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大井川 和彦 茨城県知事インタビュー
経営安定・収益力改善融資を拡充
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大井川知事 -
競争力強化、生産性向上、販路拡大などが急務となっている茨城県内の中小製造業の生産現場(イメージ)
―アフターコロナでの茨城県内経済の現状と課題をどのように認識していますか。
「本県の経済状況は、コロナ禍の影響から回復しつつあるものの、ウクライナ情勢や円安による原材料価格などの高騰によってコストが上昇し、業種・業態を問わず幅広い事業者の経営環境に大きな影響が出ていると認識している。こうした中、本県経済を活性化させるためにはコスト上昇分を適切に価格転嫁し、サプライチェーン全体で負担していくとともに、賃金上昇、消費拡大という好循環を生み出すことが大変重要だ。そのため、県では国に対して最低賃金の引き上げについて要望するとともに、6月19日に県・労働団体・経済団体の三者による意見交換を初めて行ったところだ」
―原材料・エネルギー価格高騰が続く中、県内事業者向けにはどのような支援を実施していますか。
「経営安定や収益力改善のための融資について、原材料費高騰などにより影響を受けた事業者にも対象を拡大し、事業者の資金繰りを支援している。また、2022年度は物価高騰などで経営環境が特に悪化した中小企業に対する臨時応援金や、価格転嫁率が低い貨物運送事業者に対する支援金を支給してきた。さらに、電気料金が高騰する中、国の電気料金支援の対象外となっている特別高圧で受電する中小企業等に対し、7月末から電気料金の一部を支援する事業を始める予定だ」
中小企業 伴走支援 デジタル人材育成
―県内中小製造業の課題と、現在、県が力を入れている支援策を教えてください。
「県内の中小製造業において受注量の確保や人材不足が課題となる中、経営安定化を図るとともに、競争力強化、生産性向上、販路拡大などが急務となっている。そのため県では、事業者の技術力向上をはじめ、ビジネス創出に意欲的な中小企業に対し、起業家、弁護士などの専門家の伴走によるビジネスプランの構築や、ロボットやIoT(モノのインターネット)技術を活用した工場の自動化などを支援している。また、展示会への出展支援に加えて、新製品の開発や新事業の創出につなげるため、独創的なアイデアや先端的技術を有するベンチャー企業などとの交流会を開催している」
―県内事業者で今後求められるデジタル分野の人材育成にはどう取り組んでいますか。
「デジタル化や脱炭素化等による産業構造の変革に対応するため、23年度に産業戦略部に新設した『産業人材育成課』のもと、成長産業・成長分野への円滑な労働移動や県内産業の生産性向上につながるリスキリングを強力に推進していく。特にデジタル分野に関する取り組みとして、6月補正予算にITパスポート等の取得支援事業を新たに計上し、業種を問わず社会人に共通して求められるデジタルリテラシーの習得を支援する。併せて、県立産業技術短期大学校(IT短大)を大学校化することにより、本県産業に求められるIT人材の質の向上と量の拡大を図っていく」
戦略的企業誘致活動を展開 機逃さず産業用地供給
―経済産業省の工場立地動向調査で22年は県外立地企業件数・工場立地面積ともに1位でした。好調の要因は何ですか。
「知事就任当初から、本県の持続的な発展のためには半導体や次世代自動車等の成長産業や本社機能の誘致が重要であると考え、首都圏に近接しているなど本県の立地優位性をPRするとともに、分譲価格の見直しや本社機能を対象とした全国トップレベルの補助制度の創設など、戦略的な誘致活動を展開してきた。この結果、半導体の配線材料となるスパッタリングターゲットで世界シェア6割を誇るJX金属が先端素材分野における過去最大規模の投資となる新工場の建設を決定し、本社機能についても、世界的なITコンサルティング企業である仏キャップジェミニの日本法人のオフィス立地が決定した」
―産業用地の整備を含め、進出企業に対して県はどんな支援を提供していきますか。
「本県の立地優位性を評価いただき、旺盛な企業ニーズがあることから、機を逃さず産業用地を供給するため、約20年ぶりとなる県施行の工業団地『圏央道インターパークつくばみらい』(つくばみらい市)をスピード感を持って開発し、22年10月には日清食品の国内最大規模の製造拠点などの立地が決定した。続いて『フロンティアパーク坂東』(坂東市)のほか、ひたちなか地区においても開発を推進している。また、支援策として半導体や次世代自動車などの成長産業の生産拠点や本社機能を対象とした補助制度などを活用しながら、戦略的な誘致活動を展開し、1社でも多くの優良企業の立地に結びつけたい」
広域アンモニア供給網構築へ 港湾脱炭素化 推進
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茨城県は3月にカーボンニュートラル関連産業の創出に向けた政策を議論する「いばらきカーボンニュートラル産業拠点創出推進協議会」を開いた
―カーボンニュートラル産業拠点の創出に向けた県のプロジェクトの進捗と23年度の取り組みを教えてください。
「これまで産学官協議会で関係者の連携強化を図るとともに、設備投資等への支援として200億円基金の創設など支援体制を整えてきた。22年度は三菱ケミカルと戦略的パートナーシップ協定を締結し、ケミカルリサイクルなど具体的な取り組みを進めたほか、茨城港と鹿島港という国際港湾を生かして国内で随一のクリーンエネルギー一大拠点を形成するという将来像を定め、その実現に向けて全国初の『港湾脱炭素化推進計画』を作成した。23年度は本県を起点とする広域アンモニアサプライチェーンの構築に向け、ワーキンググループで議論を深め、国のカーボンニュートラル燃料拠点の第1陣採択を目指す」
―12月にG7内務・安全担当大臣会合が水戸市で開かれます。開催の意義をどう感じていますか。
「16年のG7科学技術大臣会合、19年のG20貿易・デジタル経済大臣会合に続きサミットの県内開催は今回で3回目であり、県都水戸での開催は初めてとなる。大臣会合の開催は茨城にとって国内外での知名度向上やグローバル化に向けた大きな弾みとなり、本県の潜在能力を高める契機となると考えている。まずは、各国大臣にとって実りある議論ができるよう開催地として万全の態勢を整え、最高級のおもてなしでお迎えしたい。また、茨城・水戸がもつ歴史・文化などの魅力をしっかりと国内外に発信していきたい」