-
業種・地域から探す
SiCパワー半導体 好調続く
世界5兆円規模に 35年市場予測/EV・DC向け拡大継続
-
ロームの伊野和英取締役常務執行役員CFO(左)、ヴィテスコ・テクノロジーズのアンドレアス・ヴォルフCEO -
ロームの「第4世代SiC MOSFET」
炭化ケイ素(SiC)パワー半導体は、シリコン(Si)と比べて絶縁破壊電界強度が10倍、バンドギャップが3倍で、放熱特性に優れる。電力損失の大幅な低減、機器の小型化、高電圧・高温環境下での安定駆動といった特徴を持ち、電力変換時の損失を低減できる。そのため電気自動車(EV)などの電動車(xEV)の普及、電子測定器への搭載による小型大容量の実現などで市場が広がり、需要が高まっている。
富士経済のパワー半導体世界市場によるSiCパワー半導体需要は、インバーターやパワーコンディショナーなど電力変換の高効率化を目的に採用が加速。2023年は2293億円を見込み、35年は5兆3300億円になると予測する。
23年はデータセンター(DC)のサーバー用電源などの分野に加え、充電スタンドやxEVの(駆動用モーターを制御する)トラクションインバーターをはじめとする自動車・電装分野、太陽光発電などのエネルギー分野の需要が前年に継続して伸長する。設備投資による生産能力の増強やウエハーの大口径化対応、加工技術の向上などにより、xEVのトラクションインバーターにSiCパワー半導体の採用が本格化するなど市場拡大が加速するとみている。
こうした中、ロームは独ヴィテスコ・テクノロジーズに対し、SiCパワー半導体の長期供給におけるパートナーシップ契約を6月19日に締結。これによりヴィテスコは24年からローム製のSiCパワー半導体を使ったインバーターを、EV向けに量産する。ロームが供給するパワー半導体は「1200ボルト 第4世代 SiC MOSFET(炭化ケイ素 金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)」。今後開発される新製品についても提案を予定している。
この第4世代SiC MOSFETは短絡耐量時間を改善し、業界トップクラスの低オン抵抗を実現したデバイスであり、車載インバーター搭載時には、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)比で電費を10%改善できる(国際規格「WLTC燃費試験」算出時)。さらにスイッチング損失を従来品と比べて約50%削減を実現した。
ロームはSiCパワー半導体の性能や、垂直統合モデル(IDM)としての供給力などの総合力を背景に、高い競争力を持つ。デバイスの優位性では第4世代から第5、6世代の開発を進めるほか、ウエハーの8インチ化にも取り組んでいく。
ヴィテスコは独コンチネンタルのパワートレイン(駆動装置)部門から19年に独立。インバーターやEV用駆動装置「イーアクスル」などを手がけている。