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ダイヤモンド・cBN工具(2024年7月)
ダイヤモンドは硬度、強度、耐摩耗性により、産業界において重要な役割を担っている。切削工具には多結晶ダイヤモンド(PCD)が多用される。ダイヤモンドに次ぐ硬度がある立方晶窒化ホウ素(cBN)は鉄系金属の加工で使われる。両者ともに切削、研削、研磨加工などで活躍する。パワー半導体市場の拡大や環境対応など、顧客や社会のニーズに応えたダイヤモンド・cBN工具が開発されている。
高精度加工を実現 ダイヤモンド・cBN工具
国内生産 896億円 昨年
ダイヤモンド工具は自動車、産業機械、建設など多岐にわたる産業分野の「切る」「削る」「磨く」といった工程で利用される。
高硬度かつ高強度で、熱伝導率や耐摩耗性が高いダイヤモンドの特性は、切削工具として優れている。ダイヤモンド工具は難削材や硬脆(こうぜい)材の精密加工を得意とし、加工時間の短縮にも貢献する。さらに刃先寿命が長く、長期にわたって加工を行える。
しかし対象が鉄系素材の場合、加工中に発生する高熱によって、ダイヤモンドの炭素原子が鉄に吸収されてしまうという弱点がある。そこで鉄系素材の加工には、鉄との反応を起こさず、工具材料としてはダイヤモンドに次ぐ硬さを誇るcBNが用いられる。
合成ダイヤモンドの微結晶と金属やセラミックスなどの結合材を高温・高圧で焼結させたPCDは主に切削工具の先端で使われている。非鉄金属や複合材の高精度切削に威力を発揮する。
ダイヤモンド・cBN工具の2023年の国内生産額は896億8000万円となった。24年1月、ダイヤモンド工業協会はダイヤモンド・cBN工具の24年の国内生産額の目標を945億円に設定した。しかし、24年上期は機械や半導体などの市場の動きが鈍く、動きだしはよくない。下期の回復に期待が高まる。
パワー半導体 SiC向け 欧米好調
研削2倍速-摩耗3分の1
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SiC向け工具製品に注力する企業が増えている。(ノリタケカンパニーリミテドの研磨パッド「LHAパッド」=ノリタケカンパニーリミテド提供)
こうした中、パワー半導体市場は拡大しており、今後も成長が見込まれる。パワー半導体の材料の一つである炭化ケイ素(SiC)の加工需要も大きくなっている。SiCは非常に硬いため、ダイヤモンド工具が活躍する。
旭ダイヤモンド工業はSiCがシリコン系に比べて高い成長率を見込めるとし、SiC系パワー半導体市場に注力している。特に欧米でSiC向け製品が伸びると予測している。同社は2年程前から半導体向け製品の増産に向けた環境作りを始め、受注に対応できる環境を整えた。
ノリタケカンパニーリミテドの平面研削ホイール「MVPホイール」はSiCウエハーを研削した際に、2倍の切り込み速度でも同社従来品と比べて工具摩耗量を3分の1以下に抑えることに成功した。独自の結合材や砥粒(とりゅう)の調合により、工具の高い切れ味と長寿命を実現し、加工コスト低減や生産性向上に寄与する。
また同社の研磨パッド「LHAパッド」は、研磨剤スラリーを使わずに短時間でSiCを加工できる。従来の加工では、産業廃棄物となる研磨剤スラリーを多く使用していた。同製品は細かな網目状の特殊樹脂に研磨剤が内包された独自構造。高能率加工と高品位を実現したほか、研磨剤スラリーを使わないことで環境負荷低減にも貢献する。
各社は顧客ニーズや社会課題に応えた製品の開発、販売に取り組んでおり、今後も新製品の提案が期待される。
精密研削セミナー 8月28日/日刊工業新聞社名古屋支社
日刊工業新聞社は8月28日に、セミナー「CBN・ダイヤモンドホイールを用いた精密研削の基礎と応用」を開催する。会場は名古屋市東区の日刊工業新聞社名古屋支社。時間は10時から17時まで。講師は基盤加工技術研究所代表で、職業能力開発総合大学校名誉教授の海野邦昭氏。
cBNホイールやダイヤモンドホイールを上手に使うためには、研削加工の基礎的な理論や知識を習得し、その上で実作業を行うことが大切だ。
cBNホイールを用いた焼き入れ鋼材(延性材料)の研削と、ダイヤモンドホイールを用いたセラミックスやガラスなどの硬脆材料の精密研削では、基礎的な考え方が異なる。これら難加工材を上手に研削するためには、これらの基礎的な考え方を理解した上で、作業目的に適合した超砥粒ホイールを選択することが求められる。またツルーイングやドレッシング方法、研削条件などを適切に選択することもポイントとなる。
セミナーでは、cBNホイールとダイヤモンドホイールを用いた精密研削加工の基礎知識や研削作業の基本とその応用を、分かりやすく解説する。
受講費は税込み4万6200円(日本金型工業会、中部プラスチックス連合会の正会員は15%割り引き)。参加申し込みは8月27日まで受け付ける。
詳細・申し込みはこちらから(https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/7291)