-
業種・地域から探す
第20回LCA日本フォーラム表彰
LCA日本フォーラムはLCA(ライフサイクルアセスメント)の優れた活動を表彰する「第20回LCA日本フォーラム表彰」(後援=経済産業省、日刊工業新聞社)を選定し、1月23日に全国町村会館(東京都千代田区)で表彰式を開いた。最高位の経済産業省産業技術環境局長賞に選ばれた日本化学工業協会と住友化学など5件の企業・団体と2人の功労者に各賞を授与した。世界的に脱炭素の潮流が拡大する中、企業経営におけるLCA手法の活用が欠かせなくなっている。
製造―最終製品の廃棄 環境負荷低減に貢献
ライフサイクルを定量評価
LCAは製品の資源採取から原材料の調達、製造、加工、組み立て、流通、製品使用、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体における環境負荷を定量的に評価する手法。2030年をゴールとした国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成や50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けた取り組みが加速するにつれ、LCA手法の重要性はますます高まっている。
LCA日本フォーラムはLCAに関わる産業界、学会、国公立研究機関の関係者が集まるプラットフォームで、産業環境管理協会が事務局を務める。1995年に設立され、2004年からLCAに関する優れた取り組みを「LCA日本フォーラム表彰」として顕彰している。
表彰式で稲葉敦同フォーラム会長は「LCAには機運の高まる波が3回あった」と紹介。「第1波は1998年、国家プロジェクト『製品等ライフサイクル環境影響評価技術開発』が発足したころ。第2波は2008年、『カーボンフットプリント制度』が始まったころ。そして第3波が現在。23年11月には『ISO14068―1:カーボンニュートラリティ』が発行された。カーボンニュートラル実現を目指して全世界がLCAやカーボンフットプリント(CFP)を学び、実践している」と説明した。
CFPは製品・サービスがライフサイクル全体を通して排出する温室効果ガス(GHG)を、二酸化炭素(CO2)に換算して表示する仕組み。CFPを見える化することは、サプライチェーン(供給網)全体のCO2排出量削減につながり、脱炭素・低炭素製品(グリーン製品)が選択される市場創出の基盤として欠かせない。
最高位賞に日化協/住友化学
20回の節目となる今回は、23年8月7日から10月6日まで募集が行われ、LCA日本フォーラム表彰選考委員会の審査を経て、12月に受賞者が決定した。日本化学工業協会/住友化学が最高位の経済産業省産業技術環境局長賞に輝いたほか、LCA日本フォーラム会長賞2件、奨励賞2件と、功労賞に2人が選ばれた。
同表彰の応募部門は「環境マネジメント・環境コミュニケーション部門」「研究・教育・普及部門」「アウトリーチ・コラボレーション部門」と、公募ではなく関係者の推薦に基づく「功労賞部門」の4部門となっている。
経済産業省産業技術環境局長賞は日本化学工業協会と住友化学の「化学産業における製品カーボンフットプリント算定推進―ガイドラインの策定と算定システムの開発・展開―」が受賞した。化学業界におけるCFP算定の取り組みを推進する取り組みだ。
幅広い業界に素材を供給する化学産業にとって、CFP対応はカーボンニュートラル実現だけでなく、サプライチェーンの維持や安定供給を継続する観点からも欠かせない課題となっている。
日化協では、21年に業界内のワーキンググループを立ち上げて議論を重ね、23年3月、化学産業における製品のCFP算定ガイドラインを公開した。膨大な化学製品のCFPを適切に行えるようにし、汎用的な算定ルールでカバーできない業界固有の算定課題にも対応。先行している海外の業界ガイドラインとの整合性にも配慮した。合わせて住友化学のCFP算定システム「CFP―TOMO」の無償提供を進めている。
CFP―TOMOは住友化学が21年末に自社向けに開発したもので、約2万品目に上る同社製品について計算を完了している。さまざまな共製品(同一の単位プロセス上で得られる評価対象製品以外の生品で配分の対象となるもの)や副生品(プロセスの目的生産物ではなく、配分の対象外のもの)が複雑に関係する化学品の製造プロセスを踏まえたCFP算定に対応する。22年から無償提供を始め、化学会社を中心に約100社が導入している。
進藤秀夫同協会専務理事は「化学産業は健康・快適・便利な生活を支えるソリューションプロバイダーとしてあらゆる産業に製品・サービスを提供している。このため自らの製造段階だけでなく、最終製品の使用・廃棄段階の環境負荷低減への貢献など、LCAの視点を持つことが重要。今回受賞した取り組みによりCFP算定の環境整備はできつつある。今後、化学産業がこのガイドラインを用いた化学製品の算定開示を進め、バリューチェーン全体でも効果的なGHG削減活動につなげていきたい」とした。
カーボンニュートラル貢献 CFP活用で産業界普及
審査講評では「CFP算定ガイドラインは算定にとどまらず、他者への提供、顧客へのCFP提供などLCA普及に貢献した成果は極めて大きい。実効性に富んだ活動として高く評価できるだけでなく、素材産業におけるCFPの活用という面で産業界全体への影響が大きく、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献するもの」と高く評価された。
このほかLCA日本フォーラム会長賞には、Green×Digitalコンソーシアムの「デジタル技術を活用した企業間でデータ連携によるサプライチェーンCO2排出量の“見える化”への取り組み」とリコーの「再生樹脂の原単位算定と製品LCAへの活用」が選ばれた。
LCA日本フォーラム奨励賞はゼロボードの「CFP算定ツールの開発および企業のCFP算定支援等LCA算定普及に貢献した活動」と資生堂の「LCAを活用した気候/自然関連リスク分析―TCFD/TNFDレポートへの応用」が受賞している。