ぶことができた。日本のモノづくりの真意を感じることができたと思っている。
参加した各社は協力する場合もあれば、競業する場合もある。しかしこの市場を生き抜き、世界市場で成長していくためには互いを認識し、対面で素直に協議することも重要になる。4日間の日程を終え、それこそがWCTCの目的だと考えている。
閉会式あいさつ
講演で得た学びを母国に持ち帰りたい
米国切削工具協会(USCTI)会長 トーマス・ハーグ 氏
1回目の世界切削工具会議(WCTC)が米国のフロリダ州で開かれてから、2001年の2回目を除く、すべての会議に参加している。それはこの会議が重要だと認識しているからだ。5月22日にはアストロスケールホールディングスの講演があり、スペースデブリ(宇宙ゴミ)を処理するという非常に大きな使命があった。23日にはトヨタ自動車がさまざまなチャンスについて、また不二越がロボットによる自動化などを話された。24日には東京電機大学の松村隆教授が先端材料の切削シミュレーションに基づく考え方などについて講演された。いずれも母国に持ち帰りたいと思わせる内容で、心から感謝したい。
3年後の27年には米国切削工具協会(USCTI)がホスト国としてWCTCを開催する予定で、素晴らしく貴重な時間を過ごしてもらいたいと思っている。
閉会式あいさつ
膨大な数の学びを得られた4日間
欧州切削工具協会(ECTA) 会長 フェデリコ・コスタ 氏
4日間の日程を終え、ホスト国の皆さまには感謝を申し上げたい。ホスピタリティーや、おもてなしに関する高い水準を設けていたと実感している。ビジネス、科学、協会、文化が互いに補完し合ったとも感じており、参加した一人ひとりが取り組むべき膨大な数の学びを持ち帰ることができた。参加者はこの大阪でたくさんのアイデアを得られ、今後の行動に必ずプラスになると思っている。