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地域・企業が課題にスクラム
カーボンニュートラル適合 地域成長へ最大の挑戦
中小企業が変化に合わせて、自らを変革する挑戦。「第二創業」や「事業再構築」に限らず、ロボット導入やデジタル変革(DX)も、それに並ぶ。課題を解決して成長を狙うという点で、今後の南大阪で最大の挑戦は、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への適合となるのではないか。
堺市域では排出される温室効果ガスの半数近くを産業セクターが占める。重化学工業の大規模プラント、熱処理や鍛造など中堅・中小の金属加工業が多く立地。脱炭素は今後の事業活動の継続を左右しかねない高い壁だ。
昨年、堺市は環境省の脱炭素先行地域に選定されたが、取り組みの中に、市内製造業に対する具体的な配慮は見当たらない。一方で市内の大手事業所は、時代の変化を先取りした転換を始めている。
コスモ石油は5月、堺製油所内で持続可能な航空燃料(SAF)のプラントを着工。同月、三井化学と大阪ガスは、泉北コンビナートで排出する二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留について共同検討を始めた。
取引先の動向次第でもあるサプライヤーにとって、自発的な脱炭素への行動は難しい。ブレイクスルー技術が見えない中では、目前の低炭素化、長期の脱炭素化の両にらみが必要だ。まずは自社のCO2排出量の可視化と低炭素を主眼にする生産性改善が必須。行政も、製造業の事業活動継続に配慮した、域内カーボンオフセットの取り組みなど検討の余地があるだろう。
G7大阪・堺貿易大臣会合 魅力発信の好機に
大阪府内で開く主要7カ国(G7)貿易相会合は20日に開催100日前を迎えた。10月28、29日の会議では自由貿易体制の維持や経済安全保障の強化で活発な議論が見込まれる一方、2025年大阪・関西万博開催を控えて「魅力を国内外に発信する絶好の機会」(永藤英機堺市長)となる。本体会合の会場は大阪市の大阪国際会議場(グランキューブ大阪)に決まったが、初日の社交行事や歓迎レセプション、ワーキングディナーを堺市内で実施しようと調整が進められている。
社交行事の開催地として検討されているのは世界遺産・仁徳天皇陵古墳に近接した大仙公園(堺市堺区)だ。地上100メートルから古墳の形を確認できる”ガス気球”の運行を計画したが、5月にガスが漏れて気球がしぼむトラブルに見舞われた。いまだ原因を究明できず、再開は未定だ。
歓迎レセプション会場やグランキューブ大阪に設けるメディアセンターには、堺・南大阪に関する食の提供や歴史・文化、技術などをアピールするための展示用スペースが確保される見通しだ。何を訴求すれば”刺さる”のか。官民の連携とともに綿密なマーケティングが欠かせない。
関西国際空港を入出国する訪日外国人は水際対策の緩和が進んだことで、コロナ禍前の水準に戻りつつある。万博開催時をにらみ、関空のお膝元・南大阪を”通過する”地域から”立ち寄りたい”地域へと、ポジショニングを高めて誘客につなげられるかが課題だ。
インタビュー/「未来志向でチャレンジを」日本政策金融公庫 堺支店長 五十嵐 一浩 氏
日本政策金融公庫堺支店は、南大阪地域の中小企業が取り組む、さまざまな挑戦を、資金や情報の提供などを通じて幅広く支援している。地域の企業が直面している現状や成長への助言を、五十嵐一浩支店長に聞いた。
―コロナ禍後、地域の中小企業の状況は。
「デフォルト(債務不履行)は思ったほど起きていない。原材料高騰に苦しむ企業が多く、価格転嫁できるかが課題。賃上げも増えているが、労働市場がタイトになっている」
―資材高や調達不安が企業の設備投資意欲に水を差しています。
「計画していた投資額に収まらない、納期未定で受注機会を逸した、といった事例が出ている。厳しい環境だが、顧客の要望に応えるには設備投資が不可欠だ。未来志向でチャレンジをしてほしい」
―人手不足に有効なはずのDX(デジタル変革)が進みません。
「南大阪は堅実な企業が多く、効果の見えにくい投資に慎重な姿勢で、デジタル化投資に一歩踏み出せていない。堺市が8月導入するDX診断による自社状況の可視化は、有効だと期待している」
―カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の要請も大きな課題です。
「企業にとって、いつの間にか環境、ルールが変わっているという可能性がある。関与するという企業姿勢が問われており、問題を避けるべきではない。環境に配慮した企業活動にはコスト増が避けられない。当面は各社が、収益力を高めることに努めてほしい」
