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動作性・利便性が重要に
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機能性とデザイン性を兼ね備えた製品を提供(フジ矢 提供)
電動工具はドリルやインパクトドライバー、トリマー、ディスクグラインダーなど多種多様にある。穴開けや締結、切断、切削、研磨など、作業工程によって活用されている。
電動工具に求められる性能は、作業効率や利便性などがある。建築や電気工事などの現場で多く使われるため、持ち運びのしやすさや連続使用での耐久性なども重要だ。
最近では、電源が確保できない場所でも使えるリチウムイオンバッテリー搭載のコードレス式が広く普及しており、機動性や作業効率の良さから支持されている。メーカー各社はこうしたニーズに即した製品開発に余念がない。
あるメーカーではリベットの締結時間を自社従来比4割減の1.3秒まで短縮したコードレスリベッターを開発した。直径6.4ミリメートルのステンレス製リベットの締結にも対応する。高速かつ高出力で作業効率化に貢献する。
作業工具は締める、つかむ、回す、切るなどの工程で手の延長となり作業を支える。手に持った際の感触や重さ、形状、重心位置、力の入り具合など、同じ種類の作業工具でもメーカーごとに差異がある。必要な用途に応じて、適切な工具を選ぶことで安全で快適な作業環境をサポートする。
SNS活用、訴求力高める
工具の市場環境では、昨年好調だったコロナ禍による巣ごもり需要が落ち着きつつある。また原材料の高騰といった課題もあり、新たな局面を迎える。メーカーでは、工具の高付加価値化を図り、競争力を強化している。工具の付加価値を高めるために、機能性だけでなく、デザイン性にも力を入れている。
企業で工具を用意する場合もあるが、最近ではユーザー自身がホームセンターなどから購入することが増えており、色やデザインに対する要求は高まっている。メーカーの中には、会員制交流サイト(SNS)を通じて自社製品を紹介し、訴求力を高めている。
フジ矢 創業100周年/独自デザインでブランド確立
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出前授業を通じて電気工事士の魅力を発信(フジ矢 提供)
作業工具は使いやすさだけでなく、デザインも購入の決め手の一つとなっている。工具メーカーの中には、独自のデザインを確立し、ブランド価値を生み出している。
今年で創業100周年を迎えるフジ矢(大阪府東大阪市)は独自のデザインを生み出し、ブランド価値を築き上げたメーカーの一つ。2000年ごろからデザイナーを雇い、デザインの開発を始めた。オリジナルブランドであるKUROKINシリーズは、マットな黒色とメタリックな金色を基調としたデザインが魅力。現在は、約120種類もラインアップしている。同シリーズの開発の経緯は17年、野﨑恭伸社長が海外に行った際に見かけた車のマットな黒色が気に入り、金色と合わせた工具をKUROKINシリーズとして売り出したのが始まり。デザインも自社で内製化し、同シリーズの高級感のある見た目を表現するためにコストと技術をかけている。金色の差し色は加工の際に、メッキだまりが生じやすく、処理が難しい。こうした工程に長年工具づくりで培ってきた技術力が発揮される。
ユーザーが自社ブランドに愛着を持ってもらえるような工夫も凝らしている。メンバーシップの立ち上げもこの一つで、22年10月にメンバーシップ会員限定でファクトリーツアーを実施した。工具の製作に対するプロ意識やブランドへの思いを見せられる重要な機会となっている。ユーザーと直接交流することで、フジ矢の”ファン”になってもらい、ユーザーの声を反映した製品化につなげている。今後は、メンバーシップ限定のイベントを企画し、ファンづくりに力を入れる。さらに、販売店のパートナーショップ制度を設けた。同社の製品専用の売り場を用意してくれた店舗をパートナーショップに認定し、新製品を優先的に提供する。
一方で、建築や電気設備の作業者の高齢化が進み、人手不足の問題を抱える。こうした背景から、同社はプロの電気工事士とスポンサー契約をし、こうした作業者の仕事の認知度向上を図っている。現在は、スポンサー契約した一人と共同で小学校への出前授業を行っている。子ども達に電気工事士という職業を知ってもらい、将来の職業選択で検討してもらう狙いがある。
デザイン面を追求し、さらなるブランド価値の向上と業界全体の人手不足解消に寄与するべく、挑戦し続けている。