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千葉の経営者に聞く2024
挑戦する千葉のリーダーズ/千葉のトップが未来を拓く
変化を求め、常に高みを目指す
【ガラスリソーシング 社長 伊藤 孝展氏】
―2023年11月に社長に就任したばかりです。
「父の伊藤憲一会長が1998年に創業した当時、私は高校1年生だったが、すでに父の後を継ぐつもりだった。そのため戸惑いや驚きはなかった。社員も分かっていたので、動揺などはなく、スムーズに移行できた」
―ガラスリソーシングに入社後、率先して多くの業務を経験しました。
「主力はガラスのリサイクル事業だが、現場や出荷、事務など、ほとんど全ての業務を経験した。今でも大抵の業務はできる。その時々で大変な業務を選び、負担を減らすように取り組んだ。それは社員に業務上の相談をされても、分からなかったらトップとは言えないからだ。相談に応えられないトップに存在意義はない」
―目標は。
「2024年3月期の売上高は単体で34億円程度の見通しだが、25年3月期に50億円を目指す。70億円、100億円と高みを目指していく。常に高みを目指さないと先がない。また100億円を目指すことで、100億円にふさわしい人材が集まってくる。全社一丸となり、やりがいのある仕事に楽しく取り組み、しっかりもうける」
―どの事業に力を入れていきますか。
「廃棄物リサイクルだけではなく、可能性があり、面白そうな事業については検討していこうと社員に呼びかけている。経営の柱は何本あってもよい。常に新しい柱を探し続ける。攻め続けてイーブン、つまり現状維持ができる。これからも攻めて、攻めて、攻める。当社が成長できたのは変化を恐れなかったためだ。これからも変化を求め続ける」
―24年をどのような年にしたいですか。
「チャレンジする年、そして将来のチャレンジのための布石を打つ年にする。具体的には基幹システムを全面的に刷新する。これにより社員の負担を軽減することで、休日を増やし、働き方改革につなげる。社員のおかげでここまで来られた。頑張っている社員の待遇を少しでも改善する」
【企業情報】
所在地:千葉県銚子市春日町740の1
TEL:0479・24・6651
生産現場のロボット自動化を支援
【吉野機械製作所 社長 吉野 友章氏】
―2023年に社長に就任しました。
「23年に新設したロボティクス事業部では、私がプロジェクトリーダーとなり、ロボット技術に明るい技術者ら数人と新製品開発に注力している。そのほか間接業務としては、24年はデジタル変革(DX)の本格化に向けて専門部署を設け、RPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)の導入拡大などさらなる業務効率化を目指す。このほかプロフェッショナル人材制度なども活用してさらなる成長につなげたい」
―足元の業績と今後の見通しは。
「24年1月期の売上高は約12億円を見込み、当初目標の15億円には届かなかった。新製品開発に経営資源を集中させたことが主な要因だ。25年1月期は売上高20億円を目指す。すでに住宅、電機業界向けに総額15億円の専用ラインを受注しており、先行きは明るい。現在ロボティクス事業部が開発している案件も24年度中には発表予定で、26年は海外展開も含め、大幅な売り上げ増を目指す」
―自社のプレス機とロボットを組み合わせた「完全自動曲げシステム」を開発しています。
「人口減少で熟練工をはじめとする人手不足が深刻となる中、人手に代わるロボットを用いたシステムを提供しようというのがコンセプトだ。現在開発中のシステムは、3次元(3D)図面データを基にコンピューター支援製造(CAM)を用いて、曲げ順やロボットの軌道を自動生成し、デジタルツインで高精度にシミュレーションした上で加工する。世界的にも新規性が高いと自負している」
―この新製品を中心に海外展開を強化しています。
「23年に『MF―TOKYO』で初めて試作機を展示したところ、海外から多くの引き合いがあった。自動化の需要は海外の方が高いと見ている。10月に独ハノーバーで開かれる板金加工の展示会『ユーロブレッヒ』に新製品を出展する。まずは欧州、ASEAN(東南アジア諸国連合)、次は北米にも展開したい。将来は海外比率を50%超に高めたい」
