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創業しやすい街へ、越谷市
越谷市は埼玉県南東部に位置し、古くは日光街道第三の宿場町として、 市制施行後は首都圏のベッドタウンとして栄えてきた。レイクタウンエリアには日本最大の商業施設があり、市外から多くの買い物客が訪れる。近年、さらなる経済成長や地域活性化に向け、起業家支援や産業振興に向けた施策を充実させている。福田晃市長に現況と展望を聞いた。
企業PRの新事業を開始
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福田 晃 越谷市長
―物価高騰や円安が中小企業に影響を与えています。市内中小企業の経営環境をどう見ていますか。
「エネルギー価格の高騰や円安による生活物資・原料価格の上昇が経済活動に影響を及ぼし、市内中小企業の経営環境は厳しい。経営・創業相談窓口で中小企業診断士によ る相談を実施する『ビジネスサポートセンターこしがや』の相談件数は、2023年度 に前年度比100件増の777件となった。具体的には『財務・資金』に関する相談の増加が顕著だ。一方『計画策定』や『販路開拓』、『新規事業・開発』の相談も増加していることから、苦しい中でも状況に適応し、前向きに取り組もうとする企業も増えている」
―中小企業振興に向けての取り組みは。
「『越谷市中小企業振興計画』に基づき、基本理念の『地域の経済と市民の暮らしの将来を共につくる』をベースに進めている。中小企業振興の5つの目標である、『創業しやすいまち』、『継ぎやすいまち』、『働きやすいまち』、『中小企業が元気なまち』、『未来につながるまち』の実現に向け、創業に係る初期費用の一部を助成する創業者支援補助金や、新たな取り組みに係る経費の一部を助成するビジネスパワーアップ補助金は毎年度制度の充実を図っている。また、社会ニーズに合わせたDX推進セミナーの実施や新規事業の検 討・実施にも取り組んでいる」
―企業PRに向けた新事業を始めました。
「優れた技術・製品・サービスや先進的なビジネスモデルを提供する企業や、地域課題や社会課題の解決に取り組む企業を、『未来への挑戦企業』として特設サイトで紹介している。企業の認知度向上や若手人材の確保などにつなげたい。23年度は製造業を中心に11者を掲載、24年度には20者を掲載予定だ。おおよそ5年程度で100者を紹介した い。今後は市内の学校と連携して事業を進めるほか、イベントでの周知活動も実施する」
―創業支援の取り組みは。
「越谷市内での創業希望者は増加傾向で、『ビジネスサポートセンターこしがや』の創業相談件数や、『創業者支援補助金』の申請件数も増えている。特に女性の創業支援に力を入れており、創業に興味がある人や創業している人が交流する『女性創業サロン』、好きなことを事業として形にすることを目的とした 『越谷ウーマンズアントレプレナースクール』を新設した。創業による新たな価値とサービスの提供は地域の経済成長につながるため、今後も創業希望者が挑戦しやすい環境を整備する」
―イオンモールと連携し、ショッピングモール『イオンレイクタウン』隣地にある河川の利活用を進行中です。
「レイクタウンの大相模調節池で取り組む『水辺deベンチャーチャレンジ』は、河 川の民間活用を通じ地域活性化を推進する事業だ。全体のオープンは25年度を目標と し、水辺のカフェや地域交流の拠点となる施設の整備、水上アクティビティの充実など を計画している。24年度に整備された桟橋では、民間企業がカヤックやSUPのレンタ ル事業を先行実施した。今後も民間視点でのアイデアを取り入れ、越谷市の魅力の掘り 起こしや発信につなげたい」
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越谷市は関東で最大級のイチゴ観光農園を有するなど、農産物の生産も盛んだ
―越谷市はフルーツの生産も盛んです。
「関東で最大級のイチゴ観光農園を有している。都心から半径25キロメートル圏内に位置する地理的優位性を生かし、観光客の呼び込みにつなげている。また、市農業技術センターで試験栽培中の『越谷スカイメロン』の特産品化にも力を注いでいる。網目が細かくとても甘いのが特徴だ。越谷スカイメロンの知名度向上・ 販売促進と並行して、3本目 の柱となるフルーツの栽培も検討している」
―4月に『ふるさと納税推進室』を立ち上げました。
「現在、返礼品の充実に力を入れている。市内事業者を職員が訪問し、返礼品の登録 について提案するほか、事業者説明会を定期的に開催しており、地域産業の魅力を掘り起こすきっかけにもなっている。今後も事業者の新規開拓を強化しながら、返礼品の開発支援にも取り組み、返礼品の充実を図りたい。さらに市のPRイベントなど、機を捉えた発信を行い、ふるさと納税に関する事業を推進していく」
