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大型スタートアップ誕生・育成へ
国内外のスタートアップや投資家らが集まる日本最大規模のイベント「IVS」が今夏、京都で初めて開かれた。30回目を迎えた同イベントには約1万人が参加。ピッチコンテストや参加者同士のマッチング、起業家や技術者らのトークセッションなどが催された。京都では京セラやニデックに続く世界的企業の誕生・育成が課題。IVSを起爆剤に、世界に開かれたスタートアップエコシステムへの変革を目指す。
企業創出・成長要素が集結 IVS京都、1万人参加
「この場には企業の創出、成長に必要な要素が集まっている。それをエコシステムにするため、皆さんが有機的につながっていかなければならない」。西脇隆俊京都府知事はオープニングイベントで、参加者にこう語りかけた。従来IVSは招待制で、参加者は700人前後だった。今回は京都府・市などが実行委員会として参画したほか、スタートアップに関わりたい学生や企業関係者らの参加も幅広く受け入れて一気に規模が拡大した。
IVS運営会社の島川敏明代表は「大勢と交流し、資金調達やM&A、業務提携などディールをその場で決めてもらいたい」と呼びかけた。初参加の京都中小企業経営者は「どんなイベントかまず勉強に来た」と話し、スタートアップとの協業にも意欲的で、地元の期待感も伝わってくる。
一方で今回、参加者の間口を広げたことに関して批判的な意見もある。常連参加しているスタートアップ経営者は「中にはスタートアップという名を冠しただけの有象無象も多く、『最先端のビジネステーマを真剣に学びたい人のコミュニティー』という従来の雰囲気が崩れた」とこぼす。
西脇知事はIVS誘致の理由を「あるスタートアップ経営者から『京都では交流する相手がいない』という話を聞いた。多くの人が交流しないとスタートアップは生まれないし、市場も支援も充実しない」と語る。参加者の賛否はあるにせよ、人の集積・交流という面で見れば1万人規模となった今回は成功とも言える。
単発イベントに終わらせず、大型スタートアップの誕生・育成につなげていけるか。真価が問われるのはこれからだ。
KRPもベンチャー支援
ライフサイエンス分野のエコシステム構築を担う大阪府北部の健都では、京都リサーチパーク(KRP、京都市下京区)が運営する「ターンキーラボ健都」がイノベーションを推進する。
バイオ系実験機器などを備えたシェアラボで、同機器を持たない企業の参入障壁を低減。バイオ関連に加え、モノづくり企業の利用も想定外に多く、バイオ系への新規参入を後押している。KRPは毎年開くヘルスケア分野特化型ピッチイベントでもベンチャーのグローバル展開をサポートしている。
キャリアパスに専門職系も/島津製作所常務執行役員 梶谷 良野氏
ー女性社員初となる海外駐在、子会社の社長を経験。現在は女性初の執行役員として、人事やダイバーシティー(多様性)経営などを担当しています。
「海外駐在時に日本とは働き方も考え方も違う人たちと一緒に仕事をしていく大変さを実感した。多様な人材がいる中でも自分にできることは必ずある。『従業員一人一人が自分の強みを生かして仕事をしてもらうこと』がダイバーシティーの一つだが、このことを肌感覚で学んだ」
ー従業員が力を最大限に発揮できる仕組み作りを進めています。
「人事制度面では、高い専門性を持つ人材のキャリアコースを作っていく。現状のキャリアパスは管理職系のみだが、必ずしもそれに向く人ばかりではない。技術力や営業力など、専門性を生かして会社に貢献している人も多い。管理職系と専門職系の二系列を作り、きちんと処遇していく。評価・賃金制度などと合わせて方向性を定め始めたところで、来春の導入を目指す」
ー人材育成面は。
「大阪大学との共創で2021年から社員を派遣し、23年には修士卒の学生を採用して博士課程取得を支援する制度も設けた。顧客の専門分野まで理解できるように技術力を上げ、専門範囲を広げていく。包括連携契約を結んだ京都大学などへの派遣も検討する。また、スタートアップへの出向も23年度中に実施したい。当社にないノウハウを学び、自分たちの技術力を社会実装していけるビジネスリーダーを育てる」