【企業情報】
所在地:千葉市緑区大野台1の5の18
TEL:043・312・5900
国内の電子部品業界でシェア拡大へ
【アシザワ・ファインテック 社長 加藤 厚宏氏】
―ビーズミル(微粉砕・分散機)を手がけています。
「原料とビーズを撹拌し、ビーズが衝突する力で原料を粉砕する。使用するビーズが小さいほど原料を細かくできる。主力の湿式ビーズミルは1マイクロメートルの粒子を数ナノメートルまで粉砕するなどごく細かいものをターゲットとし、自動車塗料や化粧品、インクジェットプリンター用インク、電子部品などの生産に用いられる。湿式では国内トップシェアだと見ている。乾燥工程が不要な乾式の需要も高まっており、約10年前から扱っている」
―足元の業績は。
「2022年3月期には売上高がコロナ禍前の水準まで回復した。足元でも受注は順調に推移しているが、大型インバーターの調達難で納品が遅れ、受注残が通常の倍近くまで積み上がっている状況だ」
―23年に社長に就任しました。どのようなことに注力しますか。
「新卒採用が難しい状況で、より働きやすさに配慮する必要性を感じている。基本給を引き上げるベースアップ(ベア)を約20年ぶりに実施し、年間休日も合わせて増やした。このほか、デジタル変革(DX)を進め、顧客データや生産状況を一元管理して効率化したい」
―需要拡大が期待される分野は。
「ここ数年で電気自動車(EV)用電池向けが伸びている。24年の受注は横ばいと見られるが、長期的には需要が拡大する分野だ。特に中国や韓国、台湾市場は1社当たりの受注量が多い反面、地政学的リスクもある。海外からの受注にも対応するが、国内の電子部品業界でメーンの粉砕機として採用されるよう取り組む」
―研究開発もカギになります。
「23年に元々2カ所に分かれていた微粒子技術研究所(栃木県小山市)を集約、拡大し、実験スペースを倍増させた。同研究所では主に粉砕・分散および周辺技術の基礎研究を行っている。本社内には開発課もあり、研究開発体制の集約を含めたあり方を検討する」
【企業情報】
所在地:千葉県習志野市茜浜1の4の2
TEL:047・453・8111
マルチタスクで働き方を柔軟に
【千葉共同サイロ 社長 中村 好克氏】
―トップに就任して半年間を過ぎました。
「コロナ禍だからできなかったことや、やらなかったことが多くあり、それらを元に戻したのが2023年だった。特にコミュニケーションの不足と毀損は想像以上で、これからも私自らが率先して改善していかなければいけない。取引先であるメーカーや商社などとも率直に意見を言い合える環境をつくる」
―人材が強みになっています。
「当社の過去の経営者は人材教育に資金と労力を惜しみなく使ってきており、これが大きな財産となっている。当社が手がける小麦など穀物の保管・出荷業務は微妙なノウハウの蓄積で成り立っている。これからも優秀な人材を確保し、伸ばしていく方針に変わりはない」
―どのような部分を変革していきますか。
「インフレなど社会環境が大きく変化しているにもかかわらず、従来の延長線上で進めている業務が多い。もっと価格や取引先、市場に敏感になり、ビジネスモデルを若干、変える必要がある。ただ、大きく変えると無理が生じ、変えないと刺激がない。経営者としてバランス感覚が求められる」
―24年4月から新しい人事制度を導入します。
「現場でトラブルがあった場合、迅速に対応できるなど、勤続年数に比例して身に付くノウハウと知見などを重視してきたが、コミュニケーションとマネジメント能力を評価により反映させる。若手を中心にリーダー層の育成を進め、将来を見据えた新しい枠組みの基盤をつくる」
―組織改革にも着手する計画です。
「組織を大きく二つに分け、それぞれの中でマルチタスクができる人材を育成していく。いつでも業務をカバーし合えるようにすることで、働き方に柔軟性を持たせ、新しい業務に挑戦できる体制を整える。さらに人工知能(AI)やデジタル変革(DX)を導入して効率性もアップする。24年は五輪イヤーだ。『より速く、より高く、より美しく』を合言葉に、チバキョウを素晴らしい会社にしたい」