メッセージ/ 井橋 吉一 越谷商工会議所 会頭
越谷商工会議所は、前身の越谷市商工会から2016年4月に組織移行をし、本年度で9年目を迎えることが出来ました。これもひとえに関係各位のご理解、ご協力のたまものと厚く感謝申し上げます。
さて、3年超にわたり社会経済全体に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルスも収束に向かう今日、停滞していた個人消費や企業の生産活動の回復など社会経済活動が本格的に動き出しました。しかしながら、エネルギー・原材料価格や物流コストの高騰、企業の 人材不足など我が国経済を取り巻く環境は先行き不透明感を増しています。とりわけ地域産業を支える中小・小規模事業者はより厳しい状況に置かれております。
このような状況の中、越谷商工会議所は第2期中期ビジョン(21年〜25年) 「『今』に応え、新たなつながりを創出する商工会議所」を掲げ、会員企業の活力強化、地域経済の活性化、組織力強化を推進すべく、さまざまな事業を行っています。本年度は、環境変化に対応する経営力強化や事業計画書策定を支援するため、中小企業診断士等専門家と経営指導員が連携し、課題の解決に取り組むビジネスコーディネート事業を積極的に行っているところです。
また、企業の人材定着や育成を図るための階層別等セミナーの開催やデジタル化社会の進展に伴う小規模事業者へのDX推進事業を支援するなど市内企業の持続的発展に寄与する事業にも取り組んでいます。
越谷商工会議所は、「変化するニーズへ対応し【6000会員とともに】商工会議所事業による活力ある地域社会の構築」を目指すとともに地域総合経済団体としての役割を果たしてまいります。
地域の有力企業
ポラスグループ
創業55周年を迎えたポラスグループは地域密着型経営を理念に掲げ、埼玉県、千葉県、東京都を中心に住まいに関する様々なサービスを提供しています。基幹事業の新築一戸建てでは、住民のコミュニティ形成や子育てに適した環境づくり、暮らしやすさをトータルデザインした街づくりを行い、2024年オリコン顧客満足度ランキングでは6年連続総合1位を獲得しました。「南越谷阿波踊り」を立ち上げより全面支援、「油長内蔵」の再生や古民家複合施設「はかり屋」の登録有形文化財への登録など、越谷市で魅力ある街づくりを行っています。
山元
山元は1965(昭40)年の創業以来、薄物や小物の金属プレス加工と金型製作を行っています。自社開発製品のメタルドーム(金属ドーム接点)は、スマートフォンやゲーム機、OA機器、自動車、産業機械のボタンスイッチ部品として使用され、世界的なメタルドームメーカーとして活躍しています。
国内では本社の越谷工場、静岡県の川根工場、海外はタイのアユタヤ工場、中国の広州工場、肇慶工場の5拠点で生産。越谷市からグローバルに展開し、高品質製品を提供しています。
髙元建設
髙元建設は1902(明35)年創業の埼玉県東地域を地盤とする総合建設業者です。長年にわたって培われた高度な技術と信用で、これまで多くの建築物を手掛け、「私たちは、すべての人に思いやりをもって、安心で幸せな夢空間をつくっています」という企業理念のもと、輝かしい未来へつながる街づくりに貢献しています。
また、国際貢献として「埼玉ラオス友好協会」を通じてラオス国の発展に寄与し、同国との友好関係を深めています。
高橋スプリング
高橋スプリングは1949(昭24)年に設立し、精密コイルばねなど高品質の自動車部品を製造しています。本社・越谷工場のほか、海外ではタイとインドネシアに生産拠点を持ち、日本や東南アジア、中国、ヨーロッパ・米国などに向けて製品を輸出しています。
全ての拠点でISO9001とISO14001を取得しており、09年に埼玉県から「彩の国工場」の認定を受けました。21年には「埼玉県環境SDGs取組宣言企業」にも登録し、環境に配慮した高品質で安定した製品の提供を追求しています。
大森機械工業
大森機械工業は、食品や日用品、医薬品向けの自動包装機械や包装システムラインの製造・設計・販売を行っている企業です。1948(昭23)年の創業以来、お客様のニーズに応じた技術とアイデアをもって開発に取り組み続けています。
脱プラスチック問題への取り組みとして紙フィルムを取り入れるユーザーが増えており、そのようなニーズにお応えする包装機の提案をし、環境に配慮した企業活動を行っています。
今後は中国、ヨーロッパ、北米、インド、タイの海外拠点を 生かし、包装分野でシェア拡大を目指します。