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販売商社、レンタル会社の声
メーカーとユーザーの架け橋
販売商社はメーカーとユーザーの架け橋として非常に大切なポジションにある。オシロスコープなど電気測定器を中心に取り扱う商社もまた、ユーザーのモノづくり要望に応えている。レンタル会社においても最新鋭のオシロなどを貸し出し、研究・開発から生産、保守・メンテナンスまでユーザーの事業活動を支えている。新型コロナウイルス感染症が5類になったことで、展示会でも積極的な訴求が行われている。
【販売商社】半導体装置・EV向け堅調
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日本電計は「人とクルマのテクノロジー展2023」で車載関連の測定を提案した -
九州計測器は今年50周年を迎えた(右から二人目、岩倉 弘隆九州計測器社長)
日本電計の2023年度上期のオシロ国内市場は前年同期に対し約6ポイント成長した。半導体製造装置の組み込み向けの継続した堅調な需要や、日本のモノづくりを支える産業機器メーカー向けにも伸びを見せた。特に教育機関やパワーデバイス系のユーザーでハイエンドオシロスコープの需要が目立った。
主要ユーザーである自動車産業における世界的な炭素循環社会の流れを受け、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などの次世代自動車市場に向けて広帯域、多チャンネルオシロの需要に期待。得意とするソリューションビジネスを展開する。
東日本電子計測(仙台市泉区)は生産ライン用途で周波数帯域100メガヘルツ2チャンネルクラスがけん引し、研究開発用途では高周波で解析機能を持つオシロに動きが出た。最近の動きでは補助金でロボットの研究、開発を行っている自治体があり、デジタル信号用でMSOの提案を進めている。
東洋計測器はエネルギー関連やEV関連で、オシロ需要が伸び23年度の売上高を底上げた。その中で、ミドルクラスへのシフトが進んだ。全体として4チャンネルオシロの要望が多くなっている。下期は、EVや通信を重点市場に置き、設計・製造分野に薄型オシロで新規需要を取り込む。
穂高電子(横浜市港北区)の23年度オシロの国内市場は、エネルギーや通信、車載関連市場で先端技術への引き合いは活発化していると言う。下期に向け、オシロ単体ではなく、高機能プローブやアプリケーションを組み合わせた提案営業を積極的に行う。
遠藤科学(静岡市駿河区)の23年度上期は、好調に推移した。半導体装置関係は25年以降を視野に入れた引き合いが復活した。23年度下期は輸送機器の自動化開発などハイエンドクラスのオシロに絞った案件獲得の活動に注力する。
マックシステムズ(名古屋市中区)は、SiCやGaNなどのパワー半導体の重要が車載を中心に需要が継続している。EV向けの電動駆動モジュール「eAxle(イーアクスル)」需要が大きく伸びると予想し、高周波・高精度・高分解能・多チャンネル需要を見込んでいる。
国華電機(大阪市北区)の23年度上期は、車載関連のパワー解析用で多チャンネルモデル、電子部品の測定用に500メガヘルツ以下のモデルが堅調であった。下期は大学や公的機関、企業の研究部門に向けて、ハイエンドモデルの拡販に重点を置き、次世代通信や量子技術分野に期待する。
九州計測器(福岡市博多区)は、今年で50周年を迎えた。こうした中、23年度上期はパワー半導体の動特性試験用でオシロの引き合いが増加。SiCやGaNデバイスの測定が多くなり、必要とされる周波数帯域が1ギガヘルツ以上を必要とする傾向にある。炭素循環社会によりインバーターやパワー半導体市場は継続して成長を予想する。
【レンタル会社】次世代通信・車載用が拡大
オリックス・レンテック(東京都品川区)の23年度上期は、半導体市場で高帯域、高解像度のオシロ需要があり、売り上げをけん引。車載用パワー半導体の需要の増加により8チャンネルオシロのレンタル需要が増加している。同社は各種オプションソフトウエアを搭載した多様性のあるオシロを用意し、顧客からの要求にタイムリーに対応する。下期は高速シリアル通信やEV市場に対して販路を広げていく。
SMFLレンタル(東京都千代田区)は、NTTの次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」や次世代高速通信市場で、高速・広帯域オシロがけん引した。パワエレ関連では多チャンネルオシロの需要が増加した。今後は次世代光通信の開発評価向けにオシロ需要の拡大を期待。光電融合デバイスやシリコンフォトニクスなどの領域に向けて、広帯域オシロ、BERT、任意信号発生器(AWG)などを組み合わせた評価システムを提案し短期使用ニーズに応える。
横河レンタ・リース(東京都新宿区)のオシロの23年度国内市場は堅調に推移。特に半導体や高周波デバイスの評価用途での広帯域オシロの需要が高い。必要となる帯域が拡大傾向であり、オプションやアクセサリーなどを含めて必要なモノを必要な期間で利用できるレンタルでの強みを生かした。修理・校正を含む運用管理工数の削減効果など利用価値の高いレンタルサービスを提供していく。
上海 REPORT/パワエレ進化―加速
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岩崎通信機はパワエレ測定の課題解決を示し、来場者はオシロを操作して理解を高めた -
パワエレの新たな可能性を感じる「PCIMーAsia2023」
パワーエレクトロニクス専門技術見本市「PCIM―Asia2023」は、2023年8月29日から31日までの3日間、中国上海市の上海新国際博覧センター(SNIEC)で開催された。181社・団体が出展し1万5438人が来場した。欧米、日本、中国などから集まったパワエレ業界のトッププレーヤーが、最新技術や業界の最前線情報を提供し、新たなビジネス創出を模索した。
中国国内においてもパワー半導体およびパワー受動部品の性能向上、効率化、集積化が急速に進化している。これにより電子機器の小型化と軽量化が一層進展し、パワエレ分野で革命的な進歩が実現している。
来場者は幅広い分野にわたる技術に関する討議を行い、将来の技術に向けたビジョンを共有した。
国際的企業も多数出展。三菱電機や富士電機、ローム、独インフィニオンテクノロジーズ、独セミクロンダンフォスなどは、大規模なブースを構えて最新の技術と製品を披露した。パワエレ分野でのリーダーシップを維持し、常に革新的なソリューションを提供している。
こうした中、オシロスコープを使用したパワエレの測定に関して、大きく二つの課題がある。
一つはプロービングによる波形ひずみの低減を通じて、より正確な損失測定を実現するための方法の確立。もう一つは評価工数の削減に向けて、大量の損失測定パラメーターを瞬時に自動測定する方法の確立が求められている。
このような課題に対して、当社は解決手法を紹介した。ブースではパワー半導体の静特性試験用のカーブトレーサー、動特性試験用の高分解能オシロ「DS―8000シリーズ」、同オシロ用のスイッチング解析プラグインソフトウエア、周波数帯域1・ギガヘルツで光絶縁プローブ「FF―1500シリーズ」、同500メガヘルツ広帯域高電圧差動プローブを駆使した測定方法の提案などを行った。中国を中心に、欧米やアジアの技術者が直面する多くの課題を解決するための新たな方向性を示した。
PCIM―Asiaでは、将来のパワエレの新たな可能性の広がりと、中国の開発スピードのさらなる加速を感じとった。同時に、日本国内のパワエレ分野において経済産業省、大学研究機関、企業間で、より一層の協力体制と人材確保の重要性を強く認識した。
【リポーター】
岩崎通信機 計測ソリューション営業部 フィールドサポート担当 長浜 竜