【企業情報】
所在地:千葉市美浜区新港16
TEL:043・241・1231
ロールの面品質で世界一に
【小出ロール鐵工所 社長 小出 明治氏】
―業績がコロナ禍前に戻りつつあります。
「受注が回復しており、圧延ロールやシャフトを中心に鉄鋼や製紙、エネルギー業界からバランスよく受注できている。その中で2022年5月に導入した唐津プレシジョン(東京都港区)と共同開発したロール研削盤の稼働率が、23年夏からアップしている。そのため製造原価が下がる一方で、品質の向上が実現できた。このようなシナジーで売上高と利益は前年同期比でプラスが続いている。24年3月期は増収増益の見通しだ」
―人手不足が課題です。
「受注が減ったコロナ禍の間は対応できたが、現在は受注が増えただけではなく、納期が短くなった。そのためオペレーターが不足しているのが現状だ。だが、20-30代の若手が中心となって、高度な研削・切削加工の自動化を進めるため、プログラムを組むなどさまざまな工夫をしている。その結果、1人で複数台の機械を操作したり、省人化に結び付けたりした。人手不足というのは簡単だが、知恵を絞らなければいけない」
―強みを維持するには高度な技能の承継が必要です。
「70代の技能者が持つ高度な技能を20-30代に承継する〝教科書〟を制作する。技能を数値化したり、動画にしたりすることで、承継を可能にし、若手ならではの発想で、〝小出ロールクオリティー〟を確立したい。全従業員にアンケートを実施し、課題を抽出した上で、課題の解決に取り組み、モノづくり力をアップし、ロールの面品質で世界一になる。物価が高騰する中、取引先から値上げを認められており、これまで以上に高い品質の製品を短納期で届ける」
―24年をどのような年にしたいですか。
「私は辰(たつ)年で、当社も9月には創業110周年を迎える。ロール業界のトップを走り、千葉県で日本のモノづくりを支える企業として、すぐに社名が上がる会社にしたい。そしてエッジの利いた会社に変革すれば、若手が共感して入社してくれるはずだ」
【企業情報】
所在地:千葉県習志野市東習志野6の21の8
TEL:047・475・3811
軟包装でプレゼンス向上
【ミヤコシ 社長 宮腰 亨氏】
―水性インクジェットプリンターの受注が堅調です。
「軟包装市場へのソリューションの提供を拡充する取り組みを進めてきている。その中で我々以外にも複数のメーカーが、水性インクジェットプリンターの開発を進めてきた。だが、我々はすでに導入実績があり、さらに、これらの実績が評価され、複数の受注が得られた。水性インクジェットプリンターを水平展開する上で、2023年はプラスになることが多かった」
―水性インクジェットプリンターのニーズがグローバルに高まっています。
「極めて安全性の高い原材料から成る水性インクを使用するため、オペレーターの健康に害を与える恐れがなく、職場環境の改善、人手不足の緩和につながる。またグラビア印刷と異なり、版製作が不要なことから、印刷物の少量多品種化が進む中、小ロット印刷が可能になる。そのため印刷方法はグラビア印刷から水性インクジェットプリンターにシフトすると見ている」
―24年には軟包装向けの水性フレキソ印刷機を投入します。
「現在、開発の最終段階に入っている。想定よりも技術的なハードルが高いが、今後、外部の知見も活用し、24年夏前には公開したい。水性インクジェットプリンターについては印刷速度を毎分50メートルから80メートルにアップして同時に公開する」
―海外展開も加速します。
「24年春から水性IJPの海外展開を始める。すでに米国や欧州、中国、台湾などグローバルに引き合いがある。メンテナンスやサポートに対応できる現地のパートナーと手を組んで進める。人工知能(AI)を使った印刷操作支援システムも国内だけではなく、海外から受注している」
―24年をどのような年にしたいですか。
「軟包装市場で我々のプレゼンスを高める勝負の年になる。これまでビジネスフォーム印刷からパッケージの軟包装材やラベル印刷にも業態拡大を進めてきたが、仕上げの年にする」
