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用途拡大への対応必須
このようなニーズに応えるべく、当社では従来のロボット用精密減速機の小型化対応に加え、超軽量ハイブリッド減速機HECYシリーズおよび超小型サイクロ減速機SCYシリーズの開発を行っている(写真2)。また、AGV・AMRの車輪駆動用として、最適なギア・サーボモーター・ドライバーの三つのキーコンポーネントで構成された「smartris(スマートリス)」を発売している(写真3)。当社の減速機技術とグループ会社である伊モータメーカーのラファートのサーボ制御技術が融合することで、安全でコンパクトなAGV・AMR用ドライブソリューションの提供を実現している。
さらにIoT(モノのインターネット)の活用により、さまざまな機械装置からのデータ収集と活用が行われ始めている。搬送装置やロボットに使われるギアモーター、減速機にとってもこの動きは例外ではなく、モーター電流値、温度、振動、騒音のほか、稼働状態を示す各種データがセンサーによって把捉(はそく)され、生産や設備の保全に活用されるようになっている。特に顕著なのは設備の状態監視に基づく故障診断、計画的メンテナンス、サービスへの活用である。重要な設備に対しては稼働停止を防ぎ、ダウンタイム、メンテナンス時間を削減するために、これらの管理・診断装置の導入が進んでいる。当社においても状態監視システム(CMS=Condition Monitoring System)を使った保全ソリューションの提供を開始している(図)。減速機メーカーとしてのノウハウを生かし、CMS機器の選定から、診断、問題解決提案までを一貫して行う。またCMS機器については、簡易診断から高精度な精密診断が可能な機器をそろえることで、目的と予算に応じた最適な提案が可能である。
今後の展望
モーターの発生動力をいかに効率よく機械装置に伝え、システム全体での消費電力を低く押さえるかは、すべての用途において減速機に求められる重要課題である。機械装置の稼働状況に応じて最適な減速機・ギアモーターの種類、サイズ、減速比、潤滑方式などを選定することが特に重要となる。
また電気自動車(EV)の急激な増加により電磁鋼板の需要が急増していることから、これまで最も多く用いられてきた誘導モーターに加え、電磁鋼板の供給に左右されることのない新たな技術や代替材料の開発がますます重要となるとともに、より広範囲で効率よく運転できるモーターの適用が進むものと考えられる。また小型領域での用途が拡大することで、この領域における減速機のバリエーションに対する要求も増加し、多種多様な小型減速機が開発、市場投入されることが予想される。
当社は「動かすを最適化して、社会・顧客の課題解決に貢献する」をミッションに変・減速機において国内トップクラスのシェアを誇ってきた。今後もすべての人が快適でより豊かに暮らせる社会の実現に向けたドライブソリューションを提供する所存である。
【執筆】
住友重機械工業 PTC事業部
商品開発本部 商品開発部
安藤 学