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島津、早大に連携ラボ
京都の分析計測機器大手、島津製作所と堀場製作所が新技術を生み出そうと、2社間に加え、大学との連携も強めている。
堀場との共同開発機導入
島津は1日、早稲田大学リサーチイノベーションセンター(東京都新宿区)に早大竹山研究室との連携ラボを開設した。同ラボは探索・同定が困難な未知の天然化合物を迅速に測定するフローを確立し、新たな医薬品や機能性食品などの創出につなげる。
微生物や植物が生み出す天然化合物の構造は特徴的で、医薬や化学、食品など幅広い分野での活用が期待される。ただ、構造が多種多様で新たな天然化合物を探索し、それが何かを突き止めることは難しい。同ラボに設けた計測機器「LCラマンシステム」や、高速液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)などで研究を進める。
このLCラマンシステムは島津と堀場が初めて共同開発した装置。島津の高速LCで混合試料から対象物を分離・抽出し、堀場のラマン分光装置で分子構造の違いを判別して未知成分を推定する。「両社のフラッグシップを掛け合わせたこのシステムにどんな活用法があるのか、さまざまなアイデアが技術者から出ている」(足立正之堀場製作所社長)とし、分析計測の新たな可能性を模索する。
一方堀場も、こうした協業を進める傍ら、昨秋に英ロンドン大学と連携協定を結び、23年内に連携講座の開設を予定する。自動車向けの次世代バッテリーや燃料電池を中心にしたエネルギー全体の研究開発と、エンジニア育成に取り組む。同大博士課程の学生が参画し、堀場英国グループ会社の技術者らとともに技術の革新に挑む。
オムロン/「Green」を提供価値の軸に―先陣切り提案、ソリューション生む
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向け、取り組みを加速するオムロン。電子部品事業では、地球に優しい脱炭素商品・プロセスなどを提供する「Green」分野を提供価値の軸に据える。
低消費電力で駆動するリレーやスイッチといったデバイス、機器の二酸化炭素(CO2)排出量削減につながる商品群、再生可能エネルギーでの生産、カーボンフットプリントを可視化した部品など、商品・生産・調達の三つの取り組みを連動させ、サプライチェーン(供給網)全体でカーボンニュートラル実現を後押しする考えだ。
「先陣を切って提案し、社会やお客さまのフィードバックから、さらに磨いていくことで早期に脱炭素化社会実現に貢献するソリューションを生み出す」とするオムロン。サプライヤー・顧客との共創を先駆けて進める。
マインドセット変革進む/堀場製作所社長 足立 正之氏
ー分析機器業界、ひいては、日本の産業界全体の課題は。
「要素技術など、世界をリードできるポテンシャルがあるのに生かせていない。特に社会実装段階での効率が悪いように感じる。アカデミアと産業界が一線を画すのではなく、貴重な技術資産や優秀人材が効率良く連携し、国を強くする方向に向かっていくべきだ。そのためにも産学官連携を進めていきたい」
ー2023年は中長期経営計画の最終年度。成果と次期計画は。
「現計画で掲げた『エネルギー・環境』『バイオ・ヘルスケア』『先端材料・半導体』の重点3分野がようやく社内外で”腹落ち”するようになってきた。例えば自動車事業から始まった燃料電池ビジネスは、今や水素発生へと領域が広がっている。既存事業の枠では線引きが難しくなってきたが『エネルギー・環境』という枠ならすんなり受け入れられる。こうしたマインドセットの変革が進んだのは成果の一つだ。重点3分野は次の計画でも軸として継続する」
ー25年にも欧州で次期排ガス規制「ユーロ7」が導入予定です。
「(環境規制で)燃焼エンジンに対する投資判断が難しくなる中、ユーロ7のような複雑で厳しい規制が出てこようとしている。排ガス測定装置も対応が必要で、顧客はジレンマを抱えている。この解決策の一つが、既設装置の改造や更新で、引き合いもあり、取り組みを進めている。改造での対応と、新規の対応装置提案でバランスを取っていく」