【企業情報】
所在地:千葉県習志野市津田沼1の13の5
TEL:047・493・3854
タイム・パフォーマンス向上を
【アイ・メデックス 社長 市田 誠氏】
―2023年は新型コロナの法的な位置付けが5類に変更され、経済活動が本格化しました。
「コロナ禍の3年間に新入社員が入社したが、密を避けるため、研修や会議の時間を短縮したり、オンラインで実施したりした。合理的な面もあるが、指導する側も従来よりもしっかり教えられなかったという思いがあるなどコミュニケーションが不足していた。そのため24年は四半期に一度、研修を行い、社員のさらなるスキルアップを図る」
―研修の内容は。
「自分たちの強み、足りないことを検証してもらい、自分たちに必要な研修を自分たちで考えてもらう。このようにすれば研修に夢中になれるし、成果が出れば感動し、これまでよりも何倍ものパフォーマンスを発揮できる。そして単なるスピードアップではなく、二度と戻らない時間を大切にし、企業としてタイム・パフォーマンスを向上させる」
―千葉大学や名古屋大学などとの産学連携が進んでいます。
「着実に前進しており、ようやく道半ばまでたどり着いた。変化し続ける社会に対応するため、いち早く情報をキャッチし、社会実装する。24年は生体電極(心電や筋電、脳波など人体の電気信号を計測する電極)に加え、介護関連など新しい事業も立ち上げていく。医療業界の課題に対し、トータルでソリューションを提供できる企業になる」
―24年をどのような年にしますか。
「従来は新しい事業の芽を育てるため、さまざまなインプットを行ってきたが、24年はアウトプットにも力を入れ、売上高や商品の市場投入など結果を出す年にする。23年はドイツの医療機器メーカーからトレーニング用の生体電極を直接受注できた。これを契機に海外事業も本格化し、直接受注した商品などの海外売上高比率を、23年5月期の数%から28年5月期には30%にアップする。これらの目標をタイム・パフォーマンスを向上させて実現する」
【企業情報】
所在地:千葉市花見川区宇那谷町1504の6
TEL:043・257・7411
ブランディングに注力 世界にファン増やす
【ナルビー 社長 古川 昇氏】
―自社製品として、スクレーパーやナイフなどの手動工具を展開しています。
「スクレーパーでは国内のプロ業者マーケットで8割超のシェアを持つ。窓ガラス掃除の仕上げとして表面の汚れを削り落とす製品で、ビルメンテナンス業界などで使用される。現場では製品名よりブランド名の『ナルビー』の方が浸透しているくらい知られた存在だ。プレス加工、熱処理、刃付研磨まで四街道工場(千葉県四街道市)で一貫生産して品質を担保している」
―小型刃物の製造ノウハウを生かし、工業用刃物も手がけています。
「例えば自動車業界や繊維業界、食品加工業界などで使用されている。工業用途では大型の刃物が利用されることが多かったが、加工対象物が小型・精密化し、当社が扱っているような小型刃物の需要が増えている」
―業界動向と、自社の立ち位置をどう分析していますか。
「創業時にカミソリ製造を行っていた経緯から、現在は扱っていないものの安全カミソリの業界団体に所属している。この業界で言えば、国内に工場を持つのは全国でも7―8社程度で競合は少ない。ただ、世界的にカミソリやカッターなどの小型刃物業界は飽和状態にあり、国内でも(需要が)減少に転じている。安価な中国製品と差別化し、生き残るには市場へのアピール力が不可欠だ」
―今後どのように成長を目指しますか。
「売上高や利益の軸になるのは自社ブランドだ。経営戦略として『ナルビー』製品のブランディングに取り組んでいる。刃物のことはナルビーに、刃物を買うならナルビーでと思ってもらい、世界中でナルビーのファンを増やしたい。社内でも完成品メーカーであることを意識し、社員にやりがいを持って働いてもらう」
「具体的には、18年に商品開発室を設立して製品開発を強化している。現在、自社製品の売上比率は約3割だが、将来的に半分まで引き上げたい。海外展開にも注力する。海外の展示会への出展や、海外向けの製品開発により、海外比率を10年以内に50%まで引き上げたい」
