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県外企業立地件数・面積が全国1位
成長分野など戦略的に誘致 優遇制度も充実
茨城県内への企業立地が好調に推移している。経済産業省がまとめた2022年の工場立地動向調査で、茨城県は工場立地面積と県外企業立地件数が全国1位だった。高速道路網をはじめとした陸・海・空の交通インフラの整備充実が県内に企業を呼び込んでいる。県は半導体や次世代自動車関連といった成長分野の企業を中心に戦略的な誘致を展開。同時に、立地企業のニーズに応じた産業用地開発も迅速に進めている。
交通網充実 東日本全域にアクセス
経産省の22年の工場立地動向調査で茨城県の県外企業立地件数は40件で6年連続全国1位。工場立地面積は116ヘクタールの全国1位、工場立地件数も60件の全国2位でいずれも全国トップクラスだった。
茨城県が立地先として選ばれる背景には交通網の充実がある。17年に首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の茨城県内区間が開通して以降、都心だけでなく北関東や東日本全域にアクセスしやすい条件が整ったことは、県南・県西地域での立地件数の飛躍的な増加につながった。
一方の県央・県北地域では交通網の充実に加えて空港や港湾を活用しやすいメリットがある。近年では県央・県北地域で半導体関連の先端素材や電気自動車用リチウムイオンバッテリーの大型工場の立地が決まるなど、県が戦略的に進める成長分野の企業集積は全県で進展する。
また、つくば地域に大学など研究機関が集積することや優れた住環境などから、優秀な人材を確保しやすい点も茨城は高い評価を受けている。2月にはコンサルティング大手の仏キャップジェミニの日本法人がつくば市に新たなオフィス開設を決定。生産や研究開発の拠点だけでなく、付加価値の高い事業を展開するための拠点の立地先として茨城は存在感を高めている。
圏央道周辺エリア 産業用地 迅速に開発
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県が開発中の工業団地「フロンティアパーク坂東」(イメージ)。今秋にも募集を始める
進出企業の受け皿となる産業用地の開発も加速している。4車線化の工事が進み、さらなる利便性向上が期待される圏央道の周辺エリアを中心に、県は21年度から3年連続で県施行の工業団地の開発プロジェクトを新たに立ち上げている。
県施行の工業団地としては約20年ぶりに21年度に開発に着手した「圏央道インターパークつくばみらい」(つくばみらい市、開発面積約70ヘクタール)ではすでに公募を実施済み。22年には日清食品などが進出を決めている。
続けて22年度に開発に着手した「フロンティアパーク坂東」(坂東市、同約70ヘクタール)は、今秋をめどに公募を始める予定。さらに23年度には、ひたちなか地区(ひたちなか市、同約23ヘクタール)での工業団地開発にも着手した。ひたちなか地区は県央・県北地域での開発となるが、県は「複数企業から確実性の高い産業用地取得要望がある」ことから開発を決めた。
また企業の進出を後押しする優遇制度も充実する。県は、半導体や次世代自動車関連産業など成長分野の企業誘致に向け、同分野の本社機能移転や生産拠点の整備に対する全国トップレベルの補助制度を創設。成長分野を中心にさらなる投資を呼び込み、質の高い雇用の創出にも結びつけたい考えだ。
日立建機/土浦にエンジニアリング棟
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日立建機が土浦工場に開設したエンジニアリング棟にはコミュニケーションスペースを複数配置して従業員同士の交流を促進する
日立建機は国内最大の研究開発拠点となるエンジニアリング棟を土浦工場(茨城県土浦市)に完成し、稼働した。国内に分散していた研究開発部門を一部集約し、多様な分野の技術者の知見を融合してイノベーションを誘発するための研究開発環境を整備した。同棟を核に建設機械の電動化や自律運転など次世代の建機に必要な研究開発を加速する。
同棟の名称は社内公募で「オレンジイノベーションプラザ」に決まった。7階建てで、延べ床面積は約2万6000平方メートル。土浦工場の正面入り口付近に建設しており、同工場の新たなシンボルにもなっている。
収容人数は3000人で、5月の稼働時点では油圧ショベルやダンプトラック、ホイールローダーの設計、生産技術、研究開発に携わる技術者ら約2500人が勤務する。各階の執務スペースには議論やアイデア発表が行える開放的なコミュニケーションスペースを複数配置し、従業員同士の日常的な交流を促進するオフィス環境を導入した。
土浦工場は中型油圧ショベルのマザー工場で基幹部品の生産も担う。茨城県内には土浦のほか4カ所の工場があり、同社にとって重要な開発・生産拠点に位置づけられる。
今回の新棟開設を含め、同社は国内の主要生産拠点の再編と開発リソースの集約を進めている。革新的な製品やサービスを創出しやすい開発・生産体制を国内で構築し、グローバルでの競争力強化に結びつける。
トクヤマ/「つくば第二研究所」新設
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今秋に開設予定のトクヤマつくば第二研究所
トクヤマは茨城県つくば市内で研究開発拠点を拡充する。今秋をめどに「つくば第二研究所」を新設し、既存の研究開発拠点を含め300人規模の研究開発体制を構築。つくばを核に同社が成長分野に位置づける電子、健康、環境領域の先端事業に関する研究開発を推進し、新たな価値の創出を目指す。
第二研究所は既存の「つくば研究所」の近接地に開設する。約10億を投じて「筑波北部工業団地」内の土地と建物を取得し、研究開発施設を新たに整備する。第二研究所には稼働時点で約50人が勤務し、将来は100人までの増員も想定する。
第二研究所は医療材料や診断試薬などの健康領域、水素製造装置に使われるイオン交換膜など環境領域の研究開発を担う。一方の既存の研究所ではめがねレンズ材料やグループ会社での歯科器材の研究開発を継続しつつ、次世代半導体関連材料など電子領域の研究開発を強化する。
両研究所を一体的に運営し、有機・無機化学、高分子化学、バイオなど幅広い分野の知見や技術を融合して新領域を開拓する。さらに第二研究所にはマーケティング部門を配置し、部門間連携を促進しながら市場ニーズに応じた迅速な製品開発に結びつける。
交通の利便性や住環境の良さなどから優秀な人材確保に優位な点を評価し、つくば地区での研究開発拠点の拡充を決めた。同地区に集積する大学など研究機関とのオープンイノベーションも今後さらに推進する方針だ。