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京都の連携2023~京都のエコシステム
グローバル企業やニッチトップ企業、スタートアップ、大学が集積し、はたまた伝統からハイテクまで幅広い産業が根を張る街、京都。それらの活動や連携を、金融機関や自治体などが一体で支援する”京都独自のエコシステム(生態系)”は、長きにわたり「京都発」を創出する礎となっている。デジタル変革(DX)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)推進に向け、多様なプレーヤーが共創する今の京都を探る。
日々高まる蓄電池需要
GS&ホンダ EV用LiB量産へ本腰
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GSユアサの子会社・ブルーエナジーが昨年立ち上げたLiB工場(京都府福知山市) -
ロームとマクセルが共同開発した全固体電池評価キット。ソーラー発電パネル(左)と全固体電池を組み込んだ回路の機能などを評価できる
世界的な環境意識の高まりで電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの導入が進んでいる。並行して注目を集めるのが、リチウムイオン電池(LiB)や全固体電池などの蓄電池(二次電池)だ。EV駆動用バッテリーや、発電量が天候に左右される再エネ電力の需給バランス制御といった用途で蓄電池は必須。需要は日を追うごとに高まっている。
これらの状況を踏まえ、GSユアサはホンダとタッグを組み、EV用LiBの開発・量産に本腰を入れる。定置用を含む高容量・高出力なLiB工場新設や生産技術開発に約4341億円を投じる方針だ。
新工場は滋賀県守山市で検討しており、2027年4月稼働、同10月に本格量産し、30年にかけて生産ラインを順次立ち上げる。生産能力は現下の日本全体の蓄電池生産能力と同等の年20ギガワット時(ギガは10億)を計画する。
両社はEV用LiBなどの研究開発を行う共同出資会社を通じ、効率的なLiB生産システムの構築も狙う。
安全性や寿命、出力など幅広い点で、従来電池を上回る性能を持つ全固体電池。この実用化を見据えた動きも京都で加速する。
ロームとマクセルは、エナジーハーベスト(環境発電)と全固体電池を実装した回路の機能を確認できる評価用電源モジュールキットを共同開発した。ソーラーなどの環境発電を使った電源システム開発時に使え、全固体電池に発電電力をためる際の動作を評価できる。設備機器やインフラ機器の表示デバイス、ウエアラブル機器といった幅広いアプリケーション向けで、すでに提案を始めている。
同キットはマクセルの全固体電池、ロームの昇圧DCーDCコンバーター(電圧変換器)IC、ロームグループのラピステクノロジー(横浜市港北区)が扱う環境発電向け充電制御ICなどで構成する。ロームによると、バッテリーパワーマネジメントソリューションとして同電池の性能を最適に引き出す回路設計だという。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた取り組みが世界中で加速している。次世代電池に詳しい折笠有基立命館大学教授は「再エネ電力活用やEV普及に向けて電池の学術研究は一気に注目されはじめた」とし、より高効率な電池や全固体電池の実用化には「互いに得意分野が違う大学や企業の連携が必要不可欠」と指摘する。
感覚を理論化、設計・製造橋渡し/立命館大学教授 折笠 有基氏
世界的な脱炭素化で注目を集める電池の技術開発は今後どのように進むのか。立命館大学でリチウムイオン電池(LiB)や燃料電池を研究する折笠有基教授に話を聞いた。
ー研究内容は。
「電池の内部で起きる反応を解明することで最適な材料設計を行い、電池の高性能化を図っている。電池の中身で起こる反応は複雑で未知な部分が多い。例えば、電池メーカーが顧客の示す仕様で電池を作る際、技術者は経験に基づき感覚的に電池を製造するケースが少なくない。感覚的なものを理論化し、設計と製造の間を橋渡しするのが私の役割だ」
ー企業や外部研究機関と連携しています。
「企業から電池を提供してもらい、それを解析することで高度な研究ができる。大学でも電池は作れるが、実デバイスとはほど遠い。電池の高性能化や次世代電池開発には企業の協力が必須だ。研究で人工知能(AI)などの最新技術を使う際は、外部機関などから意見を仰ぐ。世にないものを創出するには、大学や企業がそれぞれの得意分野を生かし合うことがカギとなる」
ー立命館大のトップクラスの研究者を育成するための組織「RARA」にフェローとして所属しています。
「所属する魅力の一つは異分野の優秀な研究者と、研究や教育に関して意見交換できる点だ。具体的な研究手法や研究への考え方は普段、表に出ることがなく、RARAでは自身の研究や教育に広い視点を持たせてくれる。今後の共同研究などにもつながってくる」