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半導体向け堅調―安定供給体制
産業ガスは製造プロセスで使用されるガスで、窒素、酸素、アルゴンなどがある。単体で用いられるもののほか、2種類以上のガスを混合して機能性を向上させたもの、さらには半導体製造や分析機器の校正用の高純度ガスまで種類は多岐にわたる。その売り上げ規模から、窒素、酸素、アルゴンが三大産業ガスと言われている。
鉄鋼、化学、建設、エネルギー、自動車、機械、半導体、航空・宇宙など幅広い分野で利用されており、用途はさまざまだ。
鉄鋼業では高炉の燃焼温度上昇に酸素、鋼の熱処理に窒素やアルゴンが使われる。化学分野では石油精製やプラスチック製造の材料ガスとして水素、工場の防爆用には窒素が、建設・機械分野では溶接・溶断用ガスとしてアセチレンと酸素、アーク溶接用シールドガスとして炭酸ガスやアルゴンが使われている。また食品向けでは炭酸飲料に炭酸ガス、酸化防止封入剤として窒素ガス、急速冷凍用に液化窒素などが活躍している。
さらに活況が続く半導体やエレクトロニクス製品の製造には特殊材料ガスのほか、大量の窒素や水素が必要になる。シリコンウエハーの製造にはアルゴンも使用される。国内の半導体製造工場の増設や新設に対応し、産業ガスメーカーもそれらを支える体制を整えている。
エンジニアリング体制強化
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堺事業所の大型製缶工場(左)と総合エンジニアリングセンター(右)完成イメージ(エア・ウォーター)
エア・ウォーターグループは産業ガスの供給に不可欠なエンジニアリング体制をさらに強化するため、これまで複数の拠点に分散していた開発・設計・製作・運転・保守部門などを集約する「総合エンジニアリングセンター」(仮称)を堺事業所内に建設する。小型から大型までのフルレンジで深冷空気分離プラントの製作に対応できるエンジニアリング技術に磨きをかける。
同センターでは人員・技術・ノウハウの集結により、プロジェクトのスムーズな連携と、技術の高度化、業務効率の向上、人材育成のスピードアップを図る。さらに同事業所内の製缶工場の建物面積を拡張し、製造能力を約2倍にする。今年4月に着工しており、25年4月の稼働を目指す。
こうした事業展開は同グループが30年に向けた成長戦略として掲げている「大手半導体デバイスメーカー向けのガス供給を基軸としたエレクトロニクス関連事業の拡大」や「インド・北米を重点地域とする海外展開」に連動し、需要増が見込める各種ガス発生装置の増産や大型化に対応する。
応用分野広げる
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種ジャガイモ向けエチレン処理システム(イメージ=岩谷産業)
岩谷産業は産業ガスの応用分野を広げる取り組みを続けている。5月には種ジャガイモの発芽状態を最適に制御できるエチレン処理技術を開発した。成熟促進効果があるエチレンを種イモ保管庫に供給し、エチレン濃度や温度・湿度を制御して実現する。22年に北海道の種イモ農家と実証済みで、23年には種イモを使って食用ジャガイモを栽培する生産農家とも実証を始めた。その結果を踏まえ、24年春に「エチレン処理システム」としての販売を目指す。
また、岩谷産業は陸上養殖分野の事業拡大に向け、2月に中央研究所(兵庫県尼崎市)に飼育研究設備を導入した。酸素供給濃度の変化による生育の違いなどについて研究を進める。
同社は陸上養殖向けの酸素ガスや酸素溶解装置で約30年の販売実績がある。陸上養殖に関する知見をさらに積み上げ、水槽や酸素ガスなどをトータルなシステムとして国内外に提案していく。陸上養殖は漁業就業者の減少や天然資源の枯渇など水産業の課題解決につながると期待されている。