【企業情報】
所在地:千葉県市川市富浜2の12の18
TEL:047・357・6208
処理能力アップで生産性向上
【千葉オイレッシュ 社長 野村 拓也氏】
―廃油のリサイクルに追い風が吹いています。
「社会を挙げて国連の持続可能な開発目標(SDGs)や、カーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)の達成に向けて取り組んでいるが、リサイクル燃料を活用すれば、二酸化炭素(CO2)の削減につながる。また円安などで燃料コストが上昇しており、低コストのリサイクル燃料を使用することで、物価高対策にもなる。今後も廃油をリサイクルした燃料の需要は増えると見ている」
―供給面が課題になります。
「現在、千葉県を中心に神奈川・茨城・埼玉・静岡県、東北地域などの取引先から廃油を受け入れている。新型コロナの法的な位置付けが5類に変更されたことから、生産活動が活発化し、受入量もコロナ禍前に戻りつつあり、施設の処理能力もアップした。ただ、受入量をさらに増やそうとなると、自社の努力だけでは限界がある。そのため回収面や納品など取引先に協力をお願いして廃油の回収ネットワークや需要に対して十分に対応できる体制を構築していく」
―さまざまなコストアップにどのように対応していきますか。
「物流面では自動車運転業務に対する時間外労働の上限規制に伴う『2024年問題』もある。取引先と情報共有しながら進めていく。また人手不足で新たな人材を採用するのも難しい時代となってきている。そのため従業員の負担を軽減するなど働き方改革を進め、人員を増やさずに生産性をアップできるような対策も必要」
―24年をどのような年にしたいですか。
「今後も経営は物価上昇の影響を受け続けるだろう。その中で人材や原材料、物流など、さまざまな面のバランスをとりながら経営に取り組む必要がある。より働きやすく、生産性の高い環境と、より付加価値の高い商品をつくり、社会に貢献する。現状のリサイクル比率は86%だが、100%に近づけていく。将来は廃油以外の再資源化にも挑戦したい」
【企業情報】
所在地:千葉県君津市笹1249の3
TEL:0439・39・3033
1システムで複数EVに充電
【船橋総行 社長 二宮 正氏】
―電気自動車(EV)ロータリーシステムを手がけています。
「独自開発の制御盤とタイマーで電力供給対象を切り替え、充電する時間帯を分け、1台の充電器でより多くのEVを充電できるようにする仕組みだ。全てのEVに同時に電力を供給する場合に比べ、契約電力を約3分の1に抑えられ、電力コストの低減につながる。EV充電器ともEV充電サービスとも異なり、競合しない。関連特許を5件取得している。小規模需要に対応するため、同システムと同じ原理でEV3台に接続できる装置『EVロータリーMINI』も展開している」
「中小企業でありながら、経済産業省主導で設立された官民連携組織『電動車活用社会推進協議会』にメンバーの一社として参画している。EV充電インフラ整備の取り組みが評価され、2022年度に環境省の『気候変動アクション環境大臣表彰』を受賞した」
―現在の販売状況と今後の計画は。
「EVロータリーシステムは21年に発売し、自治体やマンションなどに累計で約320台分のシステムを納入した。23年は(国内で)EVの普及が進まず、同システムも当初目標より売れなかった」
「EVが売れないと拡販が難しく悩ましいが、自治体で公用車をEVに切り替える動きがあり、期待している。このほかホテルなどにも販売したい。25年度に1000台分の販売を目指す」
―今後EVロータリーシステム事業をどう育てていきますか。
「現在は千葉県内への販売が中心だが、全国展開に向けて各都道府県で1社ずつ販売代理店を開拓したい。(EVの拡販を目指す)完成車メーカーの協力も得て拡販につなげる」
「既存事業である事務機器やオフィス家具の卸販売とは事業内容が大きく異なる。EVロータリーシステムの売り上げが4億―5億円程度まで拡大した段階で別会社を設立し、業務を移管することを検討している」
【企業情報】
所在地:千葉県船橋市高瀬町62の2
TEL:047・434・1551
ボルボの新車登録台数で国内最多を達成
【東邦ホールディングス 社長 秋葉 佑氏】
―ボルボの国内正規ディーラーとして新車、中古車販売・整備を手がけています。
「2023年は輸入車全体の新規登録台数が前年を上回った一方、ボルボ車は前年を下回る実績となった。当社の23年の新規登録台数は前年比約10%減の991台と前年を割り込んだが、ボルボ全体で比較すると減少幅は少なく、6年ぶりにボルボの新車登録台数で日本一となった」
「新車販売が苦しんだ反面、中古車の販売は大きく伸び、収益面を支えた。23年は業界全体でコロナ禍以降の『中古車バブル』が正常化したが、当社はある程度販売台数を伸ばすことができた」
―5月に自社最大のボルボ中古車専門店を千葉県木更津市に開設します。
「神奈川県にも中古車専門店を設けているが、今回開設するこの店舗は従来あまりカバーできていなかった県南地域に位置し、約50台のボルボ中古車を展示する。顧客にとっては選ぶ楽しみが生まれ、当社としては中古車セールスのみが集まって仕事をすることで効率が上がり、収益性を確保できる。隣地では他社がアウディの中古車販売店を営業しており、その相乗効果も見込める」
―24年の見通しは。
「新車販売を回復させなければならないが、楽観的ではない。ボルボの新型車は電気自動車(EV)のみで、充電インフラや航続距離に不安を感じる顧客も多いだろう。23年11月に発売した新型車も従来通り新型というだけで売れるかは疑問だ。ただ、使い勝手は悪くなく、価格も500万円台と比較的安価。顧客の生活様式や使用状況を聞き取り、疑問や不安を解消できれば拡販の目はある。現時点では新規出店は考えていないが、既存店舗の立地は随時見直す」
―今後の事業展開は。
「19年からアルファロメオなどのイタリア車やイタリアメーカーの自転車、アウトドアウエアを販売している。車が軸であることは変わらないが、既存顧客に提案できるブランド力や商品力のある製品があれば扱いたい」
【企業情報】
所在地:千葉市美浜区幕張西2の3の1
TEL:043・272・1192
ファンづくりを進める年に
【Eプラン 社長 松澤 民男氏】
―社会を挙げて国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組む中で追い風が吹いています。
「強アルカリイオン電解水『スーパーアルカリイオン水』(SAIW)の成分は99・83%の純水と0・17%のカリウムだが、強力な洗浄・除菌・消臭・防錆効果がある。生成過程でも酸性水と塩素ガスなどが発生しない。製造業向けには水道水から生成したSAIWで金属のワーク(加工対象物)を洗浄、汚濁排水を再生して洗浄水に活用するゼロエミッション洗浄サークルを提供している」
―受注状況は。
「半導体不足のため、2022年に値上げしたが、その前の駆け込み需要の反動で、23年前半は受注が伸び悩んだ。だが、大手企業へのOEM(相手先ブランド)供給が決まった。全国に拠点があるメーカーで、各地に優秀な営業がいる。我々の代わりに販売してもらえる。業界団体にもアプローチし、ファンづくりを進める。使ってもらえればファンになってもらえる自信はある」
―23年5月には家庭用のSAIW生成機を発売しました。
「これまで金属から始め、食品やビルメンテナンス、介護、ペット用に生成機を展開してきた。今後、農業用に供給し、農地と農作物にSAIWを散布することで、土壌改良や病害虫駆除、無農薬栽培を実現したい。すでに岐阜大学と実証実験をスタートしており、24年3月に結果を発表し、4月から新たな実験を始める。畜産用にも展開して消臭や品質向上などに結び付けたい。SAIWを普及させるため、今後も用途開発を進める」
―海外事業も堅調です。
「中国企業から富裕層向けに100台以上の家庭用生成機を受注した。環境意識が高い欧州でも商社を経由してOEM供給を始めている。特に中国は大きな市場で期待している。これまで多くの種をまいてきたが、これらの芽をさらに育て、24年は結果を出せる年にしたい」
【企業情報】
所在地:千葉県船橋市高瀬町31の6
TEL:047・